封印されていた魔物13
【カトレアSIDE】
私とロベリアちゃんは、自身で熱に対する補助魔法をかけた。
それに、ディーネちゃんとルフちゃんの加護がある。
加護は非常に強力だけど、炎龍のブレスに対して耐えらるかは不明よ。
なので、炎龍の赤ちゃんが入れられている檻に何度も行ってはみたものの、炎龍がブレスを吐こうとする体勢を見せられる度に、私達は慌てて控え室に逃げ込んでいた。
「ロベリアちゃん、炎龍がブレスの体勢に入ったわ。だけど、炎龍の赤ちゃんの呼吸音が小さくなってきているのよ」
何度か様子を見に来ていたけれど、明らかに呼吸音が通常ではないわ。
それに炎龍の赤ちゃんならば、身体の大きさに合わせて、もっと大きな呼吸音でもおかしくはない。
今の呼吸音は、まるで小動物が呼吸するかのような小さな音で時折途切れているもの。
「カトレアちゃーん、スミレちゃん達が今ブレスを防いでくれたわー。だけどー、ブレスを吐こうとする間隔が短くなっているわよー。そろそろー、危険かもー?」
ロベリアちゃん、私も元冒険者。
それ位は、理解出来ているわ。
だけど、
「ロベリアちゃん、でもほら聞いて?」
キュゥ……スゥー……キュゥ――――スゥー……キュゥ……。
「カトレアちゃーん、呼吸音が時折途切れているわねー?」
ロベリアちゃんも、気づいてくれたみたいね。
リリーちゃんが殺さないようにと言っていた物には、この子の存在も含まれていたはず。
それにスミレちゃん達の行動を見ていると、炎龍を倒そうとしているようには見えない。
つまり、何らかの問題が生じたと言ったところね。
私も初めは参戦しようと考えていたけれど、今の私達では力不足だと直ぐに感じたわ。
ロベリアちゃんも私と同じように感じたようで、今は何も言ってこないし。
それに、スミレちゃん達が炎龍との戦いで手いっぱいなのは、見ている私達が一番よく理解している。
だからこそ、炎龍の赤ちゃんを私達が死なせないようにしなければならないと思うの。
「でしょ? それに鍵を壊そうと探してみたのだけれど……この檻、鍵穴がどこにも無いのよ」
まるで、何者かに鍵を隠蔽されてるかのように……。
Aランク冒険者の斥候として様々な罠や仕掛けを見破ってきたけれど、こんな事は初めて。
恐らく、私が見破ることが出来ない程の隠蔽魔法が施されているのだろう。
そうとしか、考えられない。
「カトレアちゃーん、武器で檻を壊せないのー?」
「いくらリリーちゃんから貰った属性付きのミスリルの剣でも、細身の剣だから難しいと思うのよ。それに私、檻の隙間から入ろうとしたのだけど、胸が引っかかって入れないの」
檻の隙間が意外と広かったので、隙間から私は侵入を試みた。
しかし頭や肩やお尻は入るのだけれど、どうしても胸が支えてしまう。
ロベリアちゃんも私と同じように、支えていたわ。
「うーん、私も引っかかるわねー。でもー、無理矢理入ればー。うーん、うーん……」
だけど、私より細めなロベリアちゃんならきっと入れるはず。
「あー!」
「ロベリアちゃん、入れたわね」
これで、ロベリアちゃんが赤ちゃんを繋いでいる沢山の鎖と布のような物を、外してくれるはず。
恐らく、鎖と布のような物が赤ちゃんの能力を阻害して弱らせている。
それらを取り去れば、きっと……。
「なんだけどー……カトレアちゃーん、どうしよー? 私ー、抜けなくなっちゃったー」
「えっ? 嘘でしょ? いつもの悪戯だよね?」
手を引っ張ってみるが、ロベリアちゃんが痛そうな顔をするだけで一向に抜けなかった。
「私も悪戯でー、挟まったりしないわよー。いーたーいー。カトレアちゃーん、痛いよー。手を引っ張らないでー、胸が千切れちゃうよー」
普通入れたのなら、角度を変えたりすれば出られる筈。
だけど、選りにも選ってロベリアちゃん?
胸の隙間に、檻が引っかかるかしら?
もしくは、熱と周りの氷のせいで檻の格子が膨張している?
それともディーネちゃん達の加護の影響で、鉄格子が変形した?
「何でロベリアちゃん入れたのに、出られないのよ」
「そんなこと言われてもー、私だってー知らないわよー。金具が、檻に引っかかっているみたいなのー」
金具? もしかして、下着の?
こんなに暑いのに、上に下着を着けているのが悪いのよ。
私みたいに、上に下着を着けていなかったら問題なかったのに。
守護する縫いぐるみ人形に、手伝ってもらって檻をこじ開けようとしてみたけれど、ビクともしなかった。
リリーちゃんの縫いぐるみ人形は、防御面には異常なほど優れているようだけれど、檻をこじ開ける程の怪力はなかった。
若しくは、この檻に力が出せない様に魔法的呪文がかけられているのか?
「だからーカトレアちゃーん、いーたーいー。ゆっくりー、引っ張ってー」
私がロベリアちゃんを無理矢理引っ張っていると、レモンちゃんがやって来た。
「レモンちゃん、どうしたの?」
レモンちゃんの頭に乗っている、ケットちゃんがグッタリしているわね?
どうしたのかしら?
「カトレア先生、ミルク持っていないですかー?」
ミルクって、飲み物のミルクの事よね?
リリーちゃんの別荘の冷蔵庫には沢山有ったけれど、持ってきていないわよ?
焼きたてのパンに、ロイヤルミルクティーは美味しかったけれどね。
それに選手控え室には水はあるけれど、食べ物は無かったわ。
「私は、持っていないわ。ロベリアちゃんは、持ってる?」
「持ってないよー。それよりー、カトレアちゃーん早く助けてよー」
私が持っていないのだから、一緒にいたロベリアちゃんも当然持ってないわよね。
それにしても、ロベリアちゃん抜けないわね。
「ミィミィ、ミィミィミィ……。みゃーみゃー?」
ケットちゃんとレモンちゃんが、みゃみゃー言って話している? のかな?
「レモンちゃん? ケットちゃんと、何か話しているの?」
「カトレア先生、どうしよー? ケットちゃんがお腹が空いて、魔眼の能力が発動しないってー」
みゃーみゃーで通じているって、魔眼のケットシーの能力かしら?
希少精霊すぎて、ケットちゃんの事よく分からないのよね。
それに、見た目が可愛いから抱っこして温泉に連れて行こうとすると逃げるし、ディーネちゃんも苦労していたわね。
「レモンちゃん、ケットちゃんの魔眼の能力が発動しないとどうなるの?」
「今まで炎龍ちゃんの能力を、ケットちゃんの魔眼で封じていたのだけれど、封じられなくなるのー」
確かに、私が知っている炎龍の攻撃手段は、爪や尻尾やブレス以外にも幾つか存在する。
お腹に高熱の炎を貯めて、龍の汗腺から一気に白い焔と高熱を放出し周辺を爆発させる能力、白獄の焔爆。
そして強敵と判断した時のみに使用する能力で、使用すると炎龍の全ての能力が向上する炎龍の切り札 炎覇龍気魂。
炎覇龍気魂を使用後、発動させることが出来る炎龍ただ一つの最強魔法、煉獄の裁き。
煉獄の裁きだけは、何としても阻止しないとこの国が滅ぶわ。
天空から、無数の黒い焔を纏った隕石を落とす炎龍の広範囲魔法だけは……
もしも、これらの能力を使用されると
「非常に、不味いわね……」
つまり、今までそれらの力をケットちゃんが魔眼で封じていたと言うことなのね。
私が考えを巡らせていると、レモンちゃんが服をモゾモゾとしだした。
レモンちゃん? 貴女、なぜ服の中にケットちゃんを入れようとしているの?
「ケットちゃん、レモンの吸ってみる? ミィ……。うん、だよね。前吸ったけれど、出なかったよね?」
まさかとは思うけれど……
「レモンちゃん? 金輪際、それは止めなさい。分かった?」
「ふみゃー? うん……。じゃー、ケットちゃん? レモンの代わりに、カトレア先生の吸ってみる? ミィミィ!」
レモンちゃん、小首を傾けて私にケットちゃんを押しつけて来ないで。
私、子供すらいないのに
「そんなの、出るわけがないでしょ!」
ケットちゃんも、吸おうとして口を動かして来ないでよ!
私は後ろに後ずさりして、難を逃れた。
大きくてもミルクなんて出ないし、例え出たとしても人前で吸わせるわけがないでしょ。
「ミィー! ミィ!」
「だよねー。カトレア先生のなら、吸うと出そうなのにねー。じゃー、ロベリアお姉さんのを……」
レモンちゃんとケットちゃんは、私から今度はロベリアちゃんに標的を変えた。
檻の格子に挟まっているロベリアちゃんは、私と違って逃げられないものね。
レモンちゃんが近づくにつれて、ロベリアちゃんの顔が青ざめていく。
「レモンちゃーん、お姉さんも出ないからー。それにー、ケットちゃんをー連れてこないでー。お姉さん、今逃げられないのよー。キャウー……カトレアちゃーん、吸ーわーれーるー助けてー」
ロベリアちゃんは、私と違って下着が有るから大丈夫でしょ?
あっ……服の上からロベリアちゃん、ケットちゃんに吸われているわ。
だけど、レモンちゃん?
ロベリアちゃんの胸から、出ないのは分かったでしょ?
今度は、ケットちゃんが前足を動かし始めたわ……。
ひゃう、どうしよう? ロベリアちゃんが、涙目になってきた。
レモンちゃん達を止めないと、私がロベリアちゃんに腹癒せで悪戯されるわ。
「だから、レモンちゃん? 止めなさいって! 誰も、ミルクなんて出ないわよ」
私がケットちゃんの首元を掴むと、ケットちゃんは大人しくなった。
「カトレアちゃーん、助けるの遅ーい」
睨まれたので、私はロベリアちゃんから眼を逸らした。
本当に、檻に挟まって出られないのね。
レモンちゃんとケットちゃんのミルク騒動で、もしかするとロベリアちゃんが自力で格子から出るかと考えたけれど駄目だったようね。
だけど逃げられないロベリアちゃんがいる状態で、もし炎龍が白獄の焔爆を放ってきたら私はどうすれば良い?
ガァァァァァァ!
私がそう考えていると、炎龍がもの凄い咆哮をあげた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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リリー「レモンちゃん、早朝からどこに行っていたの?」
レモン「ケットちゃんと、浜辺で遊んでいたのー」
リリー「だからケットちゃんが、びしょ濡れニャン子になったのね。じゃー、
食事の前に行こっか」
ケット「ミィー?」
レモン「うん」
葵 葵が、説明致しますわね。
温泉と言う言葉を使うと、ケットちゃんが逃げるようになりましたの。
なので、どこに行くとも告げずにケットちゃんを抱きしめて服のまま
目的地に行くようにりましたの。
ケット「ミィー、ミィー! ……」
プラプラ
レモン「ケットちゃん? レモンが首元つかんでいるから、逃げられないよ?
びしょ濡れニャン子が、プラプラニャン子になったねー」
ケット「ミィ……」
リリー「ケットちゃん、ほーら泡モコニャン子の時間だよー」
ケット「ミィミィ!」
プラプラ
リリー「レモンちゃん、しっかりケットちゃんを持っていてね」
レモン「うん。でも、リリーちゃんお腹空いたよー」
リリー「少し暖まったら、温泉を出て食事にするね」
レモン「うん」
リリー「レモンちゃん、暖まった?」
レモン「暖まったよー。だけど、ケットちゃんお腹空いたみたい」
リリー「朝から、ケットちゃん燥いだからね」
レモン「ケットちゃん、レモンの吸ってもママみたいに出ないねー」
ケット「ミィ」
リリー「えっ? ケットちゃん、ストッープ!」
こうしてリリーは、レモンちゃんの行動に危機感を覚え、誰よりも
早くケットちゃんにミルクを与えるようになったのである。




