海の別荘で催し?
「ユグちゃん先輩、ケットちゃん、準備が出来ました! どうぞ、リリー様を玄関に」
そう言うと、ユグドラシルと魔眼のケットシーが俺を引っ張って玄関に連れて来た。
ロベリアさんは遅れていたが、丁度今到着したようだ。
俺が玄関の前に行くと、扉が開かれた瞬間、
パーン! パパーン! パーン! パパーン!
クラッカーの音がしたかと思うと、
「「「「「リリー様、お誕生日おめでとうございます!」」」」」「ミィミィ!」
そう言って、俺の家族であるスノー達皆から祝福され出迎えられた。
突然のサプライズに俺は嬉しくなり、いつの間にか涙を流していた。
スミレちゃんとレモンちゃんが、俺の手を取り大きなケーキの前に導いてくれる。
そして玄関の方からも、カトレア先生、リカステさん、ロベリアさん、それに女生徒達皆が手を叩き
「「「「「リリーちゃん、お誕生日おめでとう」」」」」
と言って、祝福してくれた。
そしてエレモフィラ君とバレリアン君が、顔を見合わせ遅れて
「「リリーちゃん、おめでとう」」
と言った。
俺がケーキの前に着くと、葵が前に出てきて一礼する。
「リリー様、お誕生日おめでとうございます。驚かせてしまいましたが、私達はいつもリリー様に沢山のお心遣いや幸せ、それに愛情を頂いてばかりでしたわ。ですので、ウインドウォーター王国に来る以前よりカトレア様と女生徒の皆様とご一緒に、色々と計画しておりましたの。本日はカトレア様達がお越しになる旨を、ユグちゃんから連絡が有りましたので良いと頃合いかと存じましたわ。つきましては、私達皆の感謝の気持ちを込めて、サプライズお誕生日パーティーを催したく存じますの」
そう言って葵が皆に伝えると、大きな拍手が起こった。
俺は再び嬉しくなり、涙を流すとスノーが側に来て尻尾を絡ませ身体を寄せ涙をハンカチで拭いてくれた。
どんな時でも一緒について来てくれていたスノー達が、ウインドウォーター王国に来てからついて来てくれなかったのは、こんなにも嬉しいサプライズを準備してくれていたからなんだ。
俺は熟々、果報者だな。こんなにも思ってくれる皆を、俺はもっと大切にしよう。
そう心に、誓った。
心情が読めるユグドラシルが、今日はやけに心情を伝えるのが静かだと思っていたら、自身の眷属と連絡を取り合い、スノー達と連絡を取り合っていたらしい。
それに海の別荘へ帰路についている時も、ユグドラシルが頻りにカトレア先生達と話していたのはそういう事だったのだ。
心情で、ユグドラシルがそう教えてくれた。
カトレア先生達と女生徒達は、本当は交流試合が終わってからと考えていたらしいけれど、ユグドラシルと葵の申し出で一緒にする事にしたらしい。
俺達家族とカトレア先生とロベリアさんと女生徒達で楽しく会話をしていると、男子生徒二人がリカステさんの所で嘆いていた。
リカステさんの服を、エレモフィラ君が掴む。
「リカステ先生は、なぜ知っていたのですか? 俺とバレリアン君は、リリーちゃんの誕生日会の事を聞いていなかったですよ」
「いや俺もカトレアから聞いていなかったが、紳士なら分かるだろ? リリーちゃんは勿論だが、五月が誕生日のスノーちゃんやシルクちゃん、それにリリ-ちゃんが五月を誕生日としたユグちゃんやディーネちゃん、そして六月が誕生日の葵ちゃんにも当然プレゼントは用意しているぞ? ケットちゃんはまだリリーちゃんが誕生日を決めていないらしいが、恐らく同じ五月だろう。まあ、紳士なら当然それも考えて、余分にプレゼントを用意しているがな」
リカステさんの声が大きいので、色々と信じられない情報が聞こえて来た。
しかしリカステさんのその情報、正直言って怖いよ?
どこからの、情報なの? ――フムフム、成る程。
ウンディーネ経由の情報か……確かに、南の森での氷眼のサイクロプスや氷獄のドッペルゲンガーの騒動以来、ウンディーネとリカステさん達は仲が良くなったからね。
納得したよ。
『「ユグちゃん、教えてくれてありがと」』
ユグドラシルの『心情』から伝わって来た情報なので、お礼を言っておいた。
スミレちゃんとレモンちゃんが、スノーの手を引いて俺のもとへ来ると
「リリーちゃん、このケーキはスミレと」
「レモンと……スノーちゃん?」
「スノーが作ったものですぅにゃん」
そう言って、俺にケーキを一番初めに取り分けてくれた。
スノーは少し恥ずかしいようで、俺に尻尾を絡ませてきた。
あまり表情がないスノーだが、この時ばかりは頬がほんのり朱色になっていた。
他にもユグドラシルは、心情で皆のしてくれた事を教えてくれた。
眼前にある大きなケーキは、レモンちゃんがキノットさんに頼んでレシピを書いてもらい、三人で何度もホテルの厨房で隠れて練習していた力作らしい。
それに周りの飾り付けは、アイビーが走り回りシルクが空を飛んで上の方の飾り付けを担当し、クレマチスがウンディーネに手伝って貰い下の方の飾り付けをしたそうだ。
そして、皆の応援を魔眼のケットシーがしたそうだ。
皆、心のこもったプレゼントである誕生日会、本当にありがとう。
再び嬉しさで涙を流していると、カトレア先生とアザレアちゃんとブルメリアちゃんが来た。
カトレア先生が、アザレアちゃんとブルメリアちゃんの背中を押すと二人は頷いた。
「「リリーちゃん、いつもありがとう。私達二人で、動物の形をしたクッキーを焼いてみました。もし良かったら、食べて下さい」」
二人で声をそろえてそう言うと、モフモフな子達の形をしたクッキーをそれぞれ手渡してくれた。
「アザレアちゃん、ブルメリアちゃん、ありがとう。今、食べてもいい?」
「「はい」」
食べてみると、甘すぎずほんのり甘くて美味しい。
それに、モフモフな子達の形によって果物の香りがするフルーツクッキーだった。
「美味しい。アザレアちゃん、ブルメリアちゃん、美味しいクッキーありがとね」
二人が、手を取り合って喜んでいた。
そんな二人を見て笑顔になると、カトレア先生が革袋にリボンを付けた物を持ってきた。
「リリーちゃん、おめでとう。もう、知られちゃっていると思うけれど……どうぞ」
「カトレア先生、開けてもいい?」
「はい……」
中を見ると、ピンクのワンピースだった。
「あの時の?」
「うん。そうなの。あの後、ロベリアちゃんにも知られちゃったけれどね」
カトレア先生が作ってくれたピンクのワンピースを広げてみると、ロベリアさんが俺の頭に何かを乗せてきた。
「色合いがー、丁度良いわねー。リリーちゃん、おめでとー。これは、私からねー」
上を見ると、カトレア先生と同色の大きな花のリボンが付いた、所謂女優ハットだった。
どちらも五歳の容姿の俺には大きかったので、十五歳の容姿に合わせた物のようだ。
俺が十五歳の容姿になると、カトレア先生が抱きついて来た。
「リリーちゃん、次は綺麗な水色がいいかな? ウフフ」
カトレア先生がそう言っていると、リカステさんがやって来た。
「カトレア、また金欠になるぞ? リリーちゃん、おめでとう。これはロベリア嬢ちゃんの帽子に付けるか、カトレアのワンピースに付けるといいぞ」
そう言って、帽子やワンピースのどちらにも合いそうな可愛くて小さなブローチをさり気なくくれた。
そして、スノーやシルク、それに召喚精霊ちゃん達にも何かをプレゼントしていた。
更に、葵が俺のもとへ来ようとしているのを見ると、すれ違いに何かをプレゼントしていた。
リカステさんが、自身で紳士って言っているだけはあるね。
スノー達が一瞬驚いていたけれど、喜んでいるみたいだよ。
で、葵が俺のもとに来たのだけれど、怪しそうなピンク色の箱は何?
「リリー様、これは葵からのプレゼントですの。中身は、後で確かめて下さいまし」
「葵、今開けるね」
俺は他の皆と同様、ピンク色の箱を開けようとすると、なぜか葵に遮られ
「リリー様、お待ちください。後での方が宜しいかと……殿方もいらっしゃいますので」
と言われた。
男性がいる前で、開けない方が良い?
一体何を、葵はプレゼントしてくれたのかなー?
嫌な予感しか、ないのだけれど。
俺が十五歳の容姿になると、葵も十五歳の容姿になっているので、いつも27cmほど見上げる事になり近いと二つの膨らみで葵の表情が見えない。
しかし、今は頬を赤くして顔を寄せて屈んでおりクネクネしている。
なので、葵の顔を手で押さえて少し離れさせ箱の中身を覗いて確認すると美しい絹で作られたようなレースで透け感がある物が入っていた。
なんだ、こんなにも綺麗なハンカチをプレゼントしてくれたのなら皆に見せても良いじゃない?
「葵、変な事言うから驚いたけれど、ハンカチだよね?」
そう言って、ピンク色の箱からハンカチを取り出すと、ハンカチと思い込んでいた物が露わになった。
「ですから、箱から出しては駄目とお伝えしましたのに。殿方に、リリー様が今夜お召しされる下着が……」
それを見ていたエレモフィラ君とバレリアン君が、真っ赤になった。
そしてリカステさんはサッと横を向き、アザレアちゃんとブルネリアちゃんは、まだ見ているエレモフィラ君とバレリアン君の首を逆方向に無理矢理向かせた。
アザレアちゃん、ブルネリアちゃん? それ以上すると、エレモフィラ君とバレリアン君が死んじゃうから止めてあげて。
スミレちゃんが葵の前に来ると
「リリーちゃん、葵ちゃんを縛っておきますね」
「うん……」
「リリー様、これはどういう事ですの? 葵は、何も悪いことはしていませんわよ?」
「葵ちゃん? スミレが奥で話をゆっくり聞いてあげるから、あっちに行こうね」
葵は空での悪戯事件の時同様、スミレちゃんにロープで縛り上げられ隅っこでスミレちゃんに言い訳をしていた。
最近葵が頻繁にクローゼットやタンスを開けたり、下着がありそうな場所に行ったりしていたのは、このプレゼントをしたいが為に俺の下着を確認していたと言う訳か……。
葵、どんな物でもプレゼントしてくれたのは正直言って嬉しい。
だけど、こんな下着は流石に穿く事は出来ないよ。
しかも、エレモフィラ君とバレリアン君はこの下着を脳内メモリーに記憶しちゃったと思うわけで……葵、本当に残念だよ。
これは、流石に俺でも引くよ?
だって、見た目以上に丸見えだもん。
いや、穿いてないよ。
鏡の前で、前に合わせてみただけだからね!
その後、興味が有ったのかは知らないけれど、アザレアちゃんとブルメリアちゃんが俺と同じように、鏡の前置いてあった葵から貰った下着を、二人で合わせていたのは内緒だよ。
それと魔眼のケットシーにも皆と同じように、ティアドロップにカットした小さなエメラルドが付いた首に付ける可愛いリボンと、同じカットを施した小さなカイヤナイトの付いた鈴をリボンに付けてあげた。
ともあれ色々とあったが、俺達は海の別荘で交流試合当日の朝を迎えるのであった。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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リリー「スノー、今日から寝る時もスノーの好きなように人型になったり、幼虎
になってもいいからね」
スノー「スノー、凄く嬉しいですぅにゃん。リリー様、感謝致しますぅにゃん」
リリー「シルク、お菓子で等身大のアイビーを創ったよ。冷蔵庫に入れておく
ので、食べても良いし眺めても良いからね」
シルク「リリー、これはもしや私に試練を与えているつもり?」
リリー「試練なんて与えてないよ? シルクの、好きにして良いからね」
シルク「グヌヌ。これは、どうしようかしら?」
アイビー『ペロ。シルク、美味しいよ?』
シルク「アイビー、何で食べるの! こうなったら、食べるしかないわね」
葵「次は、私の番ですわね。私もスノー様のように、寝る時には自由に人型に
なっても良い権利が一番欲しいですの」
リリー「プレゼントは、以上です」
葵「リリー様、葵のことをお忘れでは?」
リリー「葵には、可愛いチョーカーあげたでしょ?」
葵「――――」
この後葵がいじけたので、六月までという期限付きで権利を与えた。
そして、毎朝リリーが葵の悪戯に悩まされる事になったのは
言うまでもない。




