↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

149/240

封印されていた魔物11

 【シルクSIDE】


 言葉を詰まらせた騎士団長が前に出ようとすると、もう一人の女性騎士が騎士団長の肩に手をやった。

 そして、パイ王女の前で跪いた。



「王女殿下、次は私が参ります。ですが、一対一で相手する事をお許し頂けますか?」



 パイ王女が握っていた手を下ろすと、目を大きく開いた。



「副団長か。分かった。僕も、冒険者学校の生徒だと思って見くびりすぎていたよ。あの生徒達は、元Sランク冒険者からの指導を受けた生徒達……。しかし副団長、気を抜いたらだめだよ! 貴女の本気を、僕に見せてくれるかい?」

「はっ!」



 副団長が槍を握りしめて中央に向かうと、バレリアン君が控え室に戻ろうとしていた。

 すると、



 ゴォーン! 



「ギャ! ……」



 案の定リカステさんに拳骨(ゲンコツ)を喰らい、バレリアン君は気絶した。

 やはり、リカステさんもバレリアン君が女性騎士のお尻をさり気なく触っていたことを見ていたみたい。

 バレリアン君、自業自得だわ。

 リカステさんが、気絶して倒れているバレリアン君を見ると控え室を見た。



「アザレアちゃんブルメリアちゃん、わりいがコイツを控え室に連れて行ってくれるか?」

「「リカステ先生、絶対に嫌です!」」



 アザレアちゃん達に運ぶのを断れたリカステさんは、仕方が無い表情でバレリアン君を控え室に運んでいた。

 私とアイビーがその様子を見ながら、先ほど鼻血を出して倒れていた女性騎士をパイ王女の近くで回復していると、今度はエレモフィラ君が控え室から出てきた。



「ふっ! 皆、次は俺が行くよ。女性騎士達に、格好いい所を見せてあげたいからね」



 その言葉を聞いた副団長は、槍の柄を地面に叩きつけた。



 ダーン! 



「副団長の私相手に、良い度胸だ。手加減は、せんぞ! では、参る!」



 そう言って副団長が、エレモフィラ君に向かい槍先を見せて駆けだした。



 ズシュ! 



 そして、エレモフィラ君に槍を突き刺しに行くと、その勢いがどんどん加速する。



 シュシュ! シュシュシュ! シュシュシュシュシュ! 



「秘技! 十槍無双! シャーァァァァァァ!」



 まるで十本の槍に見えたその攻撃を、エレモフィラ君が避けると



「ふっ! 副団長さん、槍を動かす手は早いけど足が甘いよ。アースシャフト!」



 そう言って、詠唱破棄をして土魔法による攻撃をしかけた。



 ズダダダダン! 



 棒状の土が副団長の足を捕らえ、転倒するかと思われたが器用に片手をついて回転し着地する。



「くっ! だが、私はやられない!」



 そこから、舞のように舞って槍を振り回しだした。

 舞えば舞うほど回転速度が増していき、槍の刃先が幾つもの軌跡を描く。



「秘技! 特攻乱舞!」



 ズシュシュ! シュシュシュシュシュ! ギュルルルル! ゴォォォォォォ! 



 舞ながら特攻し、様々な攻撃を繰り出すその技に対して、またもエレモフィラ君は詠唱破棄で対抗する。



「ウインドブースト! ふっ! そんな物、身体能力の早さをあげれば俺でも躱せるさ!」



 そう言って、自信に速度向上魔法をかけるとエレモフィラ君は全て躱した。



「こやつ、私の秘技を悉(コトゴト)く躱すとは! ですが、私も速度向上魔法を唱えて早さを向上すれば躱せなくなります」



 そう言って副団長は槍を地面に突き刺し、詠唱しだした。



「岩山に吹きつける竜風よ! 私の元に集い速度を……」



 副団長が呪文を唱え出すと、エレモフィラ君は一気に距離をつめて肉薄。



「ふっ! 副団長さん、詠唱が遅いよ」

「えっ?」

「シールドスタン!」

「かはっ!」



 詠唱していた副団長は、エレモフィラ君の手に持った盾で打ち付けられ思わず息を吐き出すと気絶し、ゆっくりと後ろに倒れていった。

 倒れきる前にエレモフィラ君は、副団長の背に手を添えると



「副団長さん、武器を地面に刺すとは油断大敵だね。ふっ!」



 と言って、副団長を抱きかかえると私の元へ運んできた。

 エレモフィラ君? 

 貴方、格好をつけなければ少しはモテると思うわよ? 



「シルクちゃん、悪いけれど頼むね」

「この人が済んだら、みるわよ。そこに、寝かしておいて」



 私がそう言うと、エレモフィラ君は副団長を静かに寝かせると控え室に戻っていった。

 その一部始終を見ていたパイ王女が、震えだした。



「ぼ、僕の騎士達が……」



 そして騎士団長に鋭い眼光を向け、槍の柄を地面にめり込ませた。



 ガァーン! 



「月の雫小隊 騎士団長!」

「はっ!」

「本気で、相手を致せ! 僕に、恥をかかせるな!」



 そう言ってパイ王女は、リカステさんを睨みつけた。

 リカステさんは、パイ王女の眼を見つめ頷いた。

 一方控え室の前では、アザレアちゃんとブルメリアちゃんが悩んでいた。



「アザレアちゃん、どうします?」

「相手は、あまり魔法が得意ではなさそうですので、アザレアが出ると近づく前に倒しちゃいそうです。それに、ブルメリアちゃんは土竜との訓練で、アザレアに花を持たせてくれましたよね。だから今度は、ブルメリアちゃんが見せる番だよ。それと、殿下から獣王国の力を見せつけて来いって言われているでしょ。なんなら、パイ王女もそのまま倒してもいいよ」

「はい。では遠慮無く、ブルメリアが全て倒してきますね」

「うん、アザレア応援してるよ。だから、ブルメリアちゃん頑張って!」



 どうやら、ブルメリアちゃんが出てくるみたい。

 そしてブルメリアちゃんと同時に、騎士団長が前に出た。



「私は、月の雫小隊騎士団長です。手加減は、不要ですよ。貴女の全ての力を、私に見せなさい! ですが、こちらも本気で参ります!」



 騎士団長がそう言って駆けだしたがブルメリアちゃんは補助魔法を使用しようか迷っている。



「ブルメリアの身体能力を、普通に強化した方が良いでしょうか? それとも騎士団長さんが本気を出すと言ってくれたので、勇敢な戦士達の魂を複数宿す事が可能な ブレイブ ウォリアーズ スピリッツ パワーを使用するか? ですが使用すると、過剰に身体能力を向上する事になりますよね? ……今回は魔獣ではないですし、人相手には必要なさそうですね」



 ブルメリアちゃんの独り言に、騎士団長が技を繰り出す。



「貴女なめてかかると、後悔しますよ? 受けてみなさい! 秘技! 百槍無双!」



 ズシュ! シャーァァァァァァァァァァァァァァァァ! 



 副団長が放った槍の突きを、遥かに超える速度で繰り出す騎士団長の突きは正にその名に相応しい突きだった。

 しかし、その突きにブルメリアちゃんは全て対応していく。



 ギュィ! ギキィンキィンキィンキィンキィンキィンキィンキィンキィン! 



 ブルメリアちゃんは、その騎士団長の技を全て片手斧で防いだ。

 正に、片手斧で防ぐ鉄壁。



「何? まさか、全て受けきった?」



 騎士団長が驚いているが、ブルメリアちゃんは平気なようだ。

 日頃から、スミレちゃん達と訓練していたからね。

 スミレちゃんの攻撃は、もっと素早くて重い。

 しかも属性攻撃まで織り交ぜてくるので、ブルメリアちゃん達はいつも吹き飛ばされたいた。

 それでも、スミレちゃんは手加減をしてくれていたのだからね。



「今のは早くて、ブルメリア少し驚きました。流石、騎士団長さんですね」



 ブルメリアちゃんの言葉に、騎士団長は両手に力を入れた。



「ならば、この技はどうですか? 秘技から繋げる技で、私の秘奥義です!」



 ゴォォォォォォォォォォォォォォォ! 



「ハアァァァァァァ! 秘技! 暴風乱舞!」



 騎士団長の周りに渦のような風が纏わり付き、舞を舞うように槍を振り回し詠唱しだした。

 詠唱の隙を、槍の乱舞で補っているのね。

 副団長は足を止めないと詠唱できなかったようだけれど、団長は詠唱できるということね。



 ギュォォォォォォォォォォォォォォ! 



 渦のような風と共に、水滴が集まりだした。

 あれは、ウォーターボール? だけど、巨大だわ。

 そのウォーターボールと渦のような風を纏って、騎士団長は突進してきた。



「秘奥義! 月の雫!」 



 ジュォォォォォォォォォォォォォォ! 



「では、ブルメリアも騎士団長さんに見合う技をお見せ致します」



 ブルメリアちゃんは騎士団長の秘奥義に対して、炎を纏った片手斧を振り上げ両手で握り振り下ろしす。



「マグマよ、馳せなさい! ボルカニック イラプション!」



 ドォゴォォォォォォォォォォォォォ! ドダァダァン! ダダダン! 



 ダダダダダダッダーン! 



 火山の噴火のような炎と石を伴った物が地面から吹き出したかと思うと、騎士団長を巻き込んむ。



「グワァー!」



 騎士団長は空中に吹き飛ばされると、纏っていた水と渦のような風が消え去った。

 そのまま地面に叩きつけられるかと思われたその時、騎士団長をブルメリアちゃんがジャンプして抱き取った。

 着地したブルメリアちゃんは騎士団長を降ろすと、騎士団長は片膝をついた。



「私の月の雫が、打ち消された……君たちは、本当に学生なのか? だけど……参った、我々の完敗だ」



 騎士団長がそのまま一歩も動けずにいると、パイ王女が椅子から立つ。



「何をしている? 月の雫小隊 騎士団長! 早く次の技を!」

「申し訳ございません、王女殿下。私達では、彼女達には敵いません」

「ムッムムムム! では、僕が相手だ! 次の生徒は、僕の前に来い! 相手に、なってやる」



 バイ王女が前に出たかと思うと、



 ガァァァァァァ! 



 もの凄い咆哮が、西の闘技場から聞こえて来た。

 その後に、地響きと揺れが闘技場を襲った。

 そして、急に西側が静かになった。



「な、何だ? 今の、咆哮は? 僕のワイバーン達が、脅えている? おっ、おいよせ!」



 バイ王女が叫んだかと思うと、巨大な三体のワイバーンが、パイ王女ごと私とアイビーに巨大な炎弾を放ってきた。



 ドギュルルルル! ドギュルルルル! ドギュルルルル! 



「アイビー、危ない!」



 キュイィィィィィィィン! 



 私は咄嗟に前に出て、アイビーを守るように光りの障壁を張った。

 アイビーは、絶対に私が守ってみせる! 

 すると、私の中で心を覆っていた靄(モヤ)が弾け飛んだ。

 その瞬間、私の身体(カラダ)がどんどん大きくなっていく。

 そして下を見ると、私より大きかったアイビーがどんどん縮んでいく? 

 これは、一体何? 



「シルク!」



 えっ? アイビーが、私の名前を人の言葉で叫んだ? 

 くっ! 頭が痛い。目眩がする。耳鳴りが酷い。異常な眠気が襲ってくる。

 だけどその症状が緩和して行くに連れて、お腹が空いてきた。



「何よ! これは?」

「シルク、気がついた?」

「アイビー? えっ? 黒い鎧? あれ? 私大きくなって、アイビーが小さくなって……? えっ? アイビー、大きくなった?」

「シルク、進化したんだよ。僕のこの姿も、進化後の姿なんだ。この鎧はね、地面から能力で引き出した僕専用の鎧。それとワイバーンの炎弾は、僕が全て弾いたよ。だから、心配しなくて良いからね」

「私、進化したの? だから、身体(カラダ)が大きくなって……魔力が、溢れてくるの? だけど、制御出来る」

「うん」

「パイ王女は? リカステさん達は、どうなったの?」

「あー……パイ王女は巻き込まれそうになった所を、リカステさんが助けたんだけど、騒がれてワイバーンがまた暴れ出しそうになったので、危険と判断してリカステさんがワイバーンと一緒に気絶させたよ。ワイバーンはあの通り、アザレアちゃんが土魔法で牢獄を作って閉じ込めたよ。そして気がついたワイバーンを、今度はブルメリアちゃんが殴ったら大人しくなった……。二人の騎士達は、抵抗しなかったのであのままそこにいるよ。竜人は、より強い者に従うみたい。それとね、シルク? 落ち着いたらで良いのだけれど、リカステさんの膝の上で気絶しているパイ王女と、そこで横になってもらっている騎士団長を回復してあげくれるかな? リカステさんが、困っているから……」

「うん……」



 こうして私とアイビーは進化し、リカステさん達皆の助けもあり、どうにかパイ王女達やワイバーン達を大人しくさせることが出来た。

 アイビーに話を聞くと、アイビーは南西の洞窟での巨大ゴーレムとの戦いで、既に進化の兆しがあったらしい。


 そして、今回アイビーは私に危険が迫り進化の能力を発動させた。

 私もアイビーの危機に、自身の中で靄が弾け進化した。

 つまり違いは、アイビーは進化の兆しの時すでに様々な症状が現れ気絶するように眠った事と、私は進化と同時に、様々な不調が一気に押し寄せた事だ。


 ただ私の場合、その症状は空腹と共に消え去った。

 私の大食いは、もしかすると進化と深い関係があったのかもしれない。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「アイビー? 私眼が、悪くなったのかしら?」

アイビー「シルク、どうしたの?」

シルク「私、アイビーが空中に浮かんでいるように見えるのだけれど?」

アイビー「ああー、それはね。進化したことで、僕も飛ぶことが出来る

     ようになったんだ。シルクのようにね」

シルク「えっ? だけど、羽は無いわよね? それに、何だかプカプカして

    いるけれど?」

アイビー「それはね、重力と引力と磁力を駆使して飛んでいるからだよ。

     素早く飛ぶ場合は、このように能力を強めると素早く飛べるの」

シルク「早っ! そんなに早く飛んだら、危険じゃ無いの?」

アイビー「平気だよ。そうそう、シルク。今は人のような大きさだけど、

     以前のように妖精の大きさにもなれるからね」

シルク「そうなの? 私、もうずっとこの大きさだと思ったわ」

アイビー「ほら、見てみて。僕、小さくなったでしょ。この大きさだと、

     リリー様が五歳の姿でもケットちゃんみたいに頭の上に乗れるよ」

シルク「ホントだ! って、アイビー? 貴方、リリーの頭の上に

    乗りたかったの?」

アイビー「違うよ、ただの例えだよ。そして、ここまで大きくなれるの」

シルク「うわー、大っきい! リリーの自宅と別荘を併せたくらいの

    大きいじゃない。も、もしかして、私も?」

アイビー「シルクは、人の大きさまでだね」

シルク「……私、進化してもそんなに大きくないじゃ無い!」

アイビー「種族の問題だから、仕方がないよ」

 シルク「だけど、大きい人は大きいわよね? レモンちゃんも、

     年齢のわりに大きいし……ええ、どうせ私はBランク

     止まりよ」

アイビー「シルクは、確実にAランク以上だと思うけれど?」

シルク「何よ! 逆に、小さくなっているじゃ無い!」

     シルクの言っている意味が、よく分からないアイビーであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。