交流試合1
今日は交流試合本番、俺はその試合会場の観客席に着いている。
但し、杏ちゃんの膝の上である。
なので交流試合の前に、少し話さなければならないだろう。
実は、誕生日会の次の日スノー達やカトレア先生達や生徒達を連れて杏ちゃんの果樹園にお邪魔した。
そして、いつもは大人しく果樹園の受粉を手伝う大人しい魔虫が凶暴化し、様々な事が起こり、杏ちゃんが俺の使徒となり、風の大精霊シルフが俺とレモンちゃんの召喚精霊となったのだ。
勿論皆と同様、杏ちゃんには桜ダイヤモンドのカットを施したクリスタルが付いたネックレスと同じカットを施したターコイズのイアリングを渡し、風の大精霊シルフにはユグドラシル達と同様、そのままの状態でアッシャーカットを施したエメラルドと、同じカットのカイヤナイトを渡した。
それと、幼少の頃に杏ちゃんが大精霊シルフと会った理由が分かった。
実は杏ちゃんの家系は、兎獣人とドライアドとのハーフであった。
ドライアドは様々な物語の中で、木の精霊や木の神などと言われており、杏ちゃんの両親曰く風の大精霊とも縁が有ったそうだ。
杏ちゃんは、ドライアドの血筋を色濃く受け継いでおり回復魔法も使用できた。
更に兎獣人の脚力も受け継いでいたので、拳鬼の職を授けた。
他にも、果物屋のおじさんの店に行くたびに第三王子に会ったり、その果物屋さんがウインドウォーター城のお抱え果物屋になったりもしたが、もう少しすると交流試合が始まるので、このお話は又の機会にしようと思う。
と言うわけで、今日は天気が良く絶好の交流試合日よりである。
ブゥーン!
拡声器のスイッチが入ると、ウインドウォーター王国の審判が前に出た。
「皆様、お待たせしました。只今より、交流試合を始めようと思います。今回は趣向を凝らし、毎年のような団体戦や個人戦は行わず、こちらが用意した魔物を倒して頂き、ランクの最も高い魔物を倒した者や倒した魔物の数などの順位で、両国王陛下より賞金と願いを聞いて頂ける権利を授けられます。尚、高ランクの魔物を倒せる自信がある者は、代表選手に拘わらず参加可能ですので飛び入り参加も可能となっております」
審判が、とんでもない事を言いだした。
恐らく、ホワイト王妃達の根回しでこのような流れになったのだろう。
なぜなら、先ほど王妃と第二王女が俺のもとへ来て
「リリーちゃん、あの事をお兄様や重鎮貴族達それにお兄様の臣下達にお伝えしたの。すると、重鎮貴族達の会合でディザスター ルバーブ公爵の処罰が決定しそうになりました。ですが、私の提案を受け入れた事で公爵は処罰を免れましたわ。なので、楽しみにしていてね」
「お母様、苦労した甲斐がありましたね」
と言っていた。
しかも、王妃の提案が満場一致であったらしい。
ホワイト王妃は妃となる以前より、ウインドウォーター王国の重鎮貴族達に痛く気に入られており、フォレストムーン王国の王妃となった今も毎年重鎮貴族達と交流をしていたのだ。
更に言えば、ホワイト王妃の一番上の兄であり、若くして亡くなったルバーブ前公爵がディザスター ルバーブ公爵の父であり、その亡くなった前公爵の夫人とも仲が良かったのである。
つまり、ウインドウォーター王国の冒険者学校の戦術指南教師であり公爵であるルバーブ先生は、いくら息子達の為とは言え一番敵に回してはならないホワイト王妃を怒らせてしまった訳である。
それともう一つ、語っておかないとならない事がある。
実は王妃の若返りが進行し、今の見た目年齢は二十代前半となっている。
その姿も相まって、重鎮貴族達との話しも纏まったと思われる。
この話をしたからには、今度は若返りの秘密も語らなくてはならないだろう。
俺は、リサイクルの観点から最近になって王妃達が飲み終わったお酒の空樽や容器を、自動で自身のアイテムボックスに回収する機能を付けている。
そして、一部のお酒にのみ容器はユグドラシルに頼んで特殊な木を使用している。
その特殊な木とは、ユグドラシル曰く世界樹の木の一部だったようだ。
そして、俺がいない時に王妃が取りに来ても渡せるよう自宅に創り置きをしている。
創り置きしている場所は大温泉の近くで、大温泉と言えばウンディーネが踊る訳で……つまり、様々な要因が作用しあい、そのお酒を飲むと三週間程度若返り効果が続くのだ。
しかも女性にのみ、その効果が現れる。
更に言えば、一部のお酒と言っていた物はホワイト王妃がお気に入りの日本酒である。
日本酒は他のお酒より栄養価が高く、美肌効果もあると言われているのは知っていたが、まさかここまで効果が顕著に現れるとは思ってもいなかった。
恐らく、お米を発酵させ出来たアミノ酸やフェルラ酸、コウジ酸に含まれるチロシナーゼも別物なのだろう。
おっと、忘れるところだった。
俺の創った物には愛情限界突破も含まれているので、その辺りも三週間程度若返り効果という、とんでもない効果をもたらせた要因ではないかと考えられる。
そして、ホワイト王妃の若返り効果を見て、ウインドウォーター王国の王妃やホワイト王妃が根回しして回った重鎮貴族の夫人達が俺の海の別荘に押しかけて来たのは言うまでもない。
いやもう、大変だったよ。
まあ、事前にホワイト王妃から聞いていたので問題は無かったのだけれどね。
……交流試合前に、語ることが多すぎるよ。ホントに!
よしでは、今度こそ気を取り直して行ってみよう。
ウインドウォーター王国側は、小手調べにまずは十二歳のアバランチ ルバーブ君を五体のゴブリンと戦わせるようだ。
アバランチ君が前に出てくると、ウインドウォーター王国側の生徒が一斉に拍手をして、女生徒達が声援を送っている。
パチパチパチパチパチパチ!
「「「「「キャー! アバランチ君、頑張って!」」」」」
どうやら、ウインドウォーター王国の冒険者学校の全校生徒で来ているようだ。
フォレストムーン王国側は、代表選手とカトレア先生達しかいない。
「皆、いつもの戦闘訓練だと思いなさい」
「皆ー、頑張ってねー」
と言って励ましている女性は、カトレア先生とロベリアさんだけだ。
リカステさんは、皆をフォレストムーン王国側の選手席で見ている。
「「「「はい」」」」
皆も返事をしているが、エレモフィラ君とバレリアン君の表情が……うん、何となく分かるよ。
やはり、女生徒の声援が有るのと無いのとでは男の子達のやる気が変わってしまうようだ。
エレモフィラ君とバレリアン君は、思春期の男の子だからね。
応援してくれる女子が沢山いた方が、やる気が出るよね。
俺達は観客席側で見ているので、先生達と離れているのだ。
俺はスミレちゃん、レモンちゃん、杏ちゃん、スノー、葵、クレマチス、シルクに声をかけ、ある指示をだした。
ウインドウォーター王国側が全校生徒の拍手と女子の声援なら、こちらにも女子はいる。
そう、俺達家族の声援だ。
しかも、超美少女揃い。
その中に俺も入るが、突っ込まないで下さい。
中身はあれだけど、身体は美幼女なんだからね。
年齢を合わせるために、俺と葵は十二歳の少女の容姿になった。
レモンちゃんは八歳だけど、二つの膨らみが大きいので十二歳以上に見えるだろう。
つまり、ウインドウォーター王国側が数ならこちらは質で勝負という訳だ。
自信があるのか、あちらの代表選手である二つ上の兄二人は椅子に腰掛けたままで動かない。
そして、一つ上の兄がアバランチ君に指示を出していた。
「アバランチ! フォレストムーン王国の学校の子供達に、お前の実力を見せてこい」
「オータムフラッドお兄様、僕の実力を見ていてくださいね」
アバランチ君は五体のゴブリンを見ると、詠唱しだした。
五体のゴブリンはまだ檻に入っているのだけれど、あれって良いの?
反則気味だと思うけれど、審判が何も言っていない所を見ると有りなのかな?
「空より降りし雪よ! 降り積もりし時、その絶大な力を僕に示せ!」
アバランチ君の詠唱が終わると同時に、五体のゴブリンが檻から解き放たれた。
ギィィィィィィー!
五体のゴブリンがアバランチ君の眼前に迫ると、雪の塊がアバランチ君の後ろで形成していく。
ゴォォォォォォ!
「雪よ解き放て、スノウスライド!」
ビュゥゥゥゥゥゥ! ドゾォォォォォォ!
小さな雪崩が五体のゴブリンを襲ったとかと思うと、五体のゴブリンが凍り付いた。
アバランチ君、なかなかやるじゃない。
今の魔法はアイスダガーを粉々に砕き、一つ一つを氷の刃としたものだ。
アイスダガーを六つ唱えた事で、小さな雪崩のように見えた。
つまり、アバランチ君が自信で作り上げたオリジナル魔法と言えよう。
まあ、もっと大きな雪崩の様な魔法も有るのだけれどね。
あれ? アバランチ君がフラフラして、尻もちをついたよ?
もしかして、魔力切れ?
すると、一つ上のお兄さんがアバランチ君に肩を貸していた。
「アバランチ、良くやった。今のは、良い魔法だったぞ。ゆっくり、休め」
「はい、オータムフラッドお兄様」
……えっ? 今ので終わり?
いやいやいや、今の実戦だったら周りの魔物に襲われて死んじゃうよ?
ほら、見てよ。
アザレアちゃんとブルメリアちゃんとエレモフィラ君が、呆れているよ。
バレリアン君は、次なので準備運動をしているけれどね。
「次は、君たちの番だよ」
そう言うと、オータムフラッド君はアバランチ君を後ろに座らせた。
バレリアン君が二刀短剣を持つと、前に出る。
しかし、先ほどまで椅子に腰掛けていたウインドウォーター王国側の一人が立ち上がった。
「フォレストムーン王国は、魔法を使用しないのか?」
確かホワイト王妃様の情報によると、あの子はサイクロン ルバーブ君十四歳だ。
バレリアン君が、二刀短剣を装備して前に出た事でそう思ったのかもしれないが、バレリアン君達は派手な魔法よりも、より実践的に近い形で、いかに消費を少なくして魔物を倒すのかという事を重視している。
魔物討伐は、競技ではない。
冒険者側から見れば狩りだが、生死を分けた戦いでもある。
森の奥やダンジョン等で、もし全力を出して余力が無くなれば、それ即ち死を意味するからね。
だから、堅実な戦い方をするのだろう。
サイクロン君の発言に、サイクロン君と双子の兄で十四歳の長男であるメイストーム ルバーブ君がオータムフラッド君に顎で行けと指示を出していた。
「ならば、僕が見本を見せてやろう。有り難く思うが良い」
オータムフラッド君が、もう一度前にやって来た。
フォレストムーン王国側のバレリアン君は、審判を見ている。
審判が前に出てくると、
「えー……。協議の結果、交流試合であるので勝敗は記録されません。よって、先ずはウインドウォーター王国の選手が先に技や魔法を披露し、その後にフォレストムーン王国の代表選手による技と魔法を披露する流れとなりました。これは、フォレストムーン王国の国王陛下と王妃様も承知されて頂いたとの事です」
と拡声器から審判の声が聞こえてきた。
もしや、また王妃の策略かな?
王妃が王族達がいる席から、笑顔で俺に手を振っていた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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王妃「ホワイトバイオレット、残りは十重鎮貴族です。リリーちゃんとスミレ
の為に頑張りましょう」
第二王女「お母様、重鎮貴族達へ根回しするのは良いですが、私をなぜお母様
の妹と伝えるのですか?」
王妃「だって、リリーちゃんのお酒のお陰で私若くなったでしょ?」
第二王女「お母様が若く見えるのは私も嬉しいですが、自身の娘を妹を仰るのは
よしてほしいです」
王妃「良いじゃない。だって、見た目はホワイトバイオレットの姉に見える
わよね? それに、重鎮貴族達も私の冗談だと承知しているわよ?」
第二王女「見た目で言えば、見えると思います。ですが、私には二つ上の
イエローお姉様がいますし、冗談でもその装いをお母様が着るのは
娘として恥ずかしいです」
王妃「良いじゃない。貴女の装いの色違いで可愛いでしょ? だけど、そこまで
言うなら仕方がないですわね。でしたら、イエローの姉で我慢しても
良いわよ」
第二王女「ですから、なぜお母様は私の姉に拘るのですか?」
王妃「リリーちゃんから頂いたアクセサリーに備わっている、お揃いで色違いの
可愛い装いが着られるからよ?」
見た目が若くなった事で、可愛い装いを着られる喜びに目覚めてしまった
王妃であった。




