大きな子が飛ぶ時は、やっぱり注意が必要?
皆を楽しませる為の空の旅なのに、葵のせいで台無しになるところだった。
本題に、入らないとね。
俺の自宅とは違う、機能を皆に見せるために。
「えっと……リリーちゃん、あったよ」
「スミレちゃん、それを切り替えてみて」
すると、スミレちゃん達が見ている壁や足下が一変する。
壁が透けて見え、青空と下には村や森それに海が見える。
足下にはクレマチスが家を背負っているので本来なら何も見えないが、足下も一部透けて見えるようにしている。
なぜ足下だけ一部透けているようにしたのかというと、高所恐怖症の者がいると恐怖を感じるかも知れないのでその為に対策である。
幸い、俺の使徒・眷属・従者・召喚精霊達は誰も高所恐怖症である者がいなかったようで
「「「うわー! 凄ーい。空から見る、私達の国や景色は絶景ね。まるで、お菓子のお家みたいだわ」」」
と、歓喜の声音だけが聞こえてきた。
レモンちゃんは驚きを双眸と両手を広げて表現し、スミレちゃんは遠くに見えるフォレストムーン王国とその景色に感動し、シルクは遠くに見える小さな家を俺が以前創ったお菓子の家のように感じ取り驚いていたようだ。
でもあのお菓子の家、二階建てにしてシルクが休む事が出来る位の大きさのベットもあったから、お菓子にしては巨大だと思うのだけれど?
シルクの感覚では、あの巨大なお菓子の家が、ここから見える凄く小さな家に見えてたって事だよね?
いやー、シルクのお菓子に対する感覚を疑うよ……。ホントに!
「その切り替えスイッチを切り替えると、外の景色が見えるようになるの」
皆が、空からの景色に喜んでくれたなら空の旅は成功したと言える。
でも、本当に葵は……悪戯幼狐すぎるよ。
「ユグ、リリー様の心中お察しします」
「ユグちゃん分かってくれた? 葵、眼を離すといつもこうなの」
俺とユグドラシルが話していると、クレマチスの声がかかる。
「リリー様、葵様がタンスをよく探していらっしゃるのはその為なのですね。私、良い勉強になりました」
「クレマチスちゃんは、変な事覚えないでね」
「はい。私には、ユグちゃんがいますので安心して下さい」
いや、クレマチスちゃん?
それくらい、ユグドラシルに聞かなくても気づいてよ。
「クレマチス様、ユグにお任せ下さい」
でも、本当にクレマチスとユグドラシルは仲が良い姉妹のようだ。
ユグドラシルに任せておけば、クレマチスも少しはドジゴン治るかな?
『「リリー様、クレマチス様のドジゴンの矯正を出来る限りユグが精進致します」』
と『心情』が伝わってきた。
クレマチスのドジゴンぶりって、ユグドラシルが精進しないといけない位なんだ……。
改めて、クレマチスのドジゴンぶりを勘考するリリーであった。
そうこうしていると、フォレストムーン王国とウインドウォーター王国の中間地点を丁度今し方過ぎ去った。
ならば、皆にもお知らせしておいた方が良いだろう。
ピンポンパンポン!
「皆様、フォレストムーン王国とウインドウォーター王国の中間地点を過ぎました。只今からおよそ二十分でウインドウォーター王国近辺の平野に着陸予定でございます。悪天候の場合でも、揺れる心配はございません。只今の時刻は午前八時四十分、天候は雲一つ無い晴天、只今の気温は二十八度でございます。ウインドウォーター王国に近づくにつれて気温が上昇致しますが、空調で部屋の温度は最適になりますのでご安心下さい。着陸に備えましての注意事項もございませんが、着陸後ウインドウォーター王国までは徒歩となっておりますのでご了承頂きますようお願い申し上げます」
そう言って、お知らせをしておいた。
だってクレマチスに隠蔽魔法を施しているとはいえ、この大きさでウインドウォーター王国の前に着陸する所はないしドジゴンぶりを発揮し誤って嚔でもされたら風圧だけで何か破壊しちゃうからね。
況してや、着陸する時に思わず羽をはためかしたりされただけでもウインドウォーター王国に甚大な被害が出ちゃう。
クレマチスは魔法で飛んでいるので、羽をそこまではためかさなくても良いのだけれど、癖で出発する時や着陸しようとする時はどうしても羽をはためかしてしまうらしい。
なので、出発の時は俺が補助してクレマチスを空の上まで移動させたのは言うまでもない。
ウチのドジゴンちゃんは、手間がかかると言うわけだ。
それに昔から、手間がかかる子ほど可愛いって言うしね。
大きくなったクレマチスは毛並みが長くなるので、常に俺の全身をクレマチスのフワフワな毛が癒やしてくれているのだ。
それだけでも、俺の空の旅は成功したと言える。
「クレマチスちゃん、ありがと。もう直ぐウインドウォーター王国近辺の平野に着くけれど、また帰りもお願いね」
「はい、リリー様。私は、リリー様に頼まれたらどこへでも飛んでいきます」
そう言ってクレマチスは、ウインドウォーター王国近辺の平野の上空に向かった。
そして暫くすると、クレマチスが俺の方を向いた。
「リリー様、ワイバーンが一体ウインドウォーター王国に向かっているようです」
「えっ? もしかしてウインドウォーター王国を襲うつもりなのかな?」
確かに近辺マップで確認すると、一体だけワイバーンがウインドウォーター王国に向かおうとしているのが分かる。
確かカトレア先生の授業で習った話では、ワイバーンは群れをなしている場合が多く空から襲ってくる魔物であるためA級指定されている。
しかし一方で、幼いワイバーンを飼い慣らしている一部の国があるとのことだ。
その国は小国でありながら、ワイバーンを乗りこなす軍隊がいるので空を支配する小国と言われいる。
まあでも、その小国であるリーフリュウシン小国はフォレストムーン王国と同盟国であり、第一王子の妃様がいる国なので国王陛下どうしも仲が良いからね。
「いえ、それは無いかと。ワイバーンは、その姿からよく龍種と言われておりますが、羽が生えたトカゲなので、単体で強大な力を持つ龍種とは全く異なります。私から言えば、少し圧を向けるだけで大軍であったとしても、大軍で慌てるように逃げていくのであまりにも弱すぎる魔物と言ってもいいです。それに、群れでないと獲物を襲う事が出来ない臆病すぎる魔物なのです」
ワイバーン、クレマチスにかかると偉い言われようだ。
アニメや小説の場合、単体のはぐれワイバーンはかなり強い事が多いのだけれどね。
それに、氷眼のサイクロプスでさえ逃げ出すクレマチスの圧は、A級指定されているワイバーンには荷があまりにも重すぎるよ。
今は隠蔽魔法で姿を消しているし、俺が側にいるのでクレマチスは凄く機嫌が良い。
なので、圧も放っていないしクレマチスの存在もワイバーンは分かっていない筈だ。
しかし、クレマチスが近づく度にワイバーンが何かに脅えるように離れて行くのは本能なのかな?
「そうなんだ……」
「リリー様、気になるようでしたらワイバーンに圧をかけましょうか?」
「でも、クレマチスちゃんが圧をかけると周りの魔物も混乱するでしょ? それに、ウインドウォーター王国の人達はどうなるの?」
「恐らく、強い魔物は混乱を起こし弱い魔物は気絶または死亡する魔物もいるでしょう。ウインドウォーター王国の人達は……?」
クレマチス、そんな可愛く首を傾げても分からないのならダメだよ。
「クレマチスちゃん? ウインドウォーター王国の人達の状態が分からないのならダメ絶対よ? それに、ウインドウォーター王国内や人のいる場所で圧は禁止ね」
ウチのドジゴンは大きくなると、少しおバカになるのかな?
少し考えれば、魔物より弱い人が多いウインドウォーター王国の人達が龍の威圧でコロッとなっちゃうのは目に見えていると思うのだけれど……。
「はい、リリー様」
幼龍の時と違って、大きな姿になっている時のクレマチスは魔力も凝縮せずに強大なので、レモンちゃんの隠蔽魔法では隠しきれなかった。
なので俺が隠蔽魔法を施し隠蔽したが、隠蔽したクレマチスの事を本能で感じ取り逃げだす程度のワイバーンなら放置しても大丈夫だろう。
それに、例え幼龍の姿になっていたとしてもウインドウォーター王国内にクレマチスがいたら、何か理由が無い限り王国には近づかないだろうしね。
そして、到着するとゆっくりと羽をはためかさないで着陸した。
どうやら、いっぱい褒めて喜んでいると肩の力が抜けてドジゴンぶりを発揮しないようだ。
ただ、褒めすぎると肩の力が緩みすぎるようだ。
着陸して皆が降りると、俺はクレマチスを沢山褒めてあげた。
すると、
「リリー様、私嬉しいです。……クシュン!」
ゴォォォォォォ! ビュゥゥゥゥゥゥ! バキバキバキ! ベキベキベキ!
ドゴォーン! ガラガラガラ! …………。
「あっ……」
クレマチスが嚔をしたが、森の方を向いていたので助かった。
もし、町の方を向いていたらと思うと冷や汗が出た。
勿論、森は元通りにしたよ。
その後叱られると思ったクレマチスが、幼龍になって頭を隠してお尻を出していた姿があまりにも可愛かったので俺も五歳の容姿になって抱きしめたので無問題。
そうこうして皆で歩いていると、ウインドウォーター王国の第一門に着いた。
第一の門は、予めカトレア先生から頂いていた通行許可書が有ったので普通に通れた。
しかし、第二の門では幼女と少女の団体だった事もあり騎士長に呼び止められたが、フォレストムーン王国の国王陛下から頂いた金のプレートを見せた瞬間、跪き丁寧な案内で通してくれた。
やはり、他国であっても金のプレートの効果は絶大なようだ。
しかし、護衛のように騎士長がついて来ようとするので
「これは、私が作った料理とお菓子です。お仕事で疲れていらっしゃる、騎士や歩哨の皆様でどうぞ分けて食べて下さいね」
と言って、騎士長に多量の料理やお菓子をバスケットに詰めるだけ詰め込んで、背負わせて、両肩と両手に沢山持たせると動けなくなっていたので上手く巻くことが出来た。
まあ、他の騎士や歩哨達が近くにいたので大丈夫だろう。
ともあれ、宰相さんから聞いていた王妃様の個人所有されている浜辺の近くにある広い広場に着いたので、俺の温泉付き自宅と同じ物をコピーして創り出した。
今日ウインドウォーター王国に王様達が着いている筈だが、カトレア先生は明日ウインドウォーター王国に到着予定なので、明日のお昼にカトレア先生が泊まる予定の宿屋に行こうと思っている。
なので、今日はお昼からウインドウォーター王国を見て回ろうと思っている。
※ ◇ ※
紫色の髪をした何者かが、ウインドウォーター王国に降り立つと封印をこじ開ける。
「ここには、お誂え向きの物が海と山に封印されているようですわね。この程度でしたら、この魔石の身体に最適ですの。以前設置した魔石二つは何者かに消されたようですが、極小の中でも一際小さい物でしたので管理者の守護神の一体にでも消されたのかもしれませんわ。ですが、今回の魔石のうち一つは極小の中でも少し大きいですの」
そう言って、紫色の髪をした何者かは時限式の装置に入っているワールドマップでさえ認識不可能な容器に入っている二つの魔石をそれぞれ設置し終わるとどこかに消え去った。
※ ◇ ※
「ほっ……」
勇者の成れの果ての魂だけでもと思い、西大陸の消去から異空間に逃がそうとしましたが、この装いの能力でしょうか? 助かったようです。
以前、主様より伺ったのはこのようなシステム異変が起こった場合中央システムと分離後、再修復を経て再び中央システムにアクセスした場合、中央システムにあるバックアップは二ヶ月前の物であると仰っていました。
あの者の雰囲気が一変し、思わず従ってしまいましたが私のアイテムボックスに入っている、この勇者の成れの果ての魂を逃がして正解だったようです。
もしそうしなければ、ズレが生じているこの状態で西の大陸にある勇者転生陣にあるシステムで再び勇者の選定をすることはないでしょうしね……。
魔王の因子は奪われてしまいましたが、あの者は一体何をしたかったのでしょうか?
それにしても……
「ここは、一体どこでしょう?」
私が、目映い光に照らされ真っ白な部屋にいると
「やあ。君がここにいると言うことは、ボックンの装いを着た君が危険な事に巻き込まれ自動転送されたんだね」
と、男の子の声音が聞こえてきた。
そして、その声音と共に真っ白な部屋の様子が一変された。
一変されたとか思うと、眼前に可愛らしい男の子が立っていた。
「貴方は?」
「驚いているかな? でも、このボックンは事前に撮った立体映像だよ。だから話すことはできないのさ」
あまりにも、普通に聞こえてくる声音……
「本当にいないの? でも、私が主様に着せられた装いや様々な装いを着た小さな幼女の人形が沢山有るわ」
そして周りには、沢山の小さな可愛らしい幼女達の人形が透明な箱に入れられて、可愛らしい装いを着せられていた。
「あれ? もしかして、ボックンの装いに興味があるのかな? ここは、ボックンのお気に入りのフィギュアが沢山置いてある部屋だよ。でも、可愛いからって持っていったらダメだよ」
立体映像と言っていましたが、眼前の男の子に普通に触ることができる。
ただ不思議なのは、この男の子に私が触れても触れている事にたいして何も反応を示さない事。
しかし、このような事や私を強制的に転送出来るのは、私の主様か主様と同じ管理者様しかいません。
「やっぱり、近くにいるのでしょ? 出てきて下さい。私はある管理者様の従者です。貴方様に相談したいことがあるのです」
「残念。本当に、ボックンはそこにいないんだよ。おっと、忘れる所だった。君が危険な事に巻き込まれこの加速している部屋に来たと言うことは、飛ばされたその日から既にかなりの日数が過ぎているよ」
「えっ? そっ、そんな?」
「んっ? そろそろ、加速が本格化したようだね。君は安全な場所にもう直ぐ転送されるよ。但し、未来にね」
部屋の空間が、震えている? いえ、加速している?
まさか、この部屋の現象は時空転移?
「待って下さい、管理者様。お願いです、お話を……」
「じゃー、またね。その装いを着ていると言うことは、きっとボックンに会えるよ」
私はその言葉と共に、光りに包まれた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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葵「スノー様、クレマチスちゃん、貴女達は五歳のリリー様と十五歳のリリー様
どちらが好みですか?」
スノー「リリー様の全てが、大好きですぅにゃん」
葵 クヌヌ! スノー様、即答ですの? 相変わらず、私の恋のライバルに
相応しいですの。
クレマチス「この前シルクちゃんに、綿菓子と勘違いされてペロペロされたの
ですが、その後リリー様にペロペロされました」
葵 クレマチスちゃん、私の質問を聞いていないようですわ?
ですが、リリー様にペロペロ……羨ましすぎますの!
それに、相変わらず天然ボケでドジっ子なクレマチスちゃんの
そんな所が、リリー様のお気に入りですし……。
私も無表情で可愛い仕草をするように心がけるか、ドジっ子を
演じた方が宜しいかもしれませんわね。
リリー「スノー、クレマチスちゃん? 変な想像をしている顔の葵は
放置していて良いから、一緒にお風呂にいこ」
スノー「はいぅにゃん」
クレマチス「リリー様、お供します」
変な想像で頭がいっぱいだった葵は、折角にチャンスを棒に振る
のであった。




