封印されていた魔物18
【スミレSIDE】
カトレア先生と縫いぐるみ人形の装い、ロベリアさんがこの場にいない事が気になりますが、そのような事を考えている余裕がありません。
それに、危機的状況から一気に好転した状況は不明ですが、炎龍が両足を負傷し力を失っている今は絶好の機会です。
杏ちゃんとレモンちゃんとカトレア先生と協力して、炎龍を戦闘不能に追い込むのは今です。
そう思って炎龍の元へ行こうとすると、私と杏ちゃんより速く炎龍に近接したカトレア先生は
「来なさい、人形姫ソード!」
と言ってペンダントから剣を出したかと思うと、一気に炎龍へ肉薄。
カトレア先生が剣の柄を炎龍に向けた瞬間
「人形よ、合わせなさい!」
と言って、いつの間にかカトレア先生の隣に、リリーちゃんの姿を模した縫いぐるみ人形が姿を現し同じ行動をとった。
「先ずは、小手調べ! 疾風迅雷! ダブル ジョー ストライク!」
カトレア先生と縫いぐるみ人形がブレた瞬間
ドドゴゴォォォォォォオ!
二重に轟音が響いたかと思うと、カトレア先生と縫いぐるみ人形は、炎龍の顎を跳ね上げていた。
そして、足を負傷して両手を地面に付いていた炎龍を吹き飛ばしひっくり返した。
ズシィーン! ビュゥゥゥゥゥゥ!
「やっぱり、調節が必要のようね。攻撃した瞬間、炎龍ちゃんの力が私に流れ込んでくるわ」
炎龍をひっくり返した後に、カトレア先生がそう呟いていた。
それに、カトレア先生と縫いぐるみ人形の動きがあまりにも速すぎて、途中が見えなかった。
炎龍を見ると地響きと衝撃の風が吹き荒れる中、一瞬気を失いかけていたのか、炎龍が頭を振って横になると両膝をついたまま、カトレア先生にブレスを吐こうと息を吸い込んだ。
シュゥゥゥゥゥゥ!
「だけど、私達の事を忘れてない?」
カトレア先生と違って、上空へジャンプしていた私と杏ちゃんは、炎龍の頭上で頷き合う。
私より素早い杏ちゃんが、両手を広げて魔練を全身に纏い一気に増幅させると、
「ハァァァァァァハア!」
魔練で出来た、巨大な球体となった。
更に右足へ氷の属性を纏わせると、球体の魔練を右足に集中させ錐揉み状に回転しながら炎龍に向けて降下しだした。
キュルキュルキュリュ!
杏ちゃんが降下していく軌道に、魔連がまるで帯のようになっている。
「【【魔練空覇彗星脚!】】」
ゴリゴリゴリッズゥゥゥン!
ズシャァー! ドゴォ! ドゴォ! ピシッ!
杏ちゃんの蹴りは炎龍を地面に押しつけ、地面に張ってあった障壁ごと撃ち抜いた。
しかし、障壁が杏ちゃんの衝撃で二枚破壊されているのに炎龍の頭部は鱗すら砕けていなかった。
ただ炎龍は、杏ちゃんの蹴りでダメージを負ったのか、伏せたまま動こうとしない。
「多重障壁!」
キュイィィィィィィン!
それを見たレモンちゃんが、即座に五枚の多重障壁を地面に展開させた。
だけど、まだ私の追い打ち攻撃が有るわ。
私も降下中に負けじと、魔力を全身に巡らせて闘気に変換し一気に増幅させていますからね。
「ヤァァァァァァハア!」
すると、私を覆うように闘気が焔のように揺らめく。
私は更に、氷と雷を剣に付与する。
「氷よ凍てつけ! 雷よ轟け!」
ゴホォォォ! チュドーン!
剣に氷と雷の二属性を纏わせ、魔力を変換させた闘気で剣を覆うと、炎龍に向けて一気に急降下する。
「炎龍よ、喰らいなさい!」
ピカピキピシ! ピカピキピシ! ピカピキピシ!
「天の花よ、悪しきものを打ち払え!【【白花曼珠沙華!】】」
ズシャシャシャシャ!
ドドドゴゴゴピキピシピガ! パリン! ドゴォ! ドゴォ! ピシッ!
氷と雷の、白花曼珠沙華が大きな花を咲かせる。
伏せたままの炎龍に更なる追い打ちを喰らわせ、レモンちゃんの障壁がまた三枚砕け散った。
だけど、この手応え……浅い。
炎龍が自身の周りに薄く展開している障壁を、私では破壊しきれなかった?
杏ちゃんの方を咄嗟に見ると、杏ちゃんも手応えに不安を感じたようだ。
今の私と杏ちゃんの攻撃は、勇者と拳鬼の必殺技よ?
炎龍の防御障壁は、どこまで強固なの?
だけど、私と杏ちゃんがカトレア先生の元に駆けつけた時、炎龍は両足を何かに撃ち抜かれていた。
カトレア先生の姿と縫いぐるみ人形が纏う姿、そして杏ちゃんの早さをも上回っていた攻撃の早さ。
そして、カトレア先生が呟いた手加減。
つまり、炎龍の両足に傷を負わしたのはカトレア先生だと言うこと?
俄には信じられませんが、勇者の能力と拳鬼の能力を上回る力を、今の姿のカトレア先生は持っている。
「多重障壁!」
キュイィィィィィィン!
破壊された障壁を見たレモンちゃんが、再び五枚の多重障壁を地面に展開させた。
次の瞬間、炎龍の身体を幾つもの小さな白い焔が包み込んだ。
それを見た、カトレア先生が叫ぶ。
「レモンちゃん、広範囲攻撃の白獄の焔爆よ! 炎龍を、障壁で包み込んで!」
「多重障壁!」
キュイィィィィィィン!
レモンちゃんはカトレア先生の指示に従い即座に、炎龍を多重障壁で筒状に包み込んだ。
刹那、白獄の焔爆の爆風と衝撃がレモンちゃんの障壁越しに……
ジュゴォォォ!
シュゥゥゥゥゥゥ!
えっ? 白獄の焔爆や、その衝撃による爆風、それに轟音が急に消えた?
まさか、空の彼方に消え去ったの?
いえ、そんな事は絶対に無い筈です。
轟音までもが、消え去るなんて有り得ない。
ピシッ!
レモンちゃんの障壁に、一枚ヒビが入ったのが証拠。
では、白獄の焔爆はどこに消え去ったの?
障壁内の真っ白な蒸気が消え去ったかと思うと、炎龍の姿が見えてきた。
炎龍を見ると、不敵な笑みで舌なめずりをしていた。
「まさか、白獄の焔爆を自ら食らったの?」
そう言って私が呟くと、また炎龍の身体を小さな白い焔が包みむと炎龍は再び白獄の焔爆を放つ。
ジュゴォォォ!
シュゥゥゥゥゥゥ!
そして、再び白獄の焔爆を自ら食らった。
パリン! ピシッ!
その不可解とも思える行動を繰り返す度に、炎龍の眼が少しずつ焔の様な真っ赤な色に染まっていった。
「多重障壁!」
キュイィィィィィィン!
レモンちゃんが再々障壁を張ると、カトレア先生が私に声をかけて来る。
「スミレちゃん!」
「はい」
「炎龍は、再び切り札を使うつもりよ。でも、その前に今度は両腕を撃ち抜くわ」
カトレア先生がそう言うと、右手を炎龍の方へ向けた。
「イエス マイマスター。再びブラックアブソープション人形とホワイトエミッション人形の双子を、転送致しました。ですが、残りの時間的に最後の機会です」
すると、カトレア先生のペンダントからユグちゃんの声が聞こえてきた。
やはり先ほどからカトレア先生と話している声って、ドラシルシステム……シルちゃんの声だよね。
と言うことは、リリーちゃんが作りあげた装備?
「シルちゃん、ありがとう。では、ホワイトエミッション人形の到着と同時に ダブル リタリエイション プラズマ レールガン で炎龍の両腕を撃ち抜きなさい」
「イエス マイマスター」
刹那、黒い衣装と白い衣装を纏った人形が現れたかと思うと、白い衣装を纏った人形の両手から青白い光りが放たれた。
キュウーン!
パリンパリンパリンパリンパリン! ……
青白い光りがレモンちゃんが張った全ての障壁を破壊し、炎龍の両腕を撃ち抜いたかと思われた瞬間、
グゥッガァァァァァァ!
咆哮と共に、赤黒い障壁が現れた。
ドゴォォォォォ! パリン!
ドド!
赤黒い障壁は打ち砕いて貫通したものの、炎龍の両腕を青白い光りは撃ち抜けず、鱗を破壊して消失した。
ただ幸いなのは、炎龍は今の赤黒い障壁で炎覇龍気魂の力を全て使い切った事だ。
「マイマスター、時間です。ロベリア様との、コウリション人形姫モードを強制解除します。尚、通常人形姫モードは十分後に使用可能です。ご武運を」
ドラシルシステムがそう告げると、カトレア先生のドレスや鎧が消え失せ、その場にロベリアさんが現れ、先ほどまでいた黒い衣装と白い衣装を纏った人形が消えていた。
「シルちゃん、ありがとう」
カトレア先生は、ペンダントにそう言ってお礼を伝えていた。
しかしこれで、こちらもカトレア先生の異常とも言える戦力が無くなってしまった。
再び私達だけで、傷を負っているとは言え炎龍と戦わなくてはならない。
炎龍を私達だけで、戦闘不能に追い込むことが出来るだろうか?
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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炎龍ちゃん「ママ?」
炎龍ちゃんが、私の足にしがみ付き上目遣いをしてきた。
カトレア「炎龍ちゃん、良い子だからあそこにある部屋で見ていてくれるかな?」
炎龍ちゃんに危険が無いように控え室に行くよう伝えるが、頻りに
左手を触ってきた。
炎龍ちゃん「けーやくのもんしょーを、合わせてー」
炎龍ちゃんは再び上目遣いをすると、私の左手を引っ張ろうとして
きた。
カトレア「私の紋章を、どこへ合わせるの?」
私が腰を落とすと、炎龍ちゃんがお腹を出す。
炎龍ちゃん「おなか」
炎龍ちゃんのお腹の紋章に私の紋章を合わせると、暖かい力が
流れ込んできた。
カトレア「これって? 炎龍ちゃんの力?」
炎龍ちゃんは私に笑顔を向けると、控え室の方に向かって走り、椅子
に腰掛けた。
ちゃんと私の言うことを聞いて、控え室で見てくれるようだ。
私が左手の紋章の暖かさに触れていると、ペンダントが光る。
ドラシルシステム「マイマスター、正式な契約が完了したようです。これより、
人形姫の力に龍の力が追加されマスターの能力が更に向上
します。システムの調整を致しますが、初めての攻撃は
手加減するようお願い申し上げます」
カトレア「ええ、分かったわ」
ドラシルシステムは炎龍の力を制御すべく、新たなドールシステムを
リリーに申し出しようと考えるのであった。




