封印されていた魔物10
【シルクSIDE】
リリーが私の提案を受け入れてくれた事で、オープンテレパシーとなった。
オープンテレパシーで、私とアイビーが劣化型神武具の使用が不可であっても、人が乗ったワイバーンとの戦闘に問題はないと葵ちゃんが言った。
そして葵ちゃんの言葉に続くように、スノー様から【『「個人テレパシー」』】が入った。
【『「シルク様、スノーですぅにゃん。今、宜しいでしょうかぅにゃん?」』】
【『「えっ? あ、はい。人が乗ったワイバーンが四体見えましたが、少しなら大丈夫です」』】
一瞬スノー様からの個人テレパシーに私は慌てたけれど、スノー様が個人テレパシーをしてくるのなら重要な事なのだと私は感じた。
【『「シルク様、時間が無いので簡潔に申しますぅにゃん。貴女は既に進化できる状態となっていますぅにゃん」』】
【『「えっ?」』】
【『「切っ掛けさえ有れば、進化可能ですぅにゃん。ですので、自身を信じて下さいぅにゃん」』】
そう言ってスノー様は、個人テレパシーを終了させた。
それって、どういう事? 切っ掛けって、一体何?
私が考えを巡らせようとしていると、リカステさんが
「来るぞ! 配置につけ!」
と言って、注意を呼びかけた。
私はいつものようにアイビーに腰掛けると、先ほどよりも巨大で筋肉量が多く重厚な鎧をつけたワイバーンに乗った褐色美少女と、同じく巨大なワイバーンに乗った騎士三名が、長い槍を持って闘技場に降りて来た。
その褐色美少女と騎士達は、特徴的な物が生えていた。
それは、クレマチスちゃんの様な角とトカゲのような尻尾。
つまり、リーフリュウシン小国の竜人なのは間違いない。
そして、褐色美少女の頭に付けているティアラからして、私と同じ王族なのかもしれない。
鋭い眼光で、褐色美少女が二十体のワイバーンを見ると
「貴方達、なかなかやるようだね! 僕は、強い者は好きだよ」
と言った。
そして、ワイバーンに乗ったまま私達を見下ろて手を上げようとした瞬間、リカステさんが即座に前に出て跪いた。
「おじさん、中々良い面構えだね。僕の好みだ。面を上げても、良いよ」
「美しいお嬢さん、すまねえ。先に、言っておく。俺は、口は悪いが良いか?」
リカステさんが面を上げて答えると、後ろに控えていた騎士がワイバーンから即座に降りるとリカステさんの首元に槍の矛先を向けた。
「待て!」
褐色美少女の一声で、騎士達が槍の矛を収めた。
「良いよ。おじさん、ますます僕の好みだよ。ただ、強くなければ話しにならないけどね」
そう言って、褐色美少女は装飾が付いた長槍をワイバーンから外すとワイバーンから降りてリカステさんの前に来た。
「申し遅れたけれど、僕はリーフリュウシン小国の第二王女 バイ ディジー リーフリュウシンだよ。僕がいない間にルバーブという教師が来て、交流試合を取り消した。僕は久々にウインドウォーター王国の生徒と、相まみえられると思って期待していたのに遺憾すぎるよ。ルバーブという教師を、出してくれるかい? 僕が、直接力を見せて交渉する。それとも、おじさんがルバーブかい?」
そう言ってリカステさんを、鋭い眼光で睨んだ。
するとリカステさんは、貴族がするような礼をしてみせて、パイ王女を見つめた。
「美しいお嬢さん、俺はフォレストムーン王国の元Sランク冒険者で、今は冒険者学校で一介の教師をしているリカステと言う者だ」
竜人は竜と人との混血で、強い者を好む傾向がある。
だからかもしれないが、パイ王女は頻りにリカステさんを意識しているように見える。
それにこの闘技場には私達の存在はなく、まるでリカステさんしか居ないかのように……。
「ほぉー。元、Sランク冒険者ねー。ますます、気に入ったよ。リーフリュウシン小国で、僕の武術専属教師にならないかい?」
「わりーな。俺には、鍛え上げた生徒がいるんでな」
そう言って、リカステさんが生徒の皆を見ると、全員誇らしい顔をしていた。
「ほぉー。じゃー僕とその生徒が手合わせをして、僕が勝ったらリカステおじさんはリーフリュウシン小国に来てくれるかい?」
リカステさん、パイ王女に甚く気に入られているみたいね。
普通は美少年を意識する人は多いけど、竜人だけあってパイ王女の好みは、いかにも強いと顔から滲み出ているリカステさんにどうしても興味が行くのかもしれない。
リカステさんの場合、実力は本物だし、顔が怖いのでいかにも強そうに見えるしね。
それにさっきから気になっているのだけれど、王女なのに僕って……。
あっ! リリーが寝言で言っていた僕っ子て、こういう子の事を言うのね。
納得したわ。
だけど、僕って言っているわりにあの胸は何よ! 大きすぎるでしょ!
しかも、クレマチスちゃんより背が高いから体型的に合っているのよね。
なんか、腹立ってきた!
「なるほど。じゃーよー、俺の生徒達が勝ったらどうするよ?」
リカステさんの問いに、考える素振りを見せるとパイ王女は自身の胸に手を当てる。
「この現状を、僕の……バイ ディジー リーフリュウシンの名において全て不問とする。でもその前に、僕の護衛騎士に勝ってからかな? 護衛騎士に勝てたら、次は僕とだよ。護衛騎士一人に対して、生徒達全員でかかってきても良いよ」
護衛騎士に、偉く自信があるようね。
だけど、兜の後ろから長い髪が見えている所を見ると騎士達は皆女性でしょ?
そうか! パイ王女の世話も難なくこなしている所を見ると、騎士であり侍女なのかもね。
「何か、俺らの方が勝ったときの報酬が少ない気がするのだが?」
自国のワイバーンを捕らえられているパイ王女に対して、リカステさん言うわねー。
流石、元手練れのSランク冒険者と言ったところかしら。
普通、王族相手にそこまで言わないわよ。
「ふうーん。リカステおじさん、交渉上手だね。普通、この現状を不問とするだけでも、リーフリュウシン小国とウインドウォーター王国の戦争を避けることが出来るのにかい? あっ、そうだった。リカステおじさんは、フォレストムーン王国の人だったね。じゃーこの現状の不問とし、リカステおじさんと生徒達皆に好きな褒美をあげるよ」
「「「王女殿下!」」」
あーあ、言っちゃった。
好きな褒美をあげるだけは、一番言ったらだめな言葉なのに。
「お前達、僕が気に入ったリカステおじさんの生徒に、胸を貸すことが嫌なの? それとも、生徒相手に怖じ気づいたのかい?」
もしかして、リカステさんモテ期到来?
こんな美少女に気に入られる事って、普通ないと思うわよ?
リカステさんの後ろに、エレモフィラ君とバレリアン君もいるけれど、パイ王女は一度も見てないし。
「いえ、それは決してあり得ません。リーフリュウシン小国第二王女近衛隊 第三騎士団 月の雫小隊の名にかけて!」
「では、第二王女近衛隊 第三騎士団 月の雫小隊前に!」
「「「はっ!」」」
女性騎士達が一歩前に出ると、一名が闘技場の中心部に向かった。
その様子を見ていたリカステさんが、騎士達が乗ってきたワイバーンを指さした。
「王女さん、騎士達はワイバーンを使わなくて良いのか?」
確かに、リーフリュウシン小国の騎士は、ワイバーンを使っての戦闘を得意とする。
だけど一体一体が、私が先ほど眠らせたワイバーン達よりかなり大きいわよ?
「僕の騎士達は、リカステおじさんと戦うわけではないよね?」
「ああ」
「なら、必要無いでしょ。リカステおじさん相手には必要かもしれないけれど、冒険者でもない生徒相手に、僕の騎士が手加減しても倒されるわけがないしね」
……パイ王女、リカステさんの顔しか見てないから気づいていないみたいね。
「そうか? なら、王女さん? 次の騎士を呼んで、気を失っている騎士をさっさとどけてくれるか?」
パイ王女が話している間に、バレリアン君が風のように女性騎士の後ろに回り込むと、さり気なくお尻を触って気絶させてたわよ?
リカステさんは横目でチラッと見て、バレリアン君を睨んでいたから、後で拳骨されるの確定ね。
「何を言って……。おい! 月の雫小隊騎士団長? 僕が眼を離した時に、何が起こった?」
パイ王女、今頃気づいたのね。
「はっ! それが二刀短剣を持った少年が、特攻隊長の背後に回ったかと思うと特攻隊長が倒れておりました」
女性騎士団長も、大変ね。
説明しながらも、パイ王女がフラついた所を支えて、どこからともなく椅子を出してきて座らせたわ。
「生徒全員ではなく、生徒一人にか?」
パイ王女、まさに信じられないと言った顔をしているわね。
「はい。恐れながら……」
パイ王女に騎士団長が蹴られそうだけど、リカステさんが動いた。
「王女さん? あの騎士、顔を地面にぶつけて鼻から血が出ているぞ? 回復できる奴は、いないのか?」
「そんな者は、おらぬ」
バレリアン君、女性騎士のお尻触っている暇が有るなら、女性騎士が倒れたとき助けなさいよ。
「シルクちゃん、頼めるか?」
だから、私が行く羽目に……。
まあ、良いけれどね。
今この場で回復魔法が使えそうなのは、私だけみたいですし。
「良いわよ。アイビー、回復してくるわね」
「ワン、ワオーン。ワフ、ワン」
『シルク、僕も一緒に行くよ。乗っていくと、良いよ』
アイビーは、私がバレリアン君に呆れていたことに気づいたのかもね。
「ええ、そうするわね。アイビー」
しばらく何も話さなかったパイ王女が、騎士団長の顔を見た。
「……月の雫小隊騎士団長、今のは手加減し過ぎたからだよね?」
「――――。油断は、していたかもしれませんが……くっ!」
騎士団長は部下の不甲斐なさに、言葉を詰まらせた。
言葉を詰まらせた騎士団長が前に出ようとすると、もう一人の女性騎士が騎士団長の肩に手をやった。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アイビー『シルク、パイ王女や女性騎士を見て思ったけれど、竜人って大きい
んだね』
シルク「アイビーは、大きいのと小さいのとだったら、どちらが好きなの?」
アイビー『僕は、大きくても小さくても気にしないよ。それに、進化すると確か
シルクも大きくなるはずだよね』
シルク「ねえ、アイビー? アイビーが許せる範囲は、A~Hだとどれ位?」
アイビー『A~Hって? 身長に、そんな範囲有るかな?』
シルク「身長の事を、言っていたの?」
アイビー『そうだよ。シルクは違ったの?』
シルク「えっ? 勿論、身長のことよ。私が進化したら、どれ位大きくなる
かな?」
アイビー『分からないけれど、シルクの好みの大きさになれるといいね』
シルク「ええ。今から、大きくなるようにお祈りするわね」
進化で大きくなる事は分かっているのに、祈りを捧げる意味が
分からないアイビーであった。




