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海の別荘の玄関で子猫が日向ぼっこ? 

 海の別荘に着くと、魔眼のケットシーが玄関の前で日向ぼっこをしていた。

 家の中は快適な温度なのだけれど、外は天気も良いし暑くても風が心地良いので、気分転換に出てきたのだろうか? 


 もしくは、魔眼のケットシーは気分屋な所が有るのでレモンちゃん達に黙って外に出てきたのかもしれない。

 あれ? でも気分屋な普通の猫は、家の周りを探検したり、浜辺で波と戯れたり、虫がいたら虫と遊んだり駆けっこしたりするイメージなのだけれど、玄関の前でゴロゴロしているのはなぜなのかな? 


 そうか。

 もしかすると、遊び疲れてゴロゴロしているのかもね。

 んっ? 俺に気がついた様で、



「ミィミィー!」



 と鳴いている? 

 でもなぜ俺の顔を見た途端に、玄関の方を向いて俺にお尻を向けて鳴いたの? 

 尻尾がフニフニ動いていて、可愛いけれどね。

 すると、アザレアちゃんとブルメリアちゃんの眼が輝いた。



「「リリーちゃん、ニャン子ちゃんがいるよ!」」



 と、喜びに震える声音で二人の声が揃った。

 アザレアちゃんとブルメリアちゃんの今の嬉しそうな声音で、思い出した事がある。

 確か冒険者学校でのお昼時(ヒルドキ)に、スノー達皆の昼食を創り忘れていた日があったのだけれど……スノーに連絡を取ってバスケットを持ってきて貰ったのだが、その時にスノーが幼虎の姿で教室の扉から顔を出した。



「リリー様、バスケットをお持ちしました。うにゃん」



 すると、ブルメリアちゃんの耳と尻尾が激しく動き、アザレアちゃんが大きく息を吸い込み



「「キャー! 可愛いー!」」



 と言って、その愛らしさに衝撃を受けたアザレアちゃんとブルメリアちゃんが、スノーへまっしぐらだったからね。

 恐らくアザレアちゃんとブルメリアちゃんは、俺と同じように小さなモフモフな子が大好きなんだと思う。

 なので、魔眼のケットシーの名前を教えてあげることにした。



「ブルメリアちゃん、アザレアちゃん、あの子はケットちゃんと言うの」



 ブルメリアちゃんが、俺の顔を覗き込む。



「リリーちゃん? ブルメリア、ケットちゃんを撫でに行っても良いですか?」

「リリーちゃん? アザレアも、良いですか?」



 そう言って、アザレアちゃんも俺の顔を覗き込んだ。



「うん、良いよ」



 そう言うと、俺に笑顔を向けてから魔眼のケットシーの所に行って二人は撫でだした。

 魔眼のケットシーは、大人しく撫でられている。

 でも、時折俺の方を見ている? 

 どうしたのかな? 


 エレモフィラ君とバレリアン君も、どうやら撫でたかったようで、アザレアちゃん達に加わり撫でだした。

 この年代の子って、小さな生き物が好きな子は多いからね。

 俺も前の世界でアザレアちゃん達と同年代の時は、学校にある飼育小屋で毎日のように兎を撫でに行った覚えがある。


 初めは警戒していたけれど、慣れてきたら俺の顔を見かけただけで寄ってきて、抱っこしてほしいとでも言っているように懐いてくるからね。

 兎もモフモフで、可愛いのだ。

 学校の帰り道に、捨て猫や捨て犬を見かけた事は有るが、家に連れて帰ると怒られるので、我慢して近くにある猫や犬を飼っているお家や施設に行っていた。


 動物を飼っているお家や施設に行っていると、犬や猫好きの人達と沢山交流出来るので、気がつくと動物好きな人達と知り合いになっているのだ。

 まあ知り合いと言っても、近所の人達なので俺の家族も知っている人達だったけれどね。

 俺が昔を思い出していると、カトレア先生とリカステさんは、魔眼のケットシーを指さしたまま固まっていた。


 二人とも、どうしたのだろう? 

 あっ! そうか。

 魔眼のケットシーは、この二人が固まっている姿を不思議に思って、時折俺の方を向いていたのか。

 うんうん、分かるよ。


 布の少ない美女と、顔が怖い紳士の、驚いている姿なんてなかなか見ないからね。

 二人は何に驚いているのか分からないけれど、大方この家を見て驚いているのかもしれない。

 見渡す限りの砂浜と、澄み切った青い海が見える場所にある別荘だからね。


 ロベリアさんはと言うと、ペアシェイプブリリアントカットを施したアクアマリンのネックレスと、同じカットを施したターコイズのイアリングをあげたので、それに夢中で海の別荘に来るのに皆よりかなり遅れている。


 遠くにロベリアさんの姿が見えているし、こちらには向かっているようなので大丈夫だろう。

 でも、ロベリアさん? 時折カトレア先生みたいに、俺の姿をした縫いぐるみ人形を出しては抱きしめるのは凄く恥ずかしいので止めて欲しいです。

 だって五歳の姿だけならまだしも、十五歳の姿まで抱きしめているからね。


 もしかして、ロベリアさんもカトレア先生の様に人形好きなのかな? 

 ロベリアさんを見ていても仕方がないので、俺は一番近くにいるカトレア先生の足を揺すった。

 因みに今は、アザレアちゃんとブルメリアちゃんの希望で五歳の容姿になっている。



「カトレア先生、どうしたの?」

「リリーちゃん? なぜ図鑑でしか、その存在を知らされていない希少精霊がいるの?」



 えっ? 海の別荘の景色じゃなくて、そっち? 

 そう言えば魔眼のケットシーは、スノーが珍しいと言っていたけれど、カトレア先生達が驚くほどの希少精霊だったんだ。


 傷を負っていたので、回復魔法をかけてあげるとついてきたので、それほど希少とは思っていなかった。

 まあでもカトレア先生達には、簡単な経緯を教えてあげようかな。



「裏路地で猫を見つけたので、行ってみるとお母さん猫だったの。お母さん猫が授乳していたので、授乳後に子猫達と戯れて遊んでいるとその中の一匹がついてきたの。それが、あそこにいるケットちゃんだよ?」

「捨て猫じゃないんだから、そんなはず無いでしょ?」



 まあ、回復魔法で傷を治してあげた事は言っていないが、大方そんな所だから嘘は言ってないのだけれど? 

 あっ! その場にフロックスさんもいたので、カトレア先生にその事を伝えると納得してもらえるかな? 



「だって、ついてきたんだもん。フロックスさんも、知っているよ?」

「フロックス君、冒険者ギルドのギルドマスターだけど、精霊の知識はあまりないものね。筋肉馬鹿だから……」



 フロックスさんって、冒険者ギルドのギルドマスターなのに精霊の知識はあまりないんだ……。

 だから、子猫は飼えないって言っていたんだ。

 まあ、人には得意不得意は有るからね。

 そういう俺も、スノーに教えてもらうまでは知らなかったのだけどね。

 リカステさんも我に返ったようで、カトレア先生の隣に来た。



「俺も、魔眼のケットシーなんて初めて見たぞ。だけど、カトレア? ロベリア嬢ちゃんに、フロックスの悪口聞かれなくて良かったな。聞かれてたらまた【エヘヘー】が始まるぞ」

「ロベリアちゃんが、遅れてくれいて助かったわ」



 二人とも、ロベリアさんの【エヘヘー】はそんなに怖いんだね。

 全く、共感が出来ないのだけれど……。

 実はアクセサリーを渡した事で、ロベリアさんの機嫌が頗る良くなり、カトレア先生達の言う【エヘヘー】が終決を迎えたのだ。


 カトレア先生曰く、ロベリアさんの【エヘヘー】という顔が穏やかになったらしい。

 俺には、区別がつかなかったけれどね。

 カトレア先生達と話をしていると、魔眼のケットシーが俺の元に来た。

 そして同時に、ユグドラシルが姿を現した。



「ミィミィミィーミィミィ」



 魔眼のケットシーがユグドラシルに何か伝えているのかな? 

 頻りに、話しているよ。

 俺には、ミャミャーとしか分からないのだけれどね。


 魔眼のケットシーの言葉を理解するには、文字言語自動変換LV2を使用すれば理解可能だ。

 しかし、魔眼のケットシーの言葉に対してそれを使用しようとすると、スノーが尻尾を絡ませて来たり身体(カラダ)を頻りに寄せて来るのだ。


 甘えん坊のスノーは正直言って可愛すぎるが、スノーの事を考えて魔眼のケットシーについては今後ともその権能を使用して変換しないと考えている。

 まあ言葉が分からなければ、その分態度で示してくれるので、愛らしいのだけれどね。



「リリー様、ケットがもう少し入るのを待って欲しいと言っております。ですので、少しお待ちを……」

「そう言えば、ユグちゃんも今日はあまり顔を出してくれなかったよね? 何か、有ったの?」



 すると、ユグドラシルが魔眼のケットシーに眼で合図をしている? 

 魔眼のケットシーにユグドラシルが頻りにウインクしているけれど、意味があるの? 

 可愛いから、良いけれどね。



「ミィミィー?」



 しかし、魔眼のケットシーはユグドラシルのウインクの意味が分からないようで小首を傾けて俺の足にプニプニの肉球を押しつけてきた。



「ミィーミィー!」



 まるで、意味を教えてと俺に訴えているようだ。

 ごめんね、ケットちゃん。

 プニプニの肉球の事で頭がいっぱいになり、ユグドラシルの心情が読み取れないです。



「ふにゃー! プニプニー」



 そう言って俺は地べたに座り込むと、なぜかユグドラシルが魔眼のケットシーを見て頷いていた。

 そして、魔眼のケットシーを追いかけてきたアザレアちゃん達と一緒に撫でていると、ウンディーネが肉体形成を解除して扉を抜けてきた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

スノー「ケット、リリー様に尻尾を絡ませるのは駄目ですぅにゃん」

魔眼のケットシー「ミィー?」

スノー「リリー様に、尻尾を絡ませカラダを寄せるのはスノーの唯一の楽しみ

    なのですぅにゃん」

魔眼のケットシー「ミィミィミィ!」

スノー「ケットと、一緒に絡ませると良いぅにゃん?」

魔眼のケットシー「ミィ!」

葵「何を二人で、コソコソと……葵のように、リリー様に直接愛情表現すれば

  良いですの」

スミレ「スノーちゃんとケットちゃんは、葵ちゃんの真似をするとこうなるから

    しないでね」

スノー「はいぅにゃん」

魔眼のケットシー「ミィ」

葵「スミレちゃん、最近葵に対してご無体ですの」

レモン「葵ちゃんが悪いと、レモンは思うよ?」

シルク「私も思うわ」

アイビー『僕も思います』

クレマチス「私も思います」

ユグドラシル「ユグも思います」

ウンディーネ「ディーネも……」

リリー「葵の愛情は嬉しいけれど、過激すぎるからちょっとね」

葵「リリー様まで……シクシクシク」

   と言っていたが、翌朝もリリーに過激な愛情表現をする懲りない葵は

   再びスミレちゃんに捕縛されるのであった。

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