ウインドウォーター王国の商店街1
ウインドウォーター王国は小さな島が幾つも点在する場所と、南西に広がる横長の島や峡谷、噴火を続けている小さな火山の島があり、自然を沢山感じられる海の国と、北側には山や町並みが広がっている山の国の両面が楽しめる行楽地としても有名な国である。
最南西にまで広がる浜辺と、青く透き通る海には様々な魚がいるので魚料理を楽しめるお店も多く、熱帯気候に適した果物も豊富で美味しい果物を使った飲み物や料理を出しているお店も多い。
季節を通して気候は暖かく、東北からの風が絶え間なく吹いてくるので暑すぎる事はない。
小さな島が幾つも点在する場所には、沢山の建物が建てられており建物と建物には橋が架けられている。
沢山の水路が情景を害することのないよう整備されいるので、橋を渡る事と水路を小舟で移動する事が多い国でもある。
そして、その点在する一つの島に大きな闘技場がありそこで交流試合を行うことになっている。
闘技場は、古代の特殊な魔道具と幾つもの魔法陣で構築された強固な防壁がかけられているので闘技場内で大きな魔物が暴れてもビクともしない。
それに、ウインドウォーター王国の回復術師が集結している施設があるので闘技場内で負傷しても直ぐに治療ができる。
なので、ウインドウォーター王国の冒険者学校とフォレストムーン王国の冒険者学校の交流試合が毎年行われると言うわけだ。
そして、毎年ウインドウォーター王国の冒険者学校は、他国の冒険者学校とも交流試合をしているが一国だけ断り続けている国がある。
どこの国かは不明であるが、毎年のように断り続けているとの事だ。
これらの情報は、王妃様の個人所有されている浜辺にたどり着く前に歩いていると、様々な店先に沢山置いてある小冊子に全て書かれていた物から獲た知識である。
「へー、ウインドウォーター王国ってリゾート地だったのね。だからカトレア先生が、自腹切ってまで私とスミレちゃんを誘ってくれたんだ。なら皆で、お昼までゆっくり寛いだら町に向かってレッツらゴーね」
俺が温泉でゆったり寛ぎ、小冊子を読みながら大きなソファーでロイヤルミルクティーを飲んでいるとシルクが肩に乗ってきた。
「リリー? ウインドウォーター王国を見て回るのは良いのだけれど、親切心で護衛しようとしていた騎士長に見つかるかもしれないわよ?」
そう言えば第二の門で、金のプレートを騎士長に見せるとフォレストムーン王国の王族と勘違いしたのか、頻りに護衛しようと付いて来たからね。
まあ確かにスミレちゃんがいるので、フォレストムーン王国の王族がいる少女達の団体ではあったのだけれど、ついてこられるのが鬱陶しくて騎士長を巻いてきちゃった。
でもその代わりに、沢山の料理やお菓子を詰め込んだバスケットをあげたので俺としては、問題ないと思っている。
だけど、
「騎士長さん、親切心で護衛しようと考えてくれたと思うけれどごめんなさい」
と、心情で謝っておいた。
「確かに、騎士長達の仕事ですからね。ですが、私も護衛騎士達が鬱陶しいと感じた事も有りますよ? なので、リリーちゃん? あれくらい、良いと思いますよ」
もしかして俺、口に出していたのか?
ユグドラシルから
『「リリー様、ユグが心情でお伝えしたり出てきて伝えたりしているので混同されたようです。本当に、すみません」』
と『心情』が伝わってきた。
なので
『「ユグちゃんは、悪くないからね。私も、クレマチスちゃんのドジっ子がうつったの」』
と言って『心情』で冗談を伝えておいた。
スミレちゃんはスミレちゃんで、俺が騎士長にした事に対して同意して笑顔を向けてくれた。
二人とも、本当に俺の事を親身に感じてくれる良い子だ。
「スミレちゃん、ありがと」
しかし、次に騎士長に見つかった時にどう言い訳をすればよいか分からない。
「うーん。じゃあ、身元が知られていない子で行けば良いかな?」
そう提案すると、シルクが肩から飛んで俺の前で考える仕草をする。
「私とアイビーは変身できないし、クレマチスちゃんは変身しても龍だし無理よね?」
確かに、入国時には皆人型となってもらっているので顔を知られているし、クレマチスを幼龍にしたとしても白い龍なので、カトレア先生のように知識がある者は騒ぎだすかも知れない。
「そっかー」
「リリーちゃん? スミレとレモンちゃんも、騎士長さんに顔を見られています。それにもしかすると、お母様がここに顔を出すかもしれませんので」
そう言えば、そうだった。
王妃が
「リリーちゃんの家を建てても良いわよ。ウフフ。楽しみね」
と言っていたと言うことは、この家に来る事を楽しみにしている。
と考えるのが、一番妥当だ。
それにスミレちゃんが髪型を変えているとはいえ、フォレストムーン王国の第三王女だからね。
若しかすると、第三王女だと騎士長に知られたかもしれない。
まあでも騒ぎになっていない所を見ると、フォレストムーン王国の国王陛下がウインドウォーター王国の国王陛下に口添えをしてくれたのだろう。
それに恐らく俺達があまりにも早く来すぎて、その口添えが騎士長達に届く前だった。
そう考えるのが、一番妥当だろう。
「そうだよね。スミレちゃん、王妃様達が来た時はお願いね」
「うん」
シルクとスミレちゃんと話をしていると、葵のモフモフの尻尾が俺の膝の上に乗った。
実は、ウインドウォーター王国に来るまで悪戯をしないようにロープで縛っていたのだが、反省したようで小さくなって壁際で拗ねていた。
しかし、その姿があまりにも可哀相に思えて解放してあげると、幼狐になって甘えてきたので今は俺の膝の横にいると言うわけだ。
「私とスノー様も幼狐や幼虎になれますが、フォレストムーン王国の様に、この国で不自然に思われないか分かりませんの」
確かに、幼狐や幼虎がウロウロする国なんて聞いたことがない。
まあ国と言っても、俺は人族が住む国としてフォレストムーン王国とウインドウォーター王国しか行った事がないのだけれどね。
「スノーと葵まで? 私は……」
「リリー様は容姿を十五歳にして髪の色を金から銀にして、ケモミミ尻尾を取って、装いをメイド服から変えれば分かりませんわ。ですが、私達はカトレア様と合流してからの行動となると思いますの」
葵の言うことは分かるけれど、俺独りで行くのは寂しい。
「うー、じゃあ葵? 召喚精霊ちゃん達は?」
「ユグちゃんは姿をお隠し出来るので可能ですが、ディーネちゃんとケットちゃんはあのようにレモンちゃんと一緒に、クレマチスちゃんの尻尾を抱いてお昼寝しておりますので、連れて行かれるとレモンちゃんが寂しがるかもしれませんの」
クレマチスも幼龍になって、レモンちゃんと一緒に尻尾を抱いてお昼寝をしている。
はっきり言って、可愛い。俺も一緒に、クレマチスの尻尾で癒やされ休みたい。
けれど、折角のリゾート地を見て回らないのは勿体ない。
「そう言えば、レモンちゃんはクレマチスちゃんが飛んでいる間、ずっとシルクの世話をしてたよね……」
それに、心が通っているウンディーネと魔眼のケットシーと離れさせるのは良くないかも知れない。
まあ、どちらも俺の召喚精霊ではあるが……。
「モグモグモグ。リリー、何か言った?」
シルクさっきまで話していたのに、いつの間にクッキーの置いてあるテーブルに行ったの?
「シルク、何でもないよ。だから、食べながら飛んでこないでね」
「モゴモゴ。わかっひゃー!」
食べながら話すから、そこら中に食べかすが落ちているし。
だけど、アイビーが食べかす食べてくれているので踏んづけなくてすみそうだ。
皆と一緒に行きたかったが、ユグドラシルが一緒に来てくれるのならそれだけでも嬉しい。
「ユグちゃんは、一緒に来てくれる?」
「はい、リリー様。ユグは、リリー様にお供致します」
と言うわけで、俺とユグドラシルでウインドウォーター王国を探索することにした。
王妃が所有する土地に建てた第二の自宅から出ると、美しい砂浜と青く透き通る海が見える。
まるで海の近くにある別荘なので、交流試合が終わったらカトレア先生達と合流して第二の自宅に誘って水着に着替えて海を満喫するのも悪くは無い。
それに、
「海の幸と山の幸で、皆とバーベキューもいいかも」
「リリー様、名案ですね。ユグも、お手伝いしますよ」
「ユグちゃん、ありがと」
そう言って俺とユグドラシルは第二の自宅を後にして、ウインドウォーター王国の商店が点在する小島にやって来た。
ここは南国の果物が沢山置いてある商店のようで、フォレストムーン王国では見たことが無い果物が沢山置いてあった。
「すみませーん」
「いらっしゃい。ん? 何か欲しい果物はあるかい? お嬢さん綺麗だから、沢山サービスするよ」
「えっと、このお金使えますか?」
「フォレストムーン王国の貨幣だね。使えるよ」
フォレストムーン王国との金額差が分からないので、フォレストムーン王国でも売っているリンゴの価格を思い浮かべる。
確か、この大きなリンゴであればフォレストムーン王国の相場だと一個でだいたい銅貨一枚と大銭貨五枚位だ。
まあ、ユグドラシルもこのお店の店主は悪い人ではないと言ってくれたので来たのだけれどね。
「このリンゴ一個、幾らですか?」
「一個、銅貨一枚だよ」
「安ーい」
このリンゴを持つと、重みが有って裏に返してみると後ろは丸みが有ってオレンジ色なので蜜も沢山入っていそうだ。
「そうかい? でも、お嬢ちゃんなら十個で銅貨七枚でいいよ。綺麗なお嬢ちゃんだから大サービスだよ。どうだい?」
このリンゴなら、箱で買ってそのまま食べたりアップルパイにして皆で食べても美味しいだろう。
でも、端に小ぶりで形の悪いリンゴが箱積みされていた。
「あちらの、リンゴは?」
「ああー、あのリンゴは他のリンゴより薫りが良くて蜜が全面まで行き渡っていて美味しいのだけどな、形が悪くて小ぶりだから全く売れないんだよ。それに、少し時間がたつと実が柔らかくなりすぎて傷みやすいんだ。どうだい? 試食、してみるかい?」
おじさんが包丁で切ると、全面が黄色く蜜が全体に広がっており、一つ試食させて頂くと、美味しいの一言しか言えない位に美味しい。
美味しいのなら買って、アイテムボックスに入れておけば傷まないので問題は無い。
それに、売れなくて捨てるより買って食べてあげる方が生産者さんも嬉しいだろう。
「あのリンゴ、箱で買うと幾らですか?」
「いつも、あのリンゴ売れないからな。でも、売れたら態々山の方から来ている果樹園に売り上げを渡す必要があるからな。うーん……一個小銅貨一枚だが売れねえし、一箱に二十個入っているから小銀貨一枚だが一箱大銅貨一枚で良いぞ」
大銅貨一枚って、半額だよね? でも、売れないより良いのかな?
だけど、態々山の方から来ている果樹園の人が不憫だ。
なので、十箱全部買い取ることにした。
「あの箱のリンゴ、全部売って下さい」
「えっ? 良いけれど、お嬢ちゃん持てないだろ?」
確かに見た目小さな少女が、小ぶりだとはいえ十箱だとリンゴ二百個だ。
先ほど、一個剥いて食べたので百九十九個だけれど、一人では持つことが出来ないと思ったのだろう。
「私、収納魔法を使えるので大丈夫です」
「凄いな、お嬢ちゃん」
そう言って、俺の目の前までリンゴの箱を運んでくれた。
俺が全ての箱を収納すると
「じゃー、十箱で小銀貨三枚でいいぞ。どうせ売れなければ、無駄になるからな」
そうは言っても、果樹園の人が大切に育てたリンゴだ。
なので、大銀貨一枚渡すことにした。
「お嬢ちゃん、銀貨一枚と小銀貨二枚おつりだ」
「それは、大切にこのリンゴを育ててくれた果樹園の人に渡して下さい。また明日買いに来るので」
「えっ? 良いのかい?」
「うん」
俺はその他に、南国特有の果物を箱で沢山購入しアイテムボックスに収納した。
「いやー、お嬢ちゃんありがとな。こっちの形の良い人気のリンゴ、十個サービスするよ」
そう言って、おじさんが笑顔でリンゴを渡してくれた。
「ありがとうございます」
そう言ってリンゴを受け取ろうとすると、急に走って来た貴族風の美少年がそのリンゴを一個取って通りを走り去った。
「あっ! こらー、待てぇー!」
「お嬢ちゃん?」
商店のおじさんが呼び止めるが、リンゴを盗んだ貴族風の美少年を俺は追いかけた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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リリー「シルクー? 試食してみてー」
シルク「何々ー? 新作のデザート作ったの? ……ただの、リンゴじゃない」
リリー「でも、凄く美味しいの。リンゴの果肉にいーっぱい、蜜が入っているの」
シルク「ほんとだ。こんなに沢山の蜜が行き渡っているリンゴ、私初めて見たわ」
リリー「でしょー? 一目見て、虜になったの。だから、シルクも食べてみてー」
シルク「美味しい……シャリシャリしていて瑞々しくて、自然の甘さが舌に
行き渡るわね」
リリー「でしょ? だから、このリンゴを育てている果樹園の場所を果物屋さん
に教えてもらったの。それでね、その果樹園の人達と近々契約しようと
思っているの」
シルク「でも、ウインドウォーター王国まで遠すぎるでしょ?」
リリー「テレポート先として登録したから、今度から一瞬で来られるよ」
シルク「そうなんだ。じゃー、新作のリンゴを使ったお菓子楽しみね」
リリー「シルク、皆の分残し……」
シルク「モグモグ。にゃにぃー?」
リリー「何でもない……」
今度からシルクに試食を頼むのは、よそうと考えたリリーであった。




