果物屋のおじさんと兎獣人の女の子2
卸作業が終わったので、杏ちゃんとおじさんの三人で後ろの木箱の上に腰掛け、俺が創ったアップル ミルフィーユ モンブランを食べていると店先で呼び鈴が鳴った。
チリリン!
ウインドウォーター王国の商店は、水路が荷入れ場所となっているので、水路側が大抵休憩場所となっており、商店の店主がここのように一名の場合は、おじさん達が休憩をする時用に店先に呼び鈴を置いているのだ。
今回は、俺が来ると言うことを事前に聞いていたので、果樹園の娘である杏ちゃんがお手伝いに来た訳だ。
「おう! 今行くよ!」
「ひゃ!」
杏ちゃんが、思わず耳を塞いだ。
杏ちゃんが驚いて耳を塞いだのは無理も無い、アップル ミルフィーユ モンブランを皆で食べているので、杏ちゃんの隣がおじさんなのだ。
俺も杏ちゃんの隣だけれど、おじさんの声音があまりにも五月蠅かったので仕方がないよね。
周りの商店からも、おじさんやおばさん達の声音が聞こえてくる。
これは朝方に山の方から強い風が拭いてくるので、その風の音に負けじと声音を張るので、フォレストムーン王国の商店のおじさん達より声音が遥かに大きいのだと思う。
今日は俺のために杏ちゃんが来てくれたが、普段は来ないというのは耳が良い兎獣人達には酷な環境だからと言えよう。
「杏、大声出してスマン」
俺と初めて会った時は、おじさんは大きな声音を出していなかったが、恐らく初めての客に気遣ってくれていたのだろう。
それに、ユグドラシルの言うとおり根が優しいおじさんのようだ。
「いえ、大丈夫です」
おじさんは、店先の方に行った。
杏ちゃん、おじさんと話す時は耳当てのような物を付けていた方が良いかもね?
このケモミミに、何が合うかな?
杏ちゃんの毛質と、同じような物が良いかな?
帽子の様な形でも、良いかもね。
「リリーちゃん? 杏の耳が、気になりますか? でも、擽ったいです」
いつの間にか俺は、杏ちゃんの大きな耳のフワフワな毛を触っていたようだ。
「杏ちゃん、ごめんね」
杏ちゃんの方は、俺の着ている華ロリ服セット(紫・緑・白色)の生地が気になるようで触っていた。
「リリーちゃんの装い、綺麗ですね」
確かに、この生地ってどこにも売っていないからね。
杏ちゃんの服は、作業がしやすいように長袖で長ズボンだし……。
若しくは、可愛らしい装いに杏ちゃんは興味が有るのかもしれない。
俺の元いた世界でも、女性物の服は種類が豊富だったからね。
最近は男性物の服も増えたけれど、やはり女性の服の豊富さには遠く及ばない。
杏ちゃんと触り合いをしていると、おじさんが店先で誰かと話している。
耳を澄ましてみると
「すみません。少し聞きたいことが有るのですが」
と話し声が聞こえて来た。この声音、俺には聞き覚えが有る。
俺は少し先に有る果物の箱の陰に隠れて、様子を窺うと第三王子と第三騎士団長がいた。
これは不味いと思い、杏ちゃんの元に戻り後ろに隠れると自身が昨日とは違う十歳の容姿になっていることを思い出した。
恐らく気づかれないと思うが、念のために……
「リリーちゃん、杏の後ろに隠れてどうしたの?」
「ごめんね、昨日ちょっとね……」
と言って俺は小声で昨日のことを話した。
杏ちゃんには、普通に聞こえているので問題はないようだ。
「リリーちゃん、杏の後ろにいてね。杏が、二人の内容聞いてあげるから」
「杏ちゃん、ありがと」
俺はそう言って、杏ちゃんの後ろから様子を窺った。
杏ちゃんから内容を聞くと、どうやら第三王子はフォレストムーン王国の国王陛下と会ったことで、昨日の俺はスミレちゃんでは無い事を知ったようだ。
俺が杏ちゃんの後ろから覗いていると、第三騎士団長と眼があった?
えっ? でも、ここ外と違って少し暗いから見えないと思うのだけど。
そう思い、そっと眼を逸らしたみたが第三騎士団長が第三王子に耳打ちをしている姿が見えた。
なので後ろを向いて、水路側へゆっくりと逃げだそうとした。
すると、眼前に足が見えたと思ったら騎士団長に捕まえられた。
「ウィリディスム様、不審な行動をしていた少女を捕縛致しました」
「グラジオラス? その方に手出しをしては、いけないよ?」
「はっ!」
「私の護衛が、失礼をした」
第三王子が近づくと、第三騎士団長を下がらせ俺の双眸を見つめてきた。
「君は、リリーちゃんだよね?」
「人違いです……」
しまった! 思わず昨日と同じ事を、言ってしまった。
でも、なぜ名前知っているの? 容姿も昨日と全然違うよ?
「昨日は、パープルちゃんと間違えてごめんね。フォレストムーン王国の、国王陛下から聞いたよ。容姿を変更出来るって。でも、声と瞳が同じだよね」
第三王子の、顔が近い。
美少年って、なぜここまで顔を寄せてくるの?
それに、吐く息が第三王子の顔にかかってしまう。
さっき、臭い物食べなかったよね?
食べたのは、西洋梨とアップル ミルフィーユ モンブランだ。
よし、臭くないはずだ。
「それに、薫りもね。リリーちゃん、改めて謝罪するよ」
そう言って、第三王子は頭を下げた。
さっき果物とアップル ミルフィーユ モンブランを、おじさんと杏ちゃんで一緒に食べたからね。
果物とカスタードの甘い薫りは、すると思うよ。
でも、近くにある木箱に腰掛けている杏ちゃんや周りの果物からもする筈なので、念のために俺はユグドラシルに『心情』で確認することにした。
『「ユグちゃん、私って匂う? もしかして、臭い?」』
『「いえ、リリー様。仄かな花の薫りはしますが、臭くはありませんよ?」』
『「ユグちゃんが、花の薫りをさせているの?」』
『「いえ、リリー様から自然と花の薫りがするのです。ですが、人には分からない程度なのですが……」』
『「そうなの?」』
『「ユグは薫りに関しては、間違いありません」』
『「ユグちゃん、教えてくれてありがと」』
第三王子の謝罪に、第三騎士団長が慌てている。
「ウィリディスム殿下、このような場所で……」
「グラジオラス、良いんだ。リリーちゃん? フォレストムーン王国の国王陛下から聞いた話なのだけど、君はこの国のお伽話にも出てくる天空の城に住まう王女様らしいね」
「――――」
当たらずと雖も遠からずだけれど、国王陛下? 話が、ややこしくなったじゃないですか。
「人違いですよ。私は、普通の幼女ですから」
そう言って、俺は五歳の容姿になって杏ちゃんの足に抱きついた。
「ひぇー、リリーちゃん?」
っと杏ちゃんが言っているが、幼女の俺がモフモフな子やモフモフで可愛い獣人の子に抱きつくと良い案が思いつくのだ。
すると、第三王子は笑顔になると
「ごめんね、リリーちゃん。驚いてしまった、ようだね。ではまた改めて、交流試合の会場で会うとするよ。グラジオラス、行くよ」
「はっ!」
そう言って、第三王子と第三騎士団長は去って行った。
「リリーちゃんは、王女様なの?」
杏ちゃんがそう聞いてきたので、俺は首を横に振った。
女神であっても、王女ではない。
「全然違うよ? 私、天空に住んでいないし普通の幼女だもん。それに、王女様なら側に何名か護衛を連れているでしょ? 私はこの通り、人の護衛はどこにも連れてないよ?」
俺は両手を広げ、踊るようにして護衛がいないことを杏ちゃんに示した。
そして小首を傾け、可愛い表情で顎に握った両手を持っていく。
「だけど、可愛い召喚聖霊ちゃんはいるよ」
杏ちゃんが不思議そうな表情をして小首を傾ける。
「召喚聖霊?」
俺には普通の護衛はいないが、国が持つ最強の騎士さえも凌駕する強さを持ち、それでいて美しく可愛いユグドラシルがいる。
そう心情で考えていると、ユグドラシルから溢れるほどの嬉しい感情が俺の中に流れ込んできた。
「ほら、ユグちゃん出ておいで」
辺りが華の薫りに包まれたかと思うと、花弁と共にユグドラシルが俺の肩に姿を現した。
小さくても美しいユグドラシルの姿に、杏ちゃんが思わす口走る。
「綺麗……良い薫り」
ユグドラシルは杏ちゃん心情を読み取り、花の薫りを杏ちゃんの好きな薫りにしたようだ。
「リリー様の召喚聖霊、ユグドラシルです。杏様はリンゴの花の薫りが好きなようですね」
杏ちゃんが好きな花の薫りの演出に加えて、俺が王女ではないと言う言葉から、自身の紹介で王女という言葉を省いたようだ。
召喚精霊の中でも、俺と一番心が通っているだけはある。
本当に優秀で、信頼できる召喚聖霊だ。
「はい……リリーちゃん? 召喚聖霊ちゃんなの?」
ユグドラシルの返事に答え、夢を見ているかのような雰囲気から気がつき、召喚聖霊かと聞いてきた。
「うん。この子が私の召喚聖霊、ユグちゃんね。可愛いでしょ」
「はい、可愛いです……」
ユグドラシルは、自身の装いを杏ちゃん見せるようにヒラリと横に回って見せた。
ユグドラシルの装いにも興味を示しているので、杏ちゃんは綺麗で可愛らしい装いが好きなようだ。
今度果樹園にお邪魔するとき、杏ちゃんの似合いそうな装いと耳当てか帽子をプレゼントしても良いかもしれない。
だって、可愛いケモミミ少女の喜ぶ姿が見たいんだもん。
俺が少しモフモフな妄想をしていると、ユグドラシルから『心情』が伝わってくる。
『「リリー様、微量では有りますが杏様が喜びを感じられると、風の大精霊シルフの魔力の薫りが致します」』
『「風の大精霊シルフ?」』
『「はい。杏様が幼少の頃にシルフに合ったのやもしれません。恐らく、ユグを見たことで杏様の奥底からシルフの記憶が蘇ったものと思われます」』
ウンディーネ、魔眼のケットシーに続いてシルフが召喚精霊になれば、レモンちゃんも二大精霊持ちとなる。
益々、杏ちゃんの果樹園がある場所に行くことが楽しくなってきた。
交流試合の見学の前に、果樹園に行ってみようかな?
そう勘考していると、杏ちゃんの目線がユグドラシルから俺にうつった。
「実はね、リリーちゃん。杏も小さな頃に、ユグちゃんの様に可愛い子に有った事があるの。果樹園で遊んでいて、お腹が空いたのでリンゴを食べていたの。すると、小さな子が現れたの。なので、半分リンゴを渡そうとすると笑顔になって風が吹いたと思うと消えちゃったの。もしかして、精霊さんだったのかな?」
杏ちゃんから、良い情報が舞い込んだ。
果樹園の近くに、風の大精霊シルフがいる可能性が高いと言うことだ。
「杏ちゃん、果樹園に私の家族を連れて行っても良いかな?」
「リリーちゃんの家族なら、杏は大歓迎です」
そう言ってくれたので、俺は十五歳の容姿になって杏ちゃんを抱きしめた。
「杏ちゃん、ありがと」
俺は果物屋のおじさんと杏ちゃんに別れを告げて、良い食材があるか見て回っていると第三王子と第三騎士団長の後ろ姿を見かけた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
リリー「シルク? 狼のケモミミ尻尾を付けて、また下着姿?」
シルク「違うわよ! 私にどの装いが似合うか、着替えているからなの」
リリー「狼の、ケモミミ尻尾にでしょ?」
シルク「――――。なぜ、分かったのよ!」
リリー いや、普通に気づくでしょ?
リリー「狼のケモミミ尻尾は、モフフサで私と同じロリ服セットなら、どれでも
似合うと思うよ」
リリー シルクは基本的に、可愛いからね。
シルク「そんなの、駄目よ! 妥協は、出来ないもの」
リリー「じゃー例えば、給仕の時はロリメイド服、王女様の気分の時は
フェアリードレス、運動したいときは忍者ロリ服とか良いかもね。
他にも、様々な場面があると思うよ。なので、アイビーと過ごす場面
場面で考えてみたら良いんじゃないかな? もしくは、アイビーと
一緒にお出かけする時に、それとなく聞いてみると良いかもね」
シルク「そうするわね。リリー、ありがとう」
そう言って、シルクは下着姿でアイビーの前に行った。
リリー「あっ……」
アイビー『シルク、風邪引くよ?』
恋する乙女シルクは、時におっちょこちょいになるのであった。




