封印されていた魔物16
【葵SIDE】
「スノー様、クレマチスちゃん? 準備は、宜しくて?」
私が二人にそうお伝えすると、スノー様は個人テレパシーを使用されているようでした。
「葵様、私はスノー様から劣化型神武具のことを、ご教授頂きましたので大丈夫です」
私はクレマチスちゃんの答えに頷くと、スノー様が個人テレパシーを終えるのを待ちましたわ。
「――今アイビー様に方法を伝えた後、シルク様にも進化できる事をお伝えした所ですぅにゃん。スミレ様達には、今の状況を維持して頂くしかないですがぅにゃん」
流石、スノー様ですの。
私のオープンテレパシーの内容から、読み取ったのでしょうね。
アイビーちゃんの方は、既に進化可能な状態でしたし、シルクちゃんは切っ掛けさえあれば進化可能ですの。
ですが、恐らく問題なく進化するかと……。
スノー様はアイビーちゃんへ、それとなくお伝えしたようですしね。
「ですわね」
確かに、私達が知っている炎龍への対策は劣化型神武具でした。
劣化型神武具が上手く扱えなければ、強力な攻撃で炎龍にダメージを与えて戦闘不能においやる事も不可能ですし、傷を与える事すらもままならないでしょう。
「ですが、私達が力を合わせなければ対処出来る者がいませんからね」
私がそう言うと、スノー様は俯いた。
「はいぅにゃん。サラ様とも、未だに連絡がとれていませんですしぅにゃん」
スノー様がそう答えると、クレマチスちゃんが空を見上げた。
「私も、お父様と……」
私達はそう言って、澱みの海牛のいる島の中心部に向かう為に浜辺から中心部に続く森に入った。
しかし、澱みの海牛の大きさは予想を遥かに超えた大きさだった。
「大きいですわね。浜辺から森に入ったかと思うと、まさかこの森自体も澱みの海牛の一部だとは思いませんでしたわ。クレマチスちゃん、後ろから触手ですの」
私が、背後から迫り来る触手の事をクレマチスちゃんお伝えすると即座に反応する。
「はい、葵様」
その反応の直後、再びクレマチスちゃんを触手が……
「クレマチス、下から来ますぅにゃん」
スノー様が今度は注意を呼びかけると、クレマチスちゃんが即座に反応する。
「はい、スノー様」
ですが、再びクレマチスちゃんを触手が襲う。
「クレマチスちゃん、次は右から来ますわよ」
私は再び、迫り来る触手の事をクレマチスちゃんにお伝えする。
「はい、葵様」
しかし、また触手がクレマチスちゃんを……
「クレマチス、左ですぅにゃん」
スノー様がクレマチスちゃんに注意を呼びかけ、クレマチスちゃんが躱す。
「はい、スノー様」
おかしいですわね。
クレマチスちゃんが、集中攻撃を受けていますの。
澱みの海牛が、クレマチスちゃんを脅威に感じているのか?
もしくは、私達と違って取り込めると感じているのか?
「クレマチスちゃん? 確か先ほどのスノー様の丁寧なご指導で、人型の姿でも飛べるようになりましたわよね?」
「ひゃい、葵様。スノー様、ちゃんと覚えていますから睨まないで下さい」
「ぅにゃん? クレマチス、睨んでいませんよぅにゃん?」
クレマチスちゃん、スノー様の丁寧なスパルタ指導がトラウマになっていますの。
スノー様が振り向いただけで、脅えていますわね。
ですが、そのお陰で人の姿でも自由に飛べるように習いましたわ。
「クレマチスちゃん、葵とスノー様を抱いて一度上空へお願いできませんか?」
「はい、葵様」
クレマチスちゃんが私とスノー様を抱いて上空に退避すると、先ほどまでいた森が畝って触手を伸ばして来ました。
ですが途中で止まった所を見ると、澱みの海牛と孤島はどうやら同化しているようですわね。
そう考えていると、無数の水弾を放ってきた。
ジュジュジュジュジュジュン!
「ひゃー、スノー様、葵様!」
「スノー様、私達は水弾を攻撃しますわよ。えっ? 水弾の色が変ですわ。クレマチスちゃん回避してくださいまし」
「ひえー」
私達を抱えたままでは、難しそうですわね。
しかし、私の攻撃で相殺出来るか?
「八尾の狐火!」
私の八尾から無数の焔が水弾を直撃致しましたが、水弾は健在。
やはり管理能力の権限差で、私の能力による攻撃では澱みの海牛の攻撃は相殺できませんか。
そして、そのまま私達を目指して突き進んで来ましたわ。
「葵様、狐火で防げていませんよ」
「クレマチスちゃん、お黙りなさい」
ですが、スノー様がいらっしゃいますの。
白銀虎は、最上位管理者がサラ様のために創られた特別な守護者。
スノー様もその能力を受け継いでいるため防御に関しては、管理者能力の権限差をも埋める事ができますわ。
「アブソリュート ゼロ フィールド! ぅにゃん」
ピキ! ピキ! ピキ! ピキ! ピキ! ピキ! ピキ! ピキ! ピキ!
「解除ぅにゃん」
ドス! ドス! ドス! ドス! ドス! ドス! ドス! ドス! ドス!
絶対零度の空間により、ありとあらゆる物の時を凍らせて全ての攻撃を防ぐ魔法ですわ。
この魔法は攻撃にも使用出来ますが、相手が大きすぎますの。
それに、スノー様でも多用は出来ないはず。
やはり、私達は地上から攻撃するしかありませんわね。
「クレマチスちゃん、下に降りて頂けますかしら?」
「はい、葵様」
私達は、再び浜辺に降りた。
水弾の射程範囲を考えると、クレマチスちゃんは遥か上空にいれば回避も容易くできそうです。
ですが、遠距離攻撃となるとブレスの力を矢に込めて放つしかなさそうですわね。
「クレマチスちゃんは遥か上空から、白龍のブレスの力を込めた天之麻迦古弓と天羽々矢で、澱みの海牛を攻撃ですの。ですが、澱みの海牛の攻撃は必ず回避してくださいまし。そうしないと、白龍の絶対的な防御力を誇る鱗でも傷を負いますわよ」
「葵様、私痛いのは嫌です」
「でしたら、必死に回避しなさい。それに先ほどの攻撃から考えれば、射程距離の関係で遥か上空なら回避しやすい筈ですわよ?」
「そうですか。でしたら、安心です。葵様、ありがとうございます」
「ですが先ほどの攻撃は拡散攻撃でしたので、単発の攻撃は分かりませんわよ? ですので、クレマチスちゃんは臨機応変に対応する事。良いですわね?」
「ひゃい。葵様」
次は私とスノー様ですが、出来る限り東側に被害が行かないようするには、南と北から攻撃するのが望ましいですわね。
私が南側から攻撃すると……
「葵様、スノーが北側から近づいて近接戦闘しますぅにゃん」
私が最後まで考えを巡らせる前に、スノー様が北側を担当するとおしゃってくれました。
「ええ。では葵は南側から攻撃致しますわね。それでは、各自で散開して攻撃ですの」
「はいぅにゃん」
「葵様、少し不安ですが頑張ります」
そう言って私達は、各自散開。
私は金の弓箭で自身の狐火を纏わせ、澱みの海牛であろう森を攻撃しつつ南下、スノー様は森の触手を、自身の氷結の能力を纏わせた魔剣ダインスレイフと魔剣ティルフィングで切り刻みながら北上、クレマチスちゃんは遥か上空へ一気に飛び上がり、白龍のブレスを高濃縮させて纏わせた天羽々矢を天之麻迦古弓で放ち攻撃していましたわ。
やはり攻撃力の固まりであるクレマチスちゃんの攻撃は、管理者能力の権限差が有ろうが劣化型神武具の力で上乗せされているので、澱みの海牛にはかなり効果が有る様子ですの。
流石、黄金龍の娘だけは有りますわね。
ですが澱みの海牛の体躯が巨大すぎて、弱点であり本体の、澱みの魔石までは届いていません。
私は南側の配置について様子を窺い、澱みの魔石が有る場所を探しましたわ。
澱みの海牛の身体は、中が少し透けているので澱みの魔石の場所が把握しやすかったですの。
そして、私は天之瓊矛を持って舞を舞う。
私は剣舞が得意ですが、この天之瓊矛も舞を舞うのに適していますわね。
金の弓箭も、私の能力を纏わせやすかった。
ですが、真の能力を発揮する事は出来ませんわね。
「踊れ踊れ! 大蛇よ踊れ! 祓い清め給え! 大蛇神かむながら守り給え! 我は天狐と八尾狐の巫女王女!」
舞えば舞うほどに、天之瓊矛の矛先から大蛇がその姿を現し、巨大な口を開けて私の背後に控える。
そして私は神楽舞を終わらせ、矛先を澱みの海牛に向ける。
「我に仇なす澱みの海牛を打ち払え! 大蛇神楽! 八岐大蛇!」
ギュッシャァ! シャァ! シャァ! シャァ! シャァ! シャァ! シャァ! シャァ!
ドドドドドド! ゴォォォォォ! ザシュー!
すると、八岐大蛇が森の触手ごと飲み込み澱みの海牛を喰らった。
しかし、巨体すぎて澱みの魔石に届く前に消えてしまった。
「ちぃー、ですの。体躯差が、有りすぎですわよ」
しかも、八岐大蛇が食い尽くした触手がまたウネウネと再生しましたわね。
あのウネウネ……如何わしいですの。
私を含めスノー様やクレマチスちゃんも、劣化型神武具を扱うことは出来ますが、劣化型神武具の真の能力を発揮させる事は出来ませんでした。
それに、劣化型神武具の力で私の力を上乗せするには私の場合舞うしかありません。
能力だけで殲滅できれば、舞う必要は無いですのに腹立たしいですの。
ですが太陽が照りつけている今は、この舞の方が適切でしたわね。
天之瓊矛の矛先を天の光りに晒して舞、光りを凝縮していきますの。
「闇を切り裂く天の光りよ! 祓い清め給え! 我は天狐と八尾狐の巫女王女!」
この舞も舞えば舞うほどに、天の光りが私の頭上に輝いていきますわ。
ここまでの熱量を喰らえば、流石の澱みの海牛も……。
「悪しき汚れを打ち払え! 天光神楽! 大祓!」
キュィィィィィィ! ビカァ!
チュゥゥゥゥゥゥン!
ザッバァァァァァァ!
――――――――――ドゴォォォォォォ!
「よもやよもや、ですの」
まさか、大量にある海水を使って光りを拡散させるとは……。
それにしても、触手がウネウネとウザったいですの。
私は、天之瓊矛に狐火を纏わせ近くにまで来た触手を切り裂いていく。
空を見るとクレマチスちゃんが、異常なほどに強力な白龍のブレスを纏った天羽々矢を天之麻迦古弓で放っていますが、やはり澱みの魔石までは届いていません。
私も大技をするには、触手から距離をおかねばなりません。
ですが、スノー様は一体どうしているのでしょうか?
すると遥か北側の大木の上に人影が見えたかと思うと、上方の空間が歪み渦となり城の様に巨大な二つの氷の刃が現れた。
そして、人影が双剣を振り下ろしたかと思うと
「アイス メテオ ダブル スラッシュ! ぅにゃん」
グゴォォォォォォ! グゴォォォォォォ!
ズザザザザザザッ! ズザザザザザザッ!
ゴォォォザァバァ! ゴォォォザァバァ!
巨大な二つの氷の刃が、澱みの海牛を切り裂いて孤島までも切り裂き、周りに大波を立たせた。
そして一瞬、澱みの魔石が露わになりました。
ですが、スノー様は何を考えておいでですの?
こんな大波を立てると、海の町が沈みますわよ?
「ちぃー、ですの。朧月夜に惑う焔!」
グゥギュゥゥゥゥン!
ババッババッババッバン!
ズバシャァーバシャ! ズバシャァーバシャ! ズバシャァーバシャ!
私は即座に能力を使用して、周りに狐火を散らして孤島の周りに発生した大波を打ち消した。
「はっ! 忘れていましたの。モフモフゴーレム達が、海の町を守っていましたの」
スノー様は、その事も考慮して超大技を放ちましたのに……腑甲斐ないですわね。
ですが、次こそは仕留めますの。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
お風呂上がり、別荘のベットで横になり目を瞑ってゴロゴロしていると極上の
毛触りが飛び込んできた。
リリー「モフモフー、フワフワー。この気持ちよさは、スノーね」
スノー「うにゃん、うにゃん、うにゃん!」
再び寝転んで眼を瞑っていると、手に巻きるいてくるフワフワした感触。
これは……スノーとは違った感触だから。
リリー「フワフワの尻尾が、擽ったいよー。ケットちゃんねー」
ケット「ミィー、ミィー、ミィー!」
リリー「何だか、楽しくなってきたわ」
シルク「リリー、手触りで当てっこしているのね」
リリー「うん」
シルク「私は、アイビーの毛触りだったら分かるんだけどね」
リリー「だよねー」
再度、寝転んで眼を瞑っているとホワホワプニプニュした物が腕に
のしかかってきた。
リリー「プニプニュ? あれ? この感触は、葵でもアイビーでもないよね?」
眼を開けてみると、レモンちゃんだった。
レモン「みゃー、みゃー、みゃー! エヘヘー。リリーちゃん、外れだよー」
リリー「えっと……レモンちゃん、ごめんね」
シルク「ぷっ! 貴女達、仲が良いわね」
リリー「シルク、レモンちゃんなら止めてよー」
ロベリアさんのせいで、よからぬ悪戯を覚えたレモンちゃんであった。




