海の別荘に王妃と第二王女が現れた1
第二の自宅である海の別荘に戻ってくると、王妃と第二王女と側付きメイドと護衛達がいた。
王妃がソファーに腰掛けた状態で、ティーカップをテーブルに置くと俺に微笑む。
「リリーちゃん、バイオレットと一緒に来ちゃった」
王妃の肌が、ほんのり桜色だけど誰かお酒飲ましたの?
冷蔵庫に一応入れてあるけれど、お酒は大人になってからって書いているよね?
あっ! 王妃が一人で取りに行ったのかな?
なら、仕方がないか。
「王妃様、国王陛下は?」
「私のお兄様と……ルーフス・パフィオペディラム・ウインドウォーター王と一緒に、城でリリーちゃんが造ってくれたお酒を飲んでいるわよ。お兄様が凄く気に入ったようなので、リリーちゃん帰りにお兄様の分をお願いできないかしら?」
成る程、ウインドウォーター王国の城で少し飲んできたのか。
で、俺が創った海の別荘ではしご酒?
ティーカップを見ると、ロイヤルミルクティーのようでお酒ではないようだ。
王妃様、酔いすぎると大阪で会ったお姉さんのようになるからね。
少し、ホッとしたよ。
「良いですよ」
国王陛下達で一緒に飲んでいたのなら、なぜこの家に来たのか確認すると、化粧の仕方を専属メイドがライムお姉さんに指導を受けた事で、専属メイドがライムお姉さん直伝の化粧を王妃に施した。
その結果、昔のように王妃の姿が幼くなりルーフス国王陛下が昔を思い出して、王妃の事をアルブスと旧名で呼び、どこに行こうとしてもついてくる。
なので、俺の様子を見に行くと言って出てきたらしい。
出てきたと言っても、兄の事を思って俺にお酒を創ってもらおうとする所が、王妃の優しさが感じられる。
恐らくお酒を飲んで少し酔いがまわり、ルーフス国王陛下が隠していたシスコンが顔を覗かせたのだろう。
王妃も昔の事を思い出したのか、ルーフス国王陛下の事をお兄様と呼んでいるしね。
因みにホワイト王妃の旧名は、アルブス・パフィオペディラム・ウインドウォーターと言っていた。
どうやら、フォレストムーン王国は妃になると名前が変更されるようだ。
それにしても、化粧のせいかもしれないが王妃様の姿が、第二王女やスミレちゃんのお姉さんのように感じられる位、若返っている気がするが気のせいかな?
まっ、気のせいだろう。うん。
俺が首を傾げていると、スミレちゃんとレモンちゃんと第二王女が猫の真似をして魔眼のケットシーと戯れていた。
「ミィー?」
魔眼のケットシーが首を傾げると、スミレちゃん達も同じ仕草をする。
しかも、虎のケモミミ尻尾を三人とも付けているので見た目も猫娘なのだ。
「「「みゃー?」」」
見ていると、癒やされる。
動物の番組は数あるが、その中でも幼い動物と戯れている映像が出てくる事があるが、何をしていても長時間見ていることが出来て飽きも来ない。
まさに眼前の光景が、その光景なのだ。
メイド達や騎士達も癒やされているようで、魔眼のケットシーと三人娘の近くが憩いの空間となっていた。
暫くすると、スノーと葵とクレマチスが二階からメイドと騎士達と共に降りてきた。
どうやら今日は、メイドや護衛の騎士達と共に家に泊まるようだ。
まあ、二階に部屋は沢山有るのでこの人数であれば問題は無い。
スノーと葵が俺に気がついたようで、幼虎と幼狐になって走って来た。
「リリー様、おかえりなさい。うにゃん」
「リリー様、寂しかったですの」
「二人とも、ただいま」
クレマチスも俺に気づき、幼龍になるとウンディーネを乗せて飛んできた。
どうやらウンディーネはユグドラシルの代わりにクレマチスがドジをしないように見てくれていたようだ。
「リリー様、お帰りなさい」
幼龍のクレマチスは、フワフワの身体で俺の顔に自信の顔をくっ付けた。
「リリー様、お帰りなさい。ユグちゃん先輩、ディーネはちゃんとクレマチス様を見ていましたよ」
ウンディーネは俺の肩に腰掛けて、ユグドラシルに報告していた。
「二人とも、ただいま」
ウンディーネの声音に、ユグドラシルが姿を現した。
「ディーネ、ユグの代わりにありがとう」
そう言えば、シルクとアイビーがいない。
「ねえ、シルクとアイビーは?」
すると、スミレちゃんが
「みゃー」
と言って俺の元に来た。
「リリーちゃん、お帰りなさい。みゃー、知っているよ」
スミレちゃんは、猫の仕草をしてそう言った。
「みゃー?」
俺も思わず、猫の様な手の形をしてスミレちゃんの真似をしてしまった。
だって今は、ケモミミ尻尾を付けていないので仕草だけでもと思ってしまったのだ。
「リリーちゃんも、ケットちゃんの真似します?」
「ごめんなさい。思わず、つられただけです。スミレちゃん、シルク達はどこに行ったの?」
いつもは俺が帰って来ると、お腹が空いたと真っ先にシルクが飛んで来るのに、今日に限って来ていないのだ。
「今アイビーちゃんが、凍えたシルクちゃんを温泉で温めているよ」
「ほぇ? 凍えた? シルク、何で凍えたの?」
凍えるって、ここ南国だよ?
一体どうやったら、凍えるの?
「リリーちゃんが、冷蔵庫にお菓子の家入れていたでしょ?」
確かにシルクに知られないように創って、他の物で隠すようにして一番後ろに置いた。
しかし、シルクが興味を示さないように加工前の食材で隠していたのだけれど?
「うん、入れていたよ。でも、奥の方に隠していたのだけれど?」
「シルクちゃん、そこに暫く入っていたみたいなの」
「で、シルクがお菓子の家を全部食べて凍えたと?」
「みたい……」
「――――。アイビーは何していたの?」
「アイビーちゃんは、悪くないの。スミレとレモンちゃんとお姉様でケットちゃんとアイビーちゃんとで遊んでいて……」
「シルクがいないことに、アイビーが気づいたのね」
「うん……」
シルクの食いしん坊は、全く呆れるよ。
寒さを気づかせる事さえも、遅くらさせるのか? まあ良いけれどね。
ともあれ、シルクの身体を温める為に生姜パウダー入りミルクココアと、先ほど仕入れてきたリンゴを使った、フワフワミルフィーユ仕立てのアップルパイに、リンゴの香り豊かなカスタードをたっぷりかけたモンブラン風を創るか。
ちょっとアップルパイの名前が長かったが、その名の通りなのだ。
因みにシルクだけ、ホールケーキの様な円柱にカスタードをモンブランのようにかけたが、他の人の分は通常のモンブランの様な大きさです。
スノーと葵とレモンちゃんに、アップル ミルフィーユ モンブランとロイヤルミルクティーを皆に配るように伝えると、俺は一人で生姜パウダー入りミルクココアを持って大浴場に向かった。
「シルク、大丈夫?」
アイビーとシルクを見ると、アイビーが温泉の浅瀬に浸かっていた。
しかし、シルクはまだ震えているようだ。
「リリリリー?」
「シルク、リが多いわよ?」
シルクは小さいので、アイビーの上に乗って温泉に浸かろうとしているのだが、足下しか温泉に浸かっていないのでまだ寒いようだ。
アイビーも頭を温泉から出して、出来るだけ温泉に沈んでいるのだが、身体がどうしても浮いてしまう。
シルクも、俺のように縁を持って温泉に浸かれば肩まで浸かれるのだが、足下が下についていないと怖いらしい。
なので、いつもアイビーの上に乗っての足湯だけなのだ。
「シルク、まずはこれを飲んで身体の中を温めてね」
生姜パウダー入りミルクココアを飲んだシルクは身体の芯が暖まってきたようで震えが少し治まってきた。
俺はシルクにミルクココアを飲ませている間に、五歳の容姿になって裸ん坊になる。
アイビーはシルクの為に、長い間温泉に浸かっていたようで少し湯中りしていた。
「アイビー、代わるから外で涼んできてね」
「ワン、クウーン……」
『リリー様、すみません……』
アイビーがフラフラして、温泉の外に出て行った。
「リリー、ありがとう。ミルクココア、美味しい。身体も、暖まってきたわ」
俺は温泉の浅瀬で、膝の上に両掌をお椀のようにしてシルクを乗せ温泉に肩まで浸からせた。
「シルク、何であんな馬鹿な事したの?」
「うっ……リリー、ごめんね」
シルクの話を聞くと、どうやらアイビーがスミレちゃんとレモンちゃんと第二王女と遊んでいる事にモヤモヤして、独りでお菓子を探しに行ったらしい。
そして、デザート用の冷蔵庫を見るといつものデザートしかなかったので、食材用の冷蔵庫に行き、奥で以前俺が創ったお菓子の家を発見した。
ここで止めて帰っておけば良かったのだが、食材用の冷蔵庫を開けっぱなしにしていたので自動で扉が閉まった。
いつもはアイビーがいるので、自動で閉まっていても簡単に開けられた食材の冷蔵庫が、シルク独りの力ではびくともせず、自棄のようにお菓子の家を全部食べてしまったらしい。
シルクの言い訳はそうなのだが、一部違っていると思われる箇所が有る。
恐らくお菓子を発見した瞬間、お菓子に飛びつき食べきった後に、食材冷蔵庫の扉が閉まっていた事に気がついたと思われる。
どうしてかと言うと、お菓子の家は精巧に創っているので、お菓子の家の扉を閉めて中に入り暖炉に魔法で火を灯せば暖かい筈なのだ。
なのに凍えたと言うことは、既に食べて大きな穴が開いたお菓子の家だったのだろう。
まあでも、シルクが反省しているようなので追求はしなかった。
「シルク? お菓子の家を、また創ろうと思うのだけど美味しかった?」
「勿論よ! お菓子の家を発見した途端、飛びついて食べたもの。……あっ。今の訂正するわ」
「うん、分かってたから良いよ」
シルクが言い訳をしようとしていたが、王妃と第二王女がメイドを引き連れて大温泉に入ってきたのでシルクとの話を終わらせた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
シルク「リリー、このミルクココア美味しいわね。それに、何だかポカポカ
してきたわ」
リリー「生姜パウダーを、ミルクココアに少し入れたの。ココアは上半身を温め
て生姜は下半身を温めてくれるのよ。それにね、生姜に含まれる
ショウガオールは免疫力を上げて、血行を促進させ身体を温め代謝を
上げて、肥満防止にもなるの」
シルク「凄い効果ね。私、毎日飲むわ。これで、毎日お菓子を食べても
洋菓子オールの効果で。スリムボディーね」
リリー「シルク? 洋菓子じゃなくて、ショウガね」
シルク「だから、洋菓子全てでしょ?」
どうしたら、その様な変換になるのか悩むリリーであった。
リリー「って言うか、シルク? お菓子は、飲めないからね?」
シルク「ゴクッ。えっ? 飲めるわよ?」
リリー「――――。飲めるかも?」
そこには、バケツプリンを飲み干すシルクの姿が有った。




