↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

155/240

封印されていた魔物17

 【リリーSIDE】


 ユグドラシルに案内されるがままに進んできたが、かなり迂回しながら進んでいる。

 確かに蜘蛛の巣が至る所にあるが、今進んでいる道は蜘蛛の巣が他より少ない。

 それと、ここら一体にも魔虫の巣があった。 

 もしかして、魔虫の巣が有る場所に蜘蛛の糸が少ないのは何か関係があるのか? 

 だけど、ソロソロ澱みの蜘蛛がいる場所に行かなければ話にならない。



「ねえ、ユグちゃん? さっきから、なぜ同じ場所を行ったり来たりしているのかな? ユグちゃんは、私を澱みの蜘蛛の所へは連れて行こうとせずに、寧ろ遠ざけているよね?」

「――――」



 ユグドラシルからの直接の返事や心情の返事はなかった。

 しかし、俺の事を守りたいという強い心情がひしひし伝わって来た。



「ユグちゃん? 貴女と私は、心情の奥で深く繋がっているんだよ。いくら貴女が隠そうとしても、私には心情で何となくだけれど分かるの。だけどね、澱みの蜘蛛は私以外に倒せる者がいないのはユグちゃんも承知しているよね? 夜行性で今は眠っているけれど、このまま放置しているとこの国だけじゃなくて、フォレストムーン王国……いえ、この世界全てが滅ぶかもしれないんだよ?」



 俺はゆっくりと、優しくユグドラシルに言い聞かせた。

 それはユグドラシルの隠していた心情から、スノーと葵からの願いも感じられたからだ。

 恐らくスノーと葵から事情を聞き、澱みの蜘蛛から俺を遠ざけるように指示されたのだろう。



「リリー様、それは承知しております。ですがユグや家族の皆は、リリー様が倒す事が困難な……いえ、倒せないと分かっている澱みの蜘蛛の元へは連れて行けないのです」



 それはスノーと葵からの願いでもあり、ユグドラシルが隠そうとしていた心情から読み取れたよ。

 本当は俺も女神サラに身体(ウツワ)を返すまでは、平和に家族皆と一緒に楽しく暮らしたかった。

 それに、この世界の異物であり害を及ぼす澱みの魔獣の排除は、本来この世界を管理する女神サラが行うべき使命だからね。

 でもね、スノーが何度も分隊を送っても女神サラに連絡がつかないと言うことは、女神サラに何かしらの問題が生じた可能性が高いという事なんだ。


 つまり待っていても、倒す事ができる女神サラは来ない。

 それにね、家族皆と平和に楽しく暮らす為には、この世界の異物であり害を及ぼす澱みの魔獣を、誰かが倒さなければならない。

 そして、現時点で倒す事ができる可能性が一番高いのは俺しかいないんだ。

 だからこそ、俺が澱みの蜘蛛を倒しに行くしかないんだよ。



「ユグちゃん? 私の心情を読み取ってくれたかな?」

「はい……」

「じゃあ、分かってくれたよね」

「……はい。ですが今一度、葵様が仰っていた事を伺います。リリー様、何か届いていませんか?」



 葵は俺の思いも付かない何かが、届く事を確信しているのか? 

 それは葵の言うように、絶好の好機に繋がるものなのか? 

 一体、その根拠は何? 俺には、分からない。

 だけど、ユグドラシルも知っての通りアイテムボックスに新たに入った物は魔虫の蜜しかない。



「私が嘘をついていないのは、ユグちゃんだったら分かるよね?」

「はい」

「本当に何も届いていないけれど、ユグちゃんの思いは伝わったよ。だから私も、アイテムボックスをもう一度確かめてみるね」

「ありがとうございます」



 俺はユグドラシルの為に、アイテムボックスをもう一度確かめてみることにした。

 葵の言っている物が何なのかは不明だが、もし何か送られてくるとしたら必ずアイテムボックスに入っている筈だ。

 以前、王侯貴族位しか着そうにない装いが女神サラから送られてきた時も、メールに送付されていたとはいえ、結局アイテムボックスに入っていたからね。

 それも考えてアイテムボックス内を何度も確かめてみたが、やはり送られてきた物は何も無かった。


 女神サラの様に、メールが送られて来る事も考えてメールも確認する事にした。

 すると、二通の新しいメールが入っていた。

 メールを眼前いっぱいに広げ確認すると、ユグドラシルも俺の心情から読み取り同じようにメールを見だした。

 立ったまま見ても良いのだが、少しでも澱みの蜘蛛の場所へ近づこうと考え、俺は歩きながらメールを見ることにした。

 その一通目は、女神システムサービスからだった。



 ――――――――――――――――――――――――――――――

 再びアンケートを拝見させて頂きました。

 無限アイテムボックスと女神システムサービスの連動の件ですが、

 この案も採用させて頂きたく存じます。

 連動可能と判断したことで、女神システムサービスチームにより、

 来たる○月○日の午前中に連動を試みる予定です。

 連動により、一部でシステム障害が発生する可能性がありますが、

 女神システムサービスは通常通りですのでご安心下さい。

 ――――――――――――――――――――――――――――――



 とあった。



「これは……うん、問題は無いね」

「そうですね、リリー様」



 そして次のメールを確認すべくクリックすると、次のメールに問題があった。



「リリー様……」

「ユグちゃん、原因はこれだよね……私の行動が、原因とも言えるけれど」



 その二通目には……



 ――――――――――――――――――――――――――――――

 お誕生日特典プレゼントの遅延のお知らせ。

 無限アイテムボックスと女神システムサービスの連動を試みた事で、

 重大なシステム障害が発生致しました。

 只今、復旧作業中です。

 ご利用中の方々には、ご不便をおかけ致している事を深くお詫び

 致します。

 復旧予定日は、○月○日の午前中でございます。

 復旧後、速やかにメールにてお誕生日特典プレゼントをお送り致し

 ますので、今しばらくお待ちください。

 尚、無限アイテムボックス専用のお店も、現在急ピッチで作業を

 させて頂いております。

 専用のお店についても、今しばらくお待ち頂くようお願い申し

 上げます。

 女神システムサービスチーム

 ――――――――――――――――――――――――――――――



 とメールが入っていたのだ。

 そう言えば、今月は俺の誕生日だった。

 しかも、海の別荘でお誕生日会もした。

 葵の根拠は、俺の誕生日が今月だったからと言うことか。

 でもなぜ葵は、お誕生日特典プレゼントに期待しているんだ? 


 少し、過度な期待のしすぎじゃないのかな? 

 ……そう言えば、葵が女神システムサービスに申請をしたんだった。

 と言うことは、何がお誕生日特典プレゼントなのかを知っている? 

 だから、その特典で好機が訪れると……

 ならちゃんと、そう言ってほしかったよ。



「ユグちゃん、復旧予定日って今日だよね」

「はい、そのようです」



 これってもしかして、ついているの? 

 いや、遅れている時点でついてないよね。

 だけど、希望の光は信じれば必ず俺の元へ姿を現してくれる筈だ。



「ユグちゃん、女神システムサービスからお誕生日特典プレゼントの遅延メールが届いていたわね。復旧予定は今日の午前中だけど、まだお誕生日特典プレゼントは届いていないみたい。だけど、午前中に届くと思う?」



 復旧予定時間は、あくまでも予定時間だ。

 時間が午後に、ずれ込まない保証はどこにも無い。

 しかも、もう直ぐ正午だ。



「いえ、分かりません。ですが、リリー様の感じられた通り希望の光は直ぐそこまで来ている筈です」

「そうだね。ユグちゃん、ありがと」



 そうお礼をいった瞬間に、



 ズルッ! 



「ふえ?」



 斜面から、足を滑らせた。

 全面がメール画面で埋まっており、足下が見えていなかったのだ。



 ズルズルポフ! 



 教訓! 皆さん、歩きスマホは止めましょうね。



「リリー様!」



 ユグちゃんが小さな姿で助けようと、眼前に来て支えようとする。



 ズッズッズッズ! プニュプニュ! 



 しかし、そんなことをされるとかえって前が見えない。

 それに、滑り落ちる度に加速する。

 手と足で必死に地面を支えようとするが、急勾配で思うように支えることが出来ない。



 ズルズルズルズル! プニプニ! 



 だけど、不思議と木には打(ブ)つからない。

 ユグドラシルが、木や障害物に打(ブ)つからないよう、俺の身体(カラダ)の方向を調節してくれているのだろうか? 

 それに、まだ頂上には到達すらしていなかった筈。

 なのに、登ってきた斜面とは逆方向に滑り落ちたのだ。



「なんふぇ? すっひの所は、とうどうだないおぬ?」



 ユグちゃんの二つの膨らみが、俺の口を邪魔して上手く話せない。



 ズリズリズリズリ! プニャプニャ! 



「リリー様、確かに先ほどの所は、まだ頂上ではございませんでした。ですが、お話しになられるとユグ擽ったいです」



 しかし、そうは言っても前が見えなくて不安なのだ。

 それに、お尻は痛くないが下着に色々な物が入り込んでくる。

 土やら小石や木くずやよく分からない虫? 

 いや、見えてないから分からないよ。

 だけど、見えないからこそ不安が増してくるのだ。



 ズルルズルルズルル! ポヨヨーン! 



 そう言えば、ここって森だよね? 

 蛇とか、いないのかな? 

 ひぃえー! 背中が、ゾクゾクしてきた。



 ズルリズルズルズルズル! ポヨポユ! 



 それにしてもユグドラシルは、先ほどからプニプニポヨポヨと自慢なのかは知らないけれど、膨らみを俺の顔に押しつけすぎ! 

 状況が状況だったから仕方がないと思うし、女の子同士だからユグドラシルは気にしないかもしれないけれど……



「ユグちゃん?」



 ズッズッズズズッズッズズ! ポヨポヨポヨ! 



「違いますよ、リリー様! 初めはそうでしたが、後のポヨポヨは黄色い蜘蛛の糸ですよ!」

「ふにゃ?」



 そう言った所で、滑り落ちなくなった。

 ユグドラシルが眼前から離れてくれたことで、俺がおかれている今の現状が分かった。

 どうやらここは、澱みの蜘蛛が山を擂(ス)り鉢状に掘ったことで出来た大穴のようだ。

 しかし幸いなのか不幸なのかは正直言うと不明だが、黄色い糸以外は絡まっていなかった。

 もし他の糸が絡まっていたらと思うと、ゾッとしたが……。


 それともう一つ幸いだったのが、澱みの蜘蛛に衝突する前に黄色い糸に絡まって、澱みの蜘蛛を起こさずに済んだのだ。

 しかし、足には黄色い糸が幾つも絡みついているし、少し先には澱みの蜘蛛の巨大なお尻が見えているのだ。

 まるで縞々(シマシマ)パンツでも穿いているかのように、赤青緑黄と四色に染まっている。

 やはり、ユグドラシルの眷属の情報通りだった。


 だけど、どうする? 

 これは、かなり不味い状況だ。

 だってこの黄色い糸は、伸びるので俺の力で引き千切る事ができない。

 しかも、細く薄い障壁も絡まっている。

 それに、木の枝を聖剣のようにしたとしても切れないし、くっ付いて取れなくなるのだ。

 ともあれ、鉄の槍や包丁を無駄にする事は出来ない。

 なので、アイテムボックスに取っておいた木の枝を取り出して切ってみることにした。



「ユグちゃん、どうしよう? 私の大切なコエダちゃん達が、黄色い糸に全部くっ付いちゃった」



 アイテムボックスにせっせと入れた、百本以上の小枝が全てくっ付いて取れなくなった。

 しかも、木の枝で何度も切ろうとしている間に上下逆さまになってしまった。

 咄嗟に腰を曲げて下にある糸に、くっ付かないようにしてみたが、この体勢は腹筋が割れていない少女にとってはお腹が攣ってしまう体勢。

 しかも、後ろから人に見られると大人っぽい下着が丸見えになっている筈だ。



「リリー様、それは仕方がないです。ですが、ソロソロ鉄の槍か包丁を使用されてはいかがでしょうか?」



 確かにアイテムボックス内には、もうコエダちゃんは一本も残っていない。

 有るのは、鉄の槍とキノットさんから頂いた包丁二本だけだ。



「コエダちゃんが可哀相だから、そうするね」



 そうは言ったものの、鉄の槍? 包丁? 

 どちらを使用すれば、良いか?



「リリー様、二本ある包丁を一本使用されてはいかがでしょうか?」

「うん。じゃー、魔虫蜜を舐めて考えてみるね」



 考えが思いつかない時など、頭を使う場合は甘い物を少し取ると、頭の働きがよくなると聞いたことがあるしね。

 俺は魔虫蜜塗(マミ)れの包丁を取り出し、付いている蜜を指で取ってみた。



「甘ーい。ユグちゃん、魔虫蜜美味しいよ。ユグちゃんも舐めてみる?」



 そう言って、ユグドラシルに指で取った魔虫蜜を舐めさせようとした時、蜜がたらーっと黄色い糸に落ちた。

 すると、糸が溶けて千切れた。

 同時に、薄く絡みついていた障壁さえも消失した。


 魔虫の巣の近くに、澱みの蜘蛛の巣が少なかった理由はこれか。

 ならば、勝機が見えてきた。

 俺は魔法を使用し宙に浮かんで、自信の足に絡みついた澱みの蜘蛛の糸を、魔虫蜜が付いた包丁で切り裂いた。


 それによく観察すると、澱みの蜘蛛の周りや近辺は黄色の糸しか張られていないことが分かった。

 つまり、黄色以外の糸は攻撃や罠に使う糸なのだろう。

 だけど、澱みの蜘蛛自身に魔虫蜜の効果が有るとは限らない。


 葵が言ったように、少し様子を窺い慎重に行動してから、澱みの蜘蛛を攻撃した方がいいだろう。

 でもその前に、もう少し魔虫蜜を補充した方が得策だ。

 もし戦っている最中に、魔虫蜜が無くなれば黄色い糸を切り裂ける手段が無くなってしまう。

 俺は魔虫蜜を補充するために、もう一度先ほど滑り落ちた所を目指した。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

リリー「葵、これって何かなー?」

葵「小冊子ですの。色々な下着が、載っていますわよ。それに……」

リリー「じゃー、いらないから葵にあげるね」

葵「えっ? ですが、リリー様の特典ですわよ?」

リリー「葵が、適当に選んでいて。でも、下着以外ね」

葵「下着は、毎月送られて来るので一番お得ですの。それに、他のは異例な程

  強力ですが、使い切りのものしかありませんですし」

リリー「だから、下着以外ね。今シルクのお菓子の家創りに忙しいのよ。葵に

    任せるね」

葵「はー……下着が、一番お勧めですのに。仕方が無いですわね。でしたら

  この特典が良いかもしれませんわね」

  こうして葵は、女神システムサービスからのお誕生日特典を選ぶのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。