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交流試合3

 魔法だけだとじり貧になっちゃうと思うのだけれど、ウインドウォーター王国の冒険者学校はそれで良いのだろうか? 

 だけど戦術指南教師であるディザスター ルバーブ先生は、息子達の披露した派手な魔法を見て笑顔で喜んでいた。

 うん、何となく理解したよ。


 恐らくルバーブ先生は、俺とスミレちゃんの戦闘訓練を見て、ウインドウォーター王国の冒険者学校の優秀な生徒ならば同じような事が出来ると言いたかったのかもしれない。

 まあ、スミレちゃんも派手な水龍が飛び出す技を見せたから何も言えないけれどね。

 さて次は、双子のサイクロン君とメイストーム君の番だね。



        ※ ◇ ※



 あれから幾度となく、小さな島が幾つも点在する海の町でリリーちゃんと果物屋で会うことが出来た。

 見る度に装いや姿が変わるが、美しくそれでいて可愛らしさは全く変わらない。

 それに、双眸の色が同じで心地良い声音は僕の心を益々虜にしていった。


 彼女は、海の町で商店を営む民達の子供達とも仲良くなっていた。

 僕は女の子達とは直ぐに仲良くなれたのだけれど、男の子達と仲良くなるのは本当に骨が折れたよ。

 護衛で第三騎士団長であるグラジオラスも、随分参っていたからね。


 ウインドウォーター王国の第三王子だと知っていても、彼らは容赦無く接してくる。

 接してくれるのは嬉しいのだが、海の町でどこにでも出没する僕が苦手なフナ虫を、さり気なく持ってくるのだ。

 それは男の子達の挨拶だと言っていたけれど、リリーちゃんに持って行く勇気のある男の子はいなかった。


 いや、いなかったのではないな。

 正確には、悪戯をしようとフナ虫を持っていこうとした男の子達は皆、悉(コトゴト)く女の子達が懲らしめていたからね。


 海の町の女の子は、男の子より強いんだ。

 そんな僕はリリーちゃんと会う度に、彼女に強く心を惹かれていった。

 もし本当に、この国のお伽話にも出てくる天空の城に住まう王女様なら……。



「ウィリディスム、始まったぞ。ルバーブ公爵の息子達の、勇姿を見ようではないか」



 僕が彼女の事を考えていると、一番上のプルルス兄上が話しかけてきた。

 兄は偉丈夫で、面倒見がよく騎士達にも慕われ魔物討伐もお手の物だ。

 常日頃からプルルス兄上を見習い毎日かかさず剣の腕を磨いてきたので、先日剣の稽古をつけてもらったが華奢な僕では力負けして敵わなかった。


 でもその後プルルス兄上は、僕の剣の善し悪しを示唆し、力ではなく素早さを生かした訓練方法を教示してくれた。

 そんなプルルス兄上は、僕の最も尊敬する兄上だ。



「はい、プルルス兄上」



 尊敬する兄上にそう言われたものの、彼女の事で頭がいっぱいだ。

 眼を瞑っていても、彼女の姿が思い浮かぶ。

 例え容姿を変えていても、髪型や髪の色と背の高さだけだからね。

 今は少し見るだけでも、分かるようになったよ。


 彼女は、この交流試合を客席で見ているのだろうか? 

 また、彼女と会いたい。

 だけど、彼女との初めての出会いは失敗だった。

 パープルちゃんだと思い、勘違いしたばかりに……僕は過去の自分を、叱りつけたい。


 少し憂鬱になっていると、フォレストムーン王国のホワイト王妃が客席を向いて笑顔で手を振っていた。

 ホワイト王妃は、どうされたのだろう? 

 そう言えば、ホワイト王妃が若返っていた事に皆驚いた。


 父上の実妹であるのに、この美しさと幼さであったので、誰もがホワイトバイオレット王女の姉上かと勘違いしそうになった。

 母上も驚きを隠しきれずに、思わずホワイト王妃に詰め寄っていた。

 父上は父上で、昔を思い出しホワイト王妃について回り母上に叱られていた。


 ホワイト王妃は、化粧を少し変えたと母上に伝えていたが真実なのだろうか? 

 しかしある日、母上がどこかへ向かったかと思うと、お酒の容器を肌身離さず抱いて持ち帰ってきた。

 そして五日が過ぎ、ホワイト王妃の専属メイドから教わった事で化粧を変えたのか? 

 母上が、少し若返った気がする。


 ホワイト王妃が手を振っている方を見てみると、あの客席の一角だけフォレストムーン王国の王妃や第二王女と同じ装いを纏う美少女達がいた。

 まるであの場所にだけ、美しい花々が咲いているようだ。

 でもその美しい花の中に……見つけた。



「父上、客席に手を振っても宜しいでしょうか?」

「ん? どうした、ウィリディスムよ」



 父上に、どう伝えれば良いのか悩んでしまう。

 客席にいる者達は、その殆どがこの国の民であるのだから……。



「ウィリディスム、気になる子でも来ているのか?」



 フラーウム兄上に、見透かされた? 

 フラーウム兄上は、僕のように華奢だが頭脳明晰で魔法が得意だ。

 魔物討伐時には、後方支援と魔法攻撃により騎士団の要となる。

 なので、プルルス兄上からも魔物討伐時には厚く信頼されている。


 僕にとって、フラーウム兄上も尊敬できる兄だ。

 しかし、一番上のプルルス兄上は既に婚姻されているので安心できるが、フラーウム兄上はまだ婚約の段階なので、彼女を見てフラーウム兄上の気を変えてしまわないように注意しなければならない。



「フラーウム兄上は、見ないようにお願いします」



 そう言って、僕はリリーちゃんに向かって笑顔で手を振った。

 フラーウム兄上が、僕の視線とフォレストムーン王国の王妃が手を振る方を向いてしまった。

 不味い。誤魔化した方が良いだろうか? 



「プルルス兄上、ウィリディスムが見ていたのはあの辺りのようです」

「フラーウム、パープルちゃんが客席にいるぞ?」



 ホッ……プルルス兄上は、真っ先にパープルちゃんに気がついた様だ。

 パープルちゃんが、リリーちゃんの隣にいてくれて本当に助かったよ。



「なんだ、ウィリディスム。パープルちゃんなら、良いじゃないか」

「はい……」



 フラーウム兄上が客席を見ている時、リリーちゃんが隣にいるパープルちゃんの方を向いてくれていたのも僥倖(ギヨウコウ)だったようだ。

 パープルちゃんにも、笑顔で手を振っておこう。



「それにしても、あの一角だけ美少女揃いだな。しかも、フォレストムーン王国の王妃様とホワイトバイオレット王女と同じ装いではないか?」



 プルルス兄上、もうそれ以上指摘しないでください。

 リリーちゃんの事をフラーウム兄上が感心を示されると、僕が困るので……。



「フラーウム兄上、オータムフラッド君の魔法の披露が今から始まりますよ。彼の魔法は水を操るので、天気が良いと美しい虹が見えるかもしれませんよ?」

「うむ。楽しみだ」



 ホッ……オータムフラッド君のお陰で、助かったよ。

 兄上達が、オータムフラッド君の魔法を真剣に見つめだした。

 特にフラーウム兄上は、海の町や水辺でふとした瞬間に見られる虹が大好きだからね。

 兄上達の誘導が成功し、ふとリリーちゃんを見るとパープルちゃんと一緒に手を振ってくれていた。

 僕は、心の奥底から幸せな気持ちになった。



        ※ ◇ ※



 パチパチパチ――――――



 双子のサイクロン君とメイストーム君が、オータムフラッド君を休ませ再び姿を現すと、拍手がかき消されるように声援が聞こえる。



「「「「「キャー! サイクロン様!」」」」」

「「「「「キャー! メイストーム様!」」」」」



 と、二人の弟達より遥かに大きな声援が二重奏を奏でた。

 その声援は、双子の兄弟の事を称える様にも聞こえる声援だった。

 ウインドウォーター王国の冒険者学校にとって、それだけ二人の存在は大きいのだろう。

 サイクロン君がルバーブ先生のもとへ行くと、ルバーブ先生が頷いていた。

 あれ? 先ほどのように審判に伝えずに、なぜルバーブ先生の所に行ったのだろう? 

 審判もその行動を見て、不思議な顔をしている。

 そして、メイストーム君が前に出ると



「今から、私達二人が倒すに相応しい魔物をご覧に入れよう」



 と言った。

 そして、闘技場の魔物を控えさせている場所とは違う場所の扉が開かれ、闘技場の兵士とは違う装いを纏った兵士が、布で隠された大きな檻と巨大な檻を運んできた。

 その様子を見ていると、スノーと葵が俺の側に顔を覗かせる。



「リリー様、大変ですの」

「リリー様、急に澱みの魔石の反応が二つ出現しましたぅにゃん」



 俺は直ぐに、ワールドマップを広域にして確認した。

 確かに、海と山に二つある。

 しかも、山にある澱みの魔石の反応が強い。

 海の澱みの魔石を、先に破壊してから山に向かうべきか? 


 しかし、気になる反応が近くにある火山島と東にある。

 澱みの魔石を有する魔物は、俺しか倒せない。

 望みが有るとすれば、能力が上がったスノーと葵、それに悠久の時を支配する神名を司る女王となったクレマチスだけだ。

 そして三人に劣化型神武具を使用させれば恐らく、澱みの魔石を有する魔物の障壁にも傷をつけ攻撃が通る筈だ。



「スノー様、横から割り込んで来ないでください。葵が言いたかったですのに」

「ぅにゃん?」

「そんな可愛い表情で首を傾げられても、葵は騙されませんわよ?」



 それに、東に多数ある反応は明らかにこの闘技場に向かっている。

 アイビーとシルクは、俺達との訓練を見て自身達でも能力を開花させていた。

 シルクとアイビー、カトレア先生達や生徒の皆で東にあるこの数を任せるしかない。

 俺がそこまで考えていると、クレマチスが上から覗き込んできた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ホワイト王妃「ロセウスちゃん、リリーちゃんのお家は行きました?」

ロセウス王妃「はい、ホワイト王妃様」

ホワイト王妃「ロセウスちゃん、駄目よ? 私の事は、ホワイトちゃんと

       呼んでね。そうしないと、使用方法を教えないわよ?」

ロセウス王妃「はっ、はい。ホワイトちゃん」

ホワイト王妃「では、朝起きると水で洗顔ね。その後、その神酒を手に取って

       顔に馴染ませるように軽く叩いていくの。顔のケアはそれだけ

       で良いわよ。湯浴みは数滴湯に落として、いつものように湯浴

       みね。毎日小さな容器に入れて、一杯だけ飲む。夜も寝る前に

       朝と同じように洗顔と神酒を顔に馴染ませる。その繰り返しね。

       そして、リリーちゃんの事を思って毎日お祈りね。これが、

       一番大事」

ロセウス王妃「はい。それは、毎日欠かさずしております。私もリリーちゃんの

       信者にして頂きましたが、これで本当に若返るのでしょうか?」

ホワイト王妃「ロセウスちゃん、信じる事が大切よ」

ロセウス王妃「はい、ホワイトちゃん」

       こうしてリリーは知らず知らずのうちに、新たな王族の信者を

       獲たのであった。

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