悪戯狐っ子と警報器?
朝早く眼を覚ますと、掛け布団が俺の頭の上までかけられていた。
そして、頬に当たるポニュポニュ?
毎日ではないが、朝眼が覚めるとスミレちゃんに抱きしめられている事がある。
それに、いつも俺の右側にいるのでスミレちゃんだと分かる。
しかし、今日は左側で抱きしめられており抱きしめられ方もソフトなのだ。
張りがあって、それでいて柔らかく王妃の物では無い事も分かる。
だって、昨日もお風呂で王妃に抱きしめられたからね。
「すぅーすぅーすぅー。んぅー……」
それに、この寝息はスミレちゃんの物ではない。
現に、俺の背後でスミレちゃんの寝息が聞こえてくるからね。
レモンちゃん? でもないよな、このポニュポニュは……。
レモンちゃんはクレマチスの尻尾がお気に入りで、クレマチスの尻尾と魔眼のケットシーを一緒に抱いて寝ている筈だ。
それに、隣のベッドからスヤスヤとレモンちゃんの寝息が聞こえてくるからね。
スノー? いや、スノーは俺の許しを得ない限り人型にはならないし、掛け布団の隙間からスノーの尻尾が見えている。
葵? いや、葵は人型に変身しているなら確実に俺のちっぱいに手を置いているはずだ。
じゃー? 誰?
ポニュポニュ
「すぅーすぅー。んぅーん……」
この膨らみの大きさは……第二王女のだ。
二階から、いつの間に降りて来たのだろう?
って、言うか? 護衛騎士と側付きメイドは、何をしているの?
いくら安全な家だとしても、第二王女様が夜中に起きてきたら一緒について行くのが普通でしょ? ホントに、もぉー!
カトレア先生みたいに、力強く抱きしめていないので着ぐるみを着ている幼女でも脱出する事は出来るけれどね。
「うんしょ。うんしょ。うんしょ……」
脱出している時に、どうしても第二王女の色々な所を触ってしまうが仕方がない。
「んぅーん。ひゃん。リリーひゃん。……すぅーすぅーすぅー」
危なかった。一瞬起きたかと、思ったよ。
でも、どうにか下から脱出できた。
上から脱出しようと試みたが、着ぐるみのお尻が引っかかって出られなかったのだ。
「ふあーあ……リリーちゃん、おはよ」
スミレちゃんは、俺がモゾモゾした事で起きたようだ。
恐らく、着ぐるみの尻尾が当たっていたのだろう。
スミレちゃん、からも「ひゃん。擽ったい」と声音が出ていたのだ。
着ぐるみ尻尾が、おいたをしてごめんね。
「スミレちゃん、おはよ」
「リリーちゃん? 掛け布団の下から出てきて、どうしたの?」
俺の目線の先を見たスミレちゃんが
「お姉さみゃ! ……」
俺はスミレちゃんの口を押さえると、小声で
「しぃー。スミレちゃん、静かにしてね」
と伝えた。だってまだ魅惑の着ぐるみセットなので、第二王女が眼を覚ますとまた抱きつかれるからね。
スノー達も起きたので、俺は着ぐるみセットを着替えた。
そして、第二王女だけ寝室に残し俺達は朝風呂と朝食を済ませることにした。
朝風呂と朝食を済ませスミレちゃんに確認すると、第二王女は朝に弱いようで、この時間はまだ眠っているとのことだ。
なので、二階の護衛騎士と側付きメイドを呼んで俺の寝室に控えさせた。
スミレちゃんが、護衛騎士と側付きメイドになぜ第二王女から眼を離したか確認すると、二階の寝具や椅子が至高の心地よさで誰もが熟睡してしまうようだ。
それに、今降りて来た護衛騎士と側付きメイドも、実は王妃と第二王女の部屋の前で椅子に腰掛けて眠っていた者達なのだ。
「スミレちゃん、私の寝具や椅子が心地よすぎるのが悪かったの。だから、この人達を許してあげてね。それに、モフモフな警備ゴーレム達も一階と二階に配置しているので安全面は保証するよ」
「リリーちゃんがそう仰るなら、スミレはもう怒りません。貴方達、リリーちゃんに感謝しなさい。この件は、不問に致します。ですが、次は無いですよ。いいですね?」
「「はい! スミレ様」」
護衛騎士と側付きメイドは慌てて二階に上がると、残りの護衛騎士と側付きメイドを引き連れて来たかと思うと、スミレちゃんに謝罪した後に慌てて俺にも謝罪しに来た。
この後、護衛騎士達と側付きメイド達で会議が行われ、俺の創った家での護衛や側付きメイドとして夜に任につく者は、二名体制で時間を二時間交代とし、寝具や椅子に触らず立ったまま行う事となった。
そうしないと、絨毯の上に立っているだけでも癒やし効果があるとの事だ。
護衛騎士の皆様、側付きメイドの皆様、任務に支障をきたせてしまう家でホントごめんね。
今日はお昼に、カトレア先生達が泊まる予定の宿屋へ行くつもりだ。
先生の性格からして、早朝には村を出立した筈なので、午前中の内にウインドウォーター王国に到着するだろう。
そして俺は、朝から果物屋さんの所に行こうと思っている。
だって、昨日果物屋のおじさんと約束したからね。
勿論、ユグドラシルも一緒だ。
つまり、昨日と同じメンバーなのだ。
ただ違うのは、王妃が二階でお休みされ、第二王女も俺達の寝室でお休みされている事だ。
なので、王妃や第二王女、それに護衛騎士や側付きメイド達の朝食やデザートは、スノーに管理してもらっている。
それに、容姿を十歳、髪を上に少しまとめたお団子ストレートの黒色にして、装いを華ロリ服セット(紫・緑・白色)にした。
これで第三王子や騎士長に会ったとしても、容姿と髪の形や色が違うので言い訳が出来るだろう。
そして、シルクにはアイビーを離れさせないように配置しているので抜かりはない。
だって昨日のような事が有ったら困るし、何よりシルクに王妃と第二王女のデザートを食べられると困るからだ。
但し、第二王女のデザートだけはスノーに死守するよう伝えてある。
そうしないと、今度はスミレちゃんが困るからね。
要するに、食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
おっと、その前に。
俺は葵のもとに行くと、昨日の深夜に創り出したものを差し出す。
「葵? これを、付けてくれるかな?」
葵の方を向いて、俺は少し恥ずかしい素振りをした。
「リリー様、これは何ですの?」
俺が差し出したチョーカーを、不思議そうに葵が見た。
「葵にだけあげる、私の贈り物なの。受け取って、くれるかな?」
と言って、幼女の可愛らしい双眸で葵を見つめ、再び恥ずかしそうな素振りをすると、葵の顔が赤くなった。
「はうわー! 遂に、遂に葵の願いが叶いましたのね。では、リリー様ウエディングドレスのご準備を……」
そう言って、急に葵が俺の左腕に纏わり付き寝室に行こうとするので
「葵、良いから早く付けて!」
と言って付けるのを急がせた。
「はい、ですの」
葵は素直に返事をして、笑顔で首にチョーカーを付けた。
「葵、良い子。ちゃんと、付けてくれたね。ありがと」
葵がチョーカーを付けたのを確認すると、俺は皆の方を向いて大きく息を吸い込んだ。
「皆ー! 葵がこの部屋から何処かに行こうとしたら、警報が鳴るようになっているので、後のことは頼んだからね」
「「「「「はーい」」」」」
葵以外に、テレパシーを使用して伝えていたので誰もが揃って返事をしてくれた。
「リリー様に、騙されましたの!」
と言ってへたり込む姿で「シクシクシク」と言って泣き真似をしていたが、悪戯狐っ子の葵が悪いのだ。
「葵が、早とちりしただけでしょ? じゃー皆、行ってくるね」
「「「「「行ってらっしゃーい」」」」」
ピーピーピー!
「「「葵ちゃん?」」」
「はうー、ですの……」
早速警報が鳴ったが、葵がスミレちゃん達に手を捕まれていた。
先ほど皆で朝風呂をしたのだが、どうやら大浴場の脱衣所に行こうとしていたようだ。
そうスミレちゃんから、使徒テレパシーが有った。
葵? 脱衣所に行っても、何も無いと思うのだけれど?
皆には一応、緊急でなければ葵の行動について連絡しなくて良いからねと伝えておいた。
だって、また警報なっているし……。
葵? なぜ俺が眼前から離れると、ウロウロするの?
飼い主が離れると、途端に家の中を彷徨くペットじゃ無いんだからね!
「葵は放置でいいから、ユグちゃん行こっか」
「はい、リリー様」
こうして俺とユグドラシルは、昨日の果物屋さんの所にやって来た。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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ピーピーピー!
葵「今のは、お花を摘みに行こうとしていましたの」
スミレ「葵ちゃん? でも、そっちは大浴場だよ? 正直に言ってね」
葵「脱衣所に、行こうとしただけですの」
ピーピーピー!
アイビー『シルク、葵ちゃんを発見しました!』
シルク「アイビー、よくやったわ」
葵「二人がかりなんて、狡いですの」
ピーピーピー!
スノー「葵様、そちらには第二王女様がまだ眠ってますぅにゃん」
葵「ちぃー! ですの」
ピーピーピー!
レモン「葵ちゃん?」
葵「もぉー、いい加減にしてほしいですの!」
スミレ&シルク「こっちが、言いたいわよ!」
こうして海の別荘は、リリーが帰って来るまで警報が鳴り続ける
のであった。




