↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

140/240

封印されていた魔物2

 【リリーSIDE】


 闘技場をスミレちゃんとシルク達に任せ、スノー達には海の孤島、そして俺は山に向かっているのだが、皆の事が心配だ。

 まさか、同時に澱みの魔石を有する魔物が現れるとは、夢にも思わなかった。

 しかも、封印されていた魔物に宿るとは……

 封印されていた魔物の事は、スノーから教えてもらった。


 海に封印されていた魔物は、海の悪魔ニューディブランク。

 ニューディブランクとはウミウシの事で、澱みの魔石を宿した事で、どのような変異体になっているかは不明だ。

 しかし、今までの傾向から封印された時より強いのは確実だろう。

 そして、俺が今ユグドラシルと向かっている山には、魔風(マカゼ)喰らいのキングスパイダーが封印されていた。

 この魔物も、澱みの魔石を宿した事でどのような変異体になっているかは不明だ。


 ただ気がかりなのは、俺が向かっている山の方が澱みの魔石の反応が強い。

 拝借していて、フロックスさんから結局頂いた鉄の槍と、キノットさんが以前使用していた包丁が二本あるけれど……倒せるかな? 

 だけど、澱みの巨大ゴーレムは鉄の槍と、どこかに行った鉄の短剣で倒せた。

 ならば、この槍とキノットさんが大事に使用していた研ぎ澄まされた包丁が役に立つはずだ。


 皆には、劣化型神武具の許可を出したけれど上手くやれるだろうか? 

 スミレちゃん達やシルク達に無理を言って、炎龍やワイバーンなどを殺さないように言ったが大丈夫だろうか? 

 スノー達には海に向かってもらったが、澱みの魔石を宿している封印されていた魔物を倒せるだろうか? 

 俺は家族に、無茶なお願いをしてしまったのでは無いだろうか? 

 考えを巡らせ家族の事を心配し、マウスLV2を使用して空中を瞬間移動していると、ユグドラシルが姿を現した。



「リリー様、ユグ達家族の強さを信じて下さい。リリー様と絆が繋がっているユグ達は、どんな相手にも負けません」

「そうね、信じるわ。ユグちゃん、ありがとう」



 そう言うと、ユグドラシルは再び俺の中に消えていった。

 どうやら、戦いのために少しでも魔力を温存したいようだ。

 俺は皆の強さを信じ、魔風(マカゼ)喰らいのキングスパイダーのいる山の奥へ向かうのだった。



        ※ ◇ ※



 【カトレアSIDE】


「うむ。緊急時につき致し方あるまい。アルブスに、一任する」



 アルブス? 

 もしかして、ウインドウォーター王が仰っているアルブスとは、ホワイト王妃様の名前なの? 

 ホワイト王妃が頷いているところを見ると、そのようね。



「では、遠慮無く。この闘技場は点在する島の中で一番大きな島の全てで出来ており、この大陸の中でも最大の部類に入る闘技場です。本来の姿は東と西に大きく楕円形に広がっており、中心部に防壁を設けその防壁に観客席を設けたのが今の状態です。つまり、西にも闘技場の半分が有るの。なので、西側でスミレ達に炎龍を迎え撃ってもらい、こちら側でワイバーンの群れを迎え撃つ。シルクちゃん、如何でしょうか?」



 えっ? こんなにも巨大な闘技場なのに、これが一部で西側にも有るの? 

 でも、それなら確かに入り交じった交戦を避けることが出来るわ。

 それに、闘技場の防壁でワイバーンの群れや炎龍を覆えば町に被害が及ばないはず。



「確かに……一つの場所では両者の攻撃が入り交じり、危険かもしれないわね。ホワイト王妃様、貴重なご意見ありがとうございます。今、リリーとスミレちゃん達に確認を取っていますので少しお待ちを――」



 シルクちゃんが、リリーちゃん達と特殊な能力で連絡を取っているようね。

 誘拐事件の時もそうだったけれど、この連絡を取り合う事が出来る能力は本当に便利ね。

 私達も、使えれば良いのだけれど……今度リリーちゃんに、この件も一緒に聞いてみようかな。

 ウインドウォーター王が、ホワイト王妃と話す時って優しそうな眼をしているのよね。

 もしかして、昔を思い出しているのかな? 

 ホワイト王妃様が、若返っているから……。



「では、アルブス? 炎龍の赤子を、西に移動する必要があるぞ」

「お兄様、そうですわね」



 シルクちゃんが連絡を終えて、ホワイト王妃様の前に行った。



「ホワイト王妃様、リリーとスミレちゃんがお願いしたいそうです」

「ええ、宜しくてよ。お兄様」

「うむ。では、可及的速やかに用意を!」

「「「「「はっ!」」」」」



 ウインドウォーター王の命令に、近衛兵や騎士達が行動しだしたわ。

 こうなったら、私達も二手に別れる必要が有るわね。

 危険な事に、生徒を巻き込むわけにはいけない。

 かと言って、どこに逃がすにしても難しい問題なのは分かっている。


 それに、この子達もリリーちゃん達と共に訓練した事で確実に強くなっている。

 先ほどの相手側の魔法を見たけれど、間違いなくうちの生徒達の方が実力は上。

 ならば、危険すぎる炎龍は無理だとしてもワイバーンのこちら側でならシルクちゃん達を手伝えるかもしれない。


 でも、Sランク冒険者の判断は不可欠。

 私と、リカステで二手に別れるしか無いわね。

 ロベリアちゃんの能力は特殊すぎるので、私の判断で使用するとしたら、ついてきてもらうしか無いわね。

 私は、リカステの耳を引っ張った。



「カトレア、耳引っ張るな千切れる。痛てーよ!」

「静かにしなさい! リカステ、アザレアちゃん達の事をお願い」

「ああ、そうか。良いが、無理をするなよ? だけどよー。痛いから、ソロソロ耳を離してくれ」

「あっ! ごめん」



 流石、リカステね。判断が、速い。

 恐らく、リカステも同じ事を考えたのだと思う。



「私とロベリアちゃんは、西側の選手控え室に行くわね。ロベリアちゃん、良い?」

「良いわよー。集中すればー、一点に最大限の速度低下を起こせるものー」



 ロベリアちゃんの顔つきが、真剣になったわ。

 話し方は、いつもと同じだけどね。

 でも、心強いわ。

 これなら、任せられる。



「判断は、ロベリアちゃんに任せるわね」

「エヘヘー、炎龍ちゃんはー、動けるかしらー」



 ロベリアちゃんの特異能力は、指定した範囲に通常攻撃だけで無く放った魔法やブレス、あらゆる物の動きを低下させ、ダメージを与えるように力をも減少させる。

 以前私達がフロックス君やロベリアちゃん達とパーティーを組んだときに、倒すことが出来ないと判断した魔物、S級危険種である業風(ゴウフウ)を纏うコカトリスに出くわし、ロベリアちゃんの特異能力のお陰でどうにか命辛々逃げきれた事があったの。

 あの時は、本当に助かった。

 ロベリアちゃんがパーティーにいなければ、全滅は免れなかったもの。



「シルクちゃん、リカステと生徒達には国王陛下様達を守護するように伝えてあるわ。それと、ここは任せるわね。私とロベリアちゃんは、スミレちゃん達と合流するわ」

「うん。そう言うと思っていたから、リリーとスミレちゃんにも、テレパシーで伝えてあるわ」



 シルクちゃんも、私の行動お見通しなようね。



「それと、カトレア先生。リリーから、伝言が有るわよ?」



 リリーちゃんから、伝言って何かな? 



「リリーちゃんから?」

「うん。【カトレア先生のアクセサリーに機能を追加したので、先生が本当に危ないと判断した時には叫んで下さい】って」



 私のアクセサリーに、いつの間に? 

 もしかして、海の別荘で滞在させてもらっている時かな? 

 今日も、そこからここにリリーちゃんの能力を使って来たのだけどね。

 だけど、叫ぶって? 意味不明なのだけど? 



「シルクちゃん、何を叫ぶの?」

「えっと【人形(ドール)姫(プリンセス)セットアップ!】ですって」



 最近リカステから言われなくなったから忘れていたけれど、シルクちゃんに言われると恥ずかしいわね。

 シルクちゃん人形さんみたいに、小さいですし……。

 キャー! 急になぜか、恥ずかしくなってきたわ。



「何よそれ? そんな恥ずかしいこと、言えるわけ無いでしょ! シルクちゃん、リリーちゃんに言っておいてよ」

「でも、緊急じゃなかったら叫ばなくても良いらしいわよ?」

「そうなんだ。良かった」

「それと【カトレア先生、絶対に無理をしないで下さい。私を、信じて下さい】だそうよ」

「ありがとう、シルクちゃん。最後の伝言だけ、受け取っておくわね」



 強い龍種とは戦った事なんてないけれど、リリーちゃんから頂いたこのアクセサリーの機能にある武器でなら、私でもスミレちゃん達の力になれるかもしれないわ。

 私はロベリアちゃんと一緒に、西側へ急ぎ駆けだした。



        ※ ◇ ※



 【葵SIDE】


 同時に澱みの魔石を有した魔物が誕生する事は想定していたとはいえ、まさか封印されていた魔物に宿らせるとは思ってもいませんでしたの。

 私とスノー様は能力を制限されておりますので、澱みの魔石の能力を有する魔物に対して、障壁を破壊する力が思うように使えませんわ。


 しかも、リリー様に使用許可を頂いた劣化型神武具で障壁を突破出来るかは、どうしても私達の能力が関係してしまいますの。

 劣化型神武具は私達の能力によってその力を解放致しますので、澱みの魔石の大きさによっては、私達が障壁を破壊出来ないかもしれません。


 それに、クレマチスちゃんは能力を開花させましたが、本来の私とスノー様に比べれば、まだ天と地の差がありますの。

 ですが、希望は有りますわ。

 あれさえ、届けば……。

 スノー様に乗って海まで来ましたが、孤島まで泳ぐとなると時間がかかりすぎますの。



「スノー様、孤島までは如何(イカガ)致しましょうか?」



 それに浜辺近くに参りましたが、クレマチスちゃんがこの国に来た時のように巨大化すると、海の町の方々が大騒ぎされてしまいますわ。



「クレマチスに乗れば、孤島へ直ぐに到着しますぅにゃん」



 確かに、スノー様の仰る通りなのですが……。



「スノー様、私はリリー様に大きくなっては駄目と言われましたよ?」



 クレマチスちゃんの言うとおりなのですが、それはリリー様が制御の下手なクレマチスちゃんの事を思っての事ですのよ? 



「確かに、リリー様はそう仰いましたわね。ですが……」

「それは、大きすぎる場合ですぅにゃん」



 葵が考えていた事を、スノー様もお考えでしたのね。

 魔力を上手く調整すれば、先ほど上空で見えた炎龍やワイバーンの大きさにも変化する事が可能ですもの。



「私が幼龍になってスノー様と葵様を乗せて飛ぶと、幼い龍なので速度が遅いですが良いですか?」



 クレマチスちゃん? スノー様の仰っている意味が、分からないようですわね? 

 そもそも、龍種は魔力操作が大雑把すぎるのが要因ですの。

 クレマチスちゃんの幼龍化も、初めは無理でしたものね。


 ですが、リリー様とユグちゃんの協力のもと魔力操作覚え、幼龍へは変化出来るようになりましたの。

 リリー様は、クレマチスちゃんが悠久の時を支配する神名を司る女王となったことで、幼龍へと変化出来るようになったとお考えですが、初めにリリー様の膨大な魔力とユグちゃんの協力が無ければ無理だったと思いますわ。

 ですが、幼龍に変化する切っ掛けをリリー様達に賜ったのですから、調節する事は可能なはずですの。



「クレマチス、スノーは大きすぎる場合と言いましたが聞いてないのですかぅにゃん?」

「ビエーン。葵様、助けて下さい。スノー様が、怖いです」



 やれやれ、ですの。

 クレマチスちゃんの身体(カラダ)は、私達より遥かに大きいですのに、存在が上のスノー様が怖いようですわね。



「確かに、スノー様の仰る通りですの。クレマチスちゃん、魔力を調整すれば可能ですわ。葵とスノー様が、協力致しますの」



 私が協力すると言っていますのに、スノー様は切っ掛けを作って頂いたリリー様達の事を思って、怒っていらっしゃるようですわ。

 ですが、



「……スノー様、調整を手伝う前にクレマチスちゃんに圧をかけないでほしいですの。クレマチスちゃんが縮こまって、飛べなくなりますわよ?」



 スノー様は表情や言葉が少ない分、態度で訴えてきますのでこのようにクレマチスちゃんの場合、他の者より圧に耐性ががあるので一点集中した威圧を致しますわ。

 ですので、クレマチスちゃんの脅えようが酷いわけですの。

 全く、リリー様がいないとスノー様まで……なぜ、私が世話役にならないといけませんの? 



「クレマチスちゃん、私とスノー様が優しくお教え致しますので、早く覚えて頂けると助かりますの」



 そうクレマチスちゃんにお伝え致しましたが、結局スノー様のスパルタ指導で炎龍の大きさには変化出来るようになり、私達は孤島へ急ぎ飛んでいきましたの。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

     実は今、皆と海の別荘で隠れん坊をしている。

     スノーが鬼で、皆隠れている最中だ。

     台所に行くと、隠れることが出来る小さな箱があった。

     なので、箱を開けると先客がいた。

リリー「クレマチスちゃん、一緒に良いかな?」

クレマチス「はい、リリー様」

リリー  俺とクレマチスは、一緒に箱に隠れた。

     これだけ小さな箱に、クレマチスとくっ付いて入っているとは

     スノーも思わないだろう。

     フワフワのクレマチスの感触に、思わず叫んでしまいそうな気持ち

     を俺は抑え込んだ。

     しかし、次の瞬間

クレマチス「ビエーン! 怖いです」

リリー「しぃー。クレマチスちゃん、どうしたの?」

クレマチス「スノー様が、私にだけ威圧をかけてくるのです。ビエーン! 

      また、かけてきました。リリー様、私自首します」

リリー「自首って? クレマチスちゃんは、何も悪いことをしてないよね?」

クレマチス「していません。ですが、スノー様に怒られている気がします」

リリー「えっ? 何言って……」

    俺が言葉を伝えようとすると、泣き出したクレマチスがスノーの

    もとへ自ら捕まりに行っていた。

    この後、スノーに事情を聞きに言ったが

スノー「ぅにゃん?」

    と言って、可愛い顔で首を傾げていただけだった。

    スノーとクレマチスの関係に、謎が深まっただけであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。