封印されていた魔物12
【スミレSIDE】
葵ちゃんから、劣化型神武具を自由に使いこなす事が出来ない私達では、炎龍を大人しくさせることが出来ないと言われた。
つまり、今の私達では炎龍に対して実力不足ということです。
レモンちゃんは薄々気づいていたようで、炎龍に対して最初から攻撃魔法を放たずに私達の能力向上魔法と障壁に魔力を使っていました。
レモンちゃんの見た目と言葉使いはまだまだ子供で、行動が意味不明な所も多いですが、賢者の能力を有しているだけあって分析する能力は私より優れているようです。
杏ちゃんは初めて会った時、人見知りが激しく臆病で、リリーちゃんの後ろに常に隠れていました。
ですが今は、炎龍を前に一歩も引かず攻撃を繰り返し、隙を与えないようにしてくれる頼もしい仲間です。
先ほど、炎龍と交戦しながらのオープンテレパシーでしたが、葵ちゃんからの言葉で私の心の動揺は激しかった。
ですが、杏ちゃんはその事に逸早く気づいて、炎龍との牽制役を変わってくれました。
それに、リリーちゃんが
「私がスミレちゃん達のもとに向かって、炎龍を気絶させた方が良いかな?」
と言ってくれた時、私は正直ホッとしてしまいました。
レモンちゃんは、リリーちゃんがそう言うだろうと予想していたのかもしれません。
リリーちゃんがそう言う前に、
「スミレちゃん、レモンの魔力は十分にあるよ。だから、炎龍ちゃんと遊んでいても平気だよ」
と言っていました。
リリーちゃんから信用されて、私がリーダーをする事になったのに……こんな事では、駄目ですよね。
ですが、杏ちゃんが直ぐさまリリーちゃんに
「リリーちゃん、杏も問題ないです。スミレ様と協力して炎龍を攻撃していれば、レモンちゃんの負担も減らせそうです」
と言ってくれました。
杏ちゃんがそう言ってくれたことで、リリーちゃんに甘えようとしていた私の弱い心が消え去りました。
私は勇者の能力を手に入れ、一人強気になりすぎていたのかもしれません。
ですが、反省は後で良い。
今はレモンちゃんと杏ちゃんと協力して防戦に徹し、葵ちゃんの言うようにリリーちゃんを信じ好機を待つしかないです。
力を温存しつつ牽制攻撃をする事になりますが、時折技を入れなければ炎龍が私達の隙をついてブレスを吐こうとしてきます。
気を引き締めないと、戦況が一気に傾き私達の防戦陣形が崩れてしまう恐れがあります。
それに、防戦が長引くにつれて炎龍の攻撃が激しさを増した気がします。
爪と尻尾による単調な攻撃から、ブレスを吐こうと身構える連続攻撃が頻繁に増えてきました。
恐らく、炎龍は正気を取り戻したのでしょう。
正気を取り戻した事で、私と杏ちゃんが牽制攻撃を交代するタイミングさえも把握したのかもしれません。
グガァァァァァァー! フゥゥゥゥゥゥ!
「レモンちゃん杏ちゃん、炎龍がブレスを吐きそうなので技を仕掛けます。スミレが放つ技の影響を受けないようにして下さい」
「うん。レモンは、いつでも障壁を張れる準備をしているよ。スミレちゃん、行っちゃって!」
「はい、分かりました。杏は、次に炎龍がブレスを吐こうとした時に技を仕掛けます」
「杏ちゃん、お願いします」
キィィィィィィン!
私はミスリルの剣に冷気と魔力を集めると、炎龍に向かって技を解き放つ。
「【【氷撃 乱れ桜の舞】】」
幾つもの衝撃と冷気の桜を舞うように剣から放つと、ブレスを吐こうとした炎龍の身体を冷気の乱れ桜が包み込み凍らせた。
シュィィィィィィン! パキパキパキパキパキ!
ピキッ! パリンパリンパリンパリンパリン!
ギィシャァァァァァァ!
ですが炎龍は、身体を振り払って凍るのを防ぎ、そのまま尻尾による攻撃を仕掛けてくる。
ブゥゥゥゥゥゥン!
やはり、炎龍が間をおかずに攻撃を仕掛けてくる事が多くなってきました。
「皆、避けて!」
私が叫ぶと、皆が少し距離をおいて尻尾を躱す。
ズシャ!
えっ? 二連尻尾攻撃?
しかし、更なる尻尾による連続攻撃を炎龍が仕掛けてくる。
ブゥゥゥゥゥゥゥン!
「ディーネちゃん、氷の障壁を!」
「はい、スミレ様。氷の三重厚障壁!」
ゴォォォォォオン!
ピキピキピキ!
駄目だ、重厚にした障壁が壊れる。
「もう一度、皆回避!」
ダーァァァァァァン! ガッシャーン!
私の指示で皆は大きく距離を取り、回避は出来たものの激しい炎龍の尻尾攻撃が加速する。
ブゥゥゥゥゥゥゥン!
その炎龍の三連続尻尾攻撃に、すかさず杏ちゃんが牽制攻撃に移った。
シャッ!
「スミレちゃん、杏が牽制攻撃します」
「杏ちゃん、お願い」
杏ちゃんは、魔力を込めた衝撃波を繰り出す。
「魔練覇掌衝波! ハァァァァァタァ!」
ダガガガガガダガン!
炎龍が腕を交差させ、杏ちゃんの攻撃を耐える。
グゥガァァァァァァ!
そして叫ぶが、杏ちゃんの攻撃はまだ止まらない。
「魔練連撃衝波脚! せや、せや、せや、せや、せや、せやぁー!」
ドガァン ドガァン ドガァン ドガァン ドガァン ドガァン!
ズズッ ズズッ ズズッ ズズッ ズズッ ズズッ!
杏ちゃんが魔力を込め、衝撃波を伴った連続した蹴りで炎龍を後ろに下がらせた。
ギィシャァァァァァァ!
炎龍は後退しながらも、両腕で再び杏ちゃんの攻撃を防ぎましたが、こちらもそれは承知しています。
あくまでも、私や杏ちゃんの攻撃は全て牽制攻撃ですからね。
炎龍にダメージはないですが、先ほどの位置まで後退したので作戦通りです。
シュタッ!
「ふぅー」
私は次の牽制攻撃のために息を整えると、その間にレモンちゃんが破壊された障壁を再び張り、ディーネちゃんとルフちゃんに指示を出していた。
「ディーネちゃん、炎龍ちゃんの尻尾に気をつけてねー。身体を振って、早さを増しているみたい。それとー、避けられない場合は障壁を五重に張っちゃってー」
炎龍は途轍もなく硬い鱗で覆われているので、全身が武器です。
つまり、身体を振って早さを増す度に攻撃力が増加すると言うこと。
「はい、レモンちゃん。ディーネも氷の魔法を、スミレ様の技の後に時折入れていましたが、頻繁に放った方が良いでしょうか?」
「だよねー。ディーネちゃんの状況で、判断しても良いよー」
「はい、分かりました」
確かに私の技の隙を、幾度もディーネちゃんが魔法を放ち防いでくれていた。
だけど攻撃が激しくなってきた今は、炎龍の攻撃が数段早くなる前に氷の魔法による補助攻撃が必要だろう。
「ルフちゃん、杏ちゃんの技の時と回避の時は、加速を二段階上げちゃってー」
ルフちゃんのお陰で杏ちゃんの早さが上がり、攻撃力と回避力が増しているが、炎龍も早さを増した分二段階上げる必要が出てきたと言うことね。
「はい、了解しました。レモンちゃん、ルフもディーネちゃん同様に風の魔法を織り交ぜても宜しいでしょうか?」
今は杏ちゃんが技を出し、その後通常攻撃をする回数を増やして対処しているけれど、ルフちゃんの攻撃が加われば、杏ちゃんも少しは楽になる。
「うん、ルフちゃんに任せるー」
「了解しました」
「ケットちゃんは、魔眼で炎龍ちゃんの攻撃を邪魔してねー。ミィミィ、ミィーミィー! みゃみゃ、みゃーみゃーねー。うん、分かったー」
……えっ?
私の牽制攻撃の番では無かったので、良かったですが……。
レモンちゃん? 今の意味は、分かりませんよ?
「レモンちゃん? みゃみゃ、みゃーみゃーねーが分からないので、ちゃんと人の言葉で言って下さい」
「みゃ? みゃー?」
みゃとみゃーで、選択されても?
「レモンちゃん、どちらもですよ!」
「魔眼攻撃で、邪魔しているよー。だよー」
レモンちゃん? 普通、分からないですって。
「レモンちゃん、杏も分かりませんでした。スミレちゃん、牽制攻撃お願いします。でも、みゃみゃー語を勉強しますね」
「うん」
「杏ちゃん?」
余計な事を、レモンちゃんに言わないで下さい。
私が炎龍に牽制攻撃を仕掛けて、杏ちゃんを睨むと両手を振って
「スミレちゃん、冗談ですので怒らないで下さい」
と言ってきた。
恐らく杏ちゃんは、極度の緊張状態を解すために言ってくれたのだとは思うけれどね。
お陰で、私の緊張状態は解れました。
炎龍の攻撃が激しくなるにつれて、炎龍の赤ちゃんが気になったカトレア先生とロベリアさんは、縫いぐるみ人形を出して私達の援護と、炎龍の赤ちゃんの様子を見ていました。
「スミレちゃん、炎龍の赤ちゃんが気になるわ。親は熱を常に出しているのに、この子は出していないの」
確かに炎龍の赤ちゃんは、ルバーブ先生の兵士達が運んで来た時から熱を放っていなかったと思う。
もし熱を放っていたら、対応した服を着ていたはずですし。
しかし、炎龍の赤ちゃんを運んでいた兵士は、一般兵士達が着る服でした。
それにカトレア先生とロベリアさんが檻に近づいていますが、暑くも寒くもないようです。
ディーネちゃん達の加護があるので、守られているとは思いますが……。
炎龍は、通常身体から熱を常に出している。
ただし、認めた者に対して炎の加護を与え、その者の周りに熱の脅威が及ばないようにします。
しかし、今回の場合は認めた者はいないはずです。
つまり、何らかの方法で熱を出すことが出来ない状態にされていると考えた方が、辻褄が合う。
「カトレア先生、ディーネちゃん達の加護はかかっていますが、熱に対する補助魔法を二重にかけていますか?」
「ええ、勿論」
カトレア先生が私の問いに答えると、ロベリアさんが後ろから顔を覗かした。
「スミレちゃん、私もかけているわよー」
二人とも元冒険者だけあって、色々な耐性魔法を持っているみたいです。
なら、炎龍の赤ちゃんを任せられる。
そう言えば、クレマチスちゃんが苦しんでいる匂いがしていると言っていました。
炎龍の赤ちゃんは、もしかすると危険な状態なのかもしれません。
それに炎龍がブレスを吐こうとする方向は、決まって炎龍の赤ちゃんがいる檻の方なのです。
いくら炎龍の赤ちゃんに火の耐性があると言っても、弱った状態で大人のブレスを喰らえば衝撃で死んでしまうかもしれない。
恐らくそのような事も分からずに炎龍は、檻さえ壊してしまえば赤ちゃんを苦しみから解放する事が出来ると考えているのかもしれません。
「では、カトレア先生とロベリアさんの縫いぐるみ人形で先生達の守りを固めつつ、炎龍の赤ちゃんの様子を見て頂けますか?」
「良いわよ。いざとなったら、ロベリアちゃんの能力で防ぐから」
「まかせてー」
私達は赤ちゃんをカトレア先生とロベリアさんに任せ、炎龍と向かい合い再び牽制攻撃を開始するのだった。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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レモン「ケットちゃん、やってみてー!」
ケット「ミィ。ミミミ、ミィミィ!」
リリー レモンちゃんはケットちゃんと一緒に、海に向かって何をしているの
だろう?
シルク「えっ? 今、一部の波が消えたわよね?」
レモン「シルクちゃん、見てたんだ。今のはケットちゃんの魔眼の能力だよー」
ケット「ミィー」
シルク「波の時間を、止めたの?」
レモン「違うよ。簡単に言うと、波に伝わった風等の力をケットちゃんの魔眼で
阻害したのー。シルクちゃん分かった?」
シルク「ほへ?」
ケット「ミィー……ミィミィ」
シルク「ケットちゃん、今私を馬鹿にしたよね? 言葉が分からなくても、
分かるわよ。こら、ケットちゃん待ちなさい!」
ケット「ミィー! ……」
バシャーン!
レモン「キャハハハ! ケットちゃん、びしょ濡れニャン子になったね」
シルク「自業自得よ。ほら、ケットちゃん? 温泉、行くわよ」
ケット「ミィー! ……」
シルク「なんで、逃げるのよ!」
レモン「キャハハハ! ケットちゃんお風呂嫌いだから、温泉という言葉に
敏感なのー」
バシャーン!
シルク「ケットちゃん、逃げるからまた濡れるのよ」
ケット「……ミィー」
この後びしょ濡れニャン子は、結局温泉に連行され、泡モコニャン子
になるのであった。




