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幼女リリーと猫さん2

 どういう事? 

 この子、子猫じゃ無いの? 

 こんなに、小さくて可愛いのに? 

 しかし、このフォレストムーン王国はこの国に害を及ぼす魔物は入って来られない筈だ。



「そのものは、猫の妖精と精霊が入り交じった存在の希少精霊ですぅにゃん。まだ生まれて直ぐのようですが、正式名称は魔眼のケットシーですぅにゃん。リリー様に、かなり懐かれているようですぅにゃん。それに、すでに召喚精霊になっているようですぅにゃん」



 えっ? 召喚精霊? 

 いつの間に? 

 そう言えば、子猫達と戯れている時にシステムが



 【システム 希少精霊に気に入られました】

 【システム 希少精霊を召喚精霊にしますか?】


  【はい】  【いいえ】



 と出ていた気がしたが、子猫達と戯れるのが忙しくて【はい】を選択して気にしていなかった。

 でもこれで、母猫が去って行った訳が分かった。

 恐らく魔眼のケットシーは負傷して、あの近くに住んでいる三毛猫に助けてもらっていたのだろう。

 まあ、その三毛猫の兄弟姉妹からは足蹴にされて母乳を飲めずにいたが……。


 この子が召喚精霊なら、レモンちゃんに丁度良いかもしれない。

 レモンちゃんは大精霊の中で、まだウンディーネとしか契約していないのでウンディーネしか呼べないのだ。

 もし希少精霊である魔眼のケットシーを呼び出せるようになれば、レモンちゃんの戦力増強に繋がるしね。

 主に、カフェバー&レストランの給仕のお手伝いともいうが……。



「スノー、レモンちゃんは?」

「今、休憩中ですぅにゃん」

「そうなんだ。じゃあ、個人使徒テレパシーで呼んでみるね」

「はいぅにゃん」



 俺は、レモンちゃんに『個人使徒テレパシー』を使用することにした。



『「レモンちゃん、休憩中だけれど今良いかな」』

『「良いよー。リリーちゃん、どうしたのー?」』

『「レモンちゃん、ホテルのフロントホールから外に出てきてくれる?」』

『「うん、良いよー。レモン行くから、リリーちゃん待っててねー」』

『「うん、お願いね」』



 なかなかホテルのフロントホールから出てこないが、暫くするとレモンちゃんが鼻にクリームを付けて走って来た。

 もしかして、休憩中にパンケーキを食べていたのかな? 

 なら、俺はレモンちゃんに少し悪いことをしたよな。

 レモンちゃんの為だと思っていた、魔眼のケットシーの件とはいえ少し反省だな。


 恐らく、俺が食べるのを急がさせたせいで鼻にクリームを付けて来たのだろう。

 なので、俺は十五歳の容姿に戻りレモンちゃんの鼻に付いていたクリームを拭こうと顔を近づけた。

 すると、レモンちゃんに「チュッ」と言ってキスをされた。



「わーい。葵ちゃんの言うとおりしたら、リリーちゃんの頬にチュッてできたー。葵ちゃん、凄ーい」



 ……あの、悪戯幼狐め! 

 純真なレモンちゃんにまで――後でお仕置きが必要なようだね。



「レモンちゃん、悪戯狐っ子の真似したら駄目よ?」

「でも、葵ちゃん色々と教えてくれるよ? 例えば、貴族の男の子が食べ物を注文してくれた時は、美味しくなーれ、美味しくなーれ、萌え萌えチュッ! と言って投げキッスをするとそのお客様が毎日来てくれるんだって。だから、レモン冒険者学校の貴族の子にしたの。するとね、お捻り貰っちゃった」

「……レモンちゃん、それは駄目! 冒険者学校の男の子はいま思春期真っ盛りだから、レモンちゃんに変な虫が付いちゃうから禁止!」

「はぅー! リリーちゃん駄目なのー?」

「駄目!」


「じゃあじゃあ、クレマチスちゃんみたいなドジっ子はー?」

「それも、葵に?」

「うん! 葵ちゃん物知りだよね」

「ドジゴンの真似も駄目!」

「じゃあじゃあー……」


「だから、葵の真似しちゃ駄目! ただでさえ、悪戯狐っ子なんだから葵は」

「はぅー、そうなんだ」

「じゃあじゃあー、リリーちゃんのスカートが捲れ上がるのは? 良いの?」

「……レモンちゃん、反省してます。だって、葵が悪いんだもん」



 俺が反省していると、可愛い子猫天使のような魔眼のケットシーが俺の足下で声をかけてくれる。



「ミィー」

「みゃー! 可愛いー! リリーちゃん、この子はー?」



 いやー、ホントごめんね。

 魔眼のケットシーちゃん。

 葵のせいで、かなり脱線しちゃったよ。

 レモンちゃんが、魔眼のケットシーの鳴き声を真似してしゃがみ込むと撫でだした。



「実はね、この子の件でレモンちゃんを呼んだの。なのに、葵が……もぉーホントに!」

「ミィーミィー」

「リリーちゃん、この子お腹空いているのかも? レモンの人差し指を、チュッチュッ言って吸っているよ?」



 そう言えばこの子、三毛猫の母乳にたどり着く前に他の子に足蹴にされて飲めずにいたか……。

 魔眼のケットシーだけど、お腹空いているんだろうな。

 でも、精霊だよね? 

 あっ! 

 でも、猫の妖精と精霊の入り交じった精霊ってスノーが言っていたよね。

 なら、哺乳瓶に人肌に温めたミルクを入れて……はい、出来上がり。

 ミルクを作ると、魔眼のケットシーは俺の足に肉球を押しつけてきた。



「ふにゃー、気持ちいい」

「リリーちゃん、いいなー」



 ……ここで俺が魔眼のケットシーにミルクを与えるより、レモンちゃんに哺乳瓶を持たせてミルクを与えさせる方が良いかもしれない。

 俺は、自身で与えるのを我慢してミルクをレモンちゃんに渡す。



「リリーちゃん、プルプル震えているけれどレモンがこの子にミルクを与えても良いの?」

「うん……グスッ」

「リリーちゃん、泣いているの?」

「泣いてないから、レモンちゃんこの子にミルク与えてみて」

「うん……リリーちゃん、ありがとう」



 そう言って、レモンちゃんは魔眼のケットシーにミルクを与えた。

 すると、



「あれ? リリーちゃん、この子召喚精霊? レモンの絆と、繋がったよ?」

「うん。スノーに教えてもらったのだけど、この子はね正式名称を魔眼のケットシーと言うの。猫の妖精と精霊が入り交じった、希少な精霊みたい。だから、レモンちゃんにどうかなと思って」

「リリーちゃん、ありがとう。レモン、ディーネちゃんと同じようにケットちゃん大事にするね」



 レモンちゃんが、俺を見習ったのか魔眼のケットシーの名前を縮めていた。

 レモンちゃん、良い傾向だね。

 俺が教えた通り、実施しているね。

 精霊は、その方が絆が強くなるの。



「うん。あっ、でもレモンちゃん? ケットちゃんはね、ディーネちゃんと違ってお腹を空かせるみたいなの。なので、人肌に温めたミルクを一日一回は与えてね」

「うん。リリーちゃん、ありがとう。大好きー」



 そう言って、レモンちゃんは俺に抱きついてきた。

 その様子を、魔眼のケットシーはレモンちゃんの右手からミルクを飲みつつ見ていた。

 レモンちゃんが立ち上がると、魔眼のケットシーがレモンちゃんの足に細い尻尾を巻き付かせた。



「ケットちゃんも、レモンと一緒に休憩所に来る?」

「ミィー」



 レモンちゃんの言葉に応じるように魔眼のケットシーが返事をした。

 そして、レモンちゃんが歩き出すと魔眼のケットシーもホテルまで歩き出した。

 俺が笑顔で見送っていると、魔眼のケットシーが俺の元まで走って来た。

 そして、俺の足に身体(カラダ)を擦り寄せて尻尾を絡ませると



「ミィ、ミィミィー」



 と可愛い顔で見上げて鳴いたかと思うと、レモンちゃんの方へ走っていった。

 スノーが掃除道具を片付けると、俺の元に来て



「ケットが、リリー様に感謝していると言っていましたぅにゃん」



 と言った。



「そうなんだ。よかった。スノーも、ケットちゃんと仲良くしてあげてね」

「はいぅにゃん」



 スノーと魔眼のケットシーの話をしてると、レモンちゃんがホテルの入口で手を振って待ってくれているようだ。



「リリーちゃーん、スノーちゃーん、休憩室でお茶しようよー。ケットちゃんも、ほらー」

「ミィーミィーミィー」



 魔眼のケットシーが鳴くと、スノーが俺に自信の尻尾を絡ませ身体(カラダ)を寄せてきた。



「リリー様、ケットが召喚にいつでも応じますと言っていますぅにゃん」



 猫が飼い主に尻尾を絡ませて来るので良く聞くのは、嬉しい時、ご飯が欲しい時、遊んで欲しい時、仲良しの印として行う時、お気に入りですと伝える時、甘えたい時、挨拶する時があげられる。

 スノーは猫ではないが、尻尾を俺に絡ませて来たのは久しぶりだ。


 相変わらずスノーの表情は豊かではないが、もしかすると魔眼のケットシーが俺に自信よりも可愛がられるかもしれないと思う不安から尻尾を俺に絡ませ身体(カラダ)を寄せてきたのかも知れない。

 スノー、凄く可愛らしい所があるな。

 今日は、寝るまで沢山スノーに構ってあげよう。



「レモンちゃーん、ケットちゃーん、今行くよー。スノー、通訳ありがとっ! いつも感謝しているよ。ほら、スノーも一緒にホテルの休憩室に行くよっ!」

「はいぅにゃん」



 俺はスノーに笑顔を向け、スノーの気持ちに応えるように手をしっかりと持った。

 そして、一緒にレモンちゃんの元に行くのであった。

 こうして俺とレモンちゃんは、新たな召喚精霊を獲た。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 夜、寝る前の一時

 五歳の容姿に姿を変え、スノーの着ぐるみセットに着替えるといつものよう

に幼龍のクレマチスを枕にするとスノーが幼虎となって葵が幼狐となる。

 スミレちゃんが俺の隣に来て横になると、俺の顔の横にスノーと葵が来る。

 アイビーとシルクは一緒に先に寝ている。

 なので、今日はいつもと違う寝方をすることにした。

リリー「スノー、今日は人型になってくれるかな?」

スノー「はいぅにゃん」

    スノーが人型になってくれたので、スミレちゃんとは逆側にスノー

    を寝させるとちょうど川の字になる。

    今日はスノーに、逆に抱っこしてもらって休むことにしたのだ。

    だって、今日はスノーが構って欲しそうな雰囲気で尻尾を絡ませて

    来たからね。

    それに、応えた訳だ。

葵「リリー様、葵も人型になりますの」

リリー「葵は駄目」

葵「リリー様、酷いですわ。なぜ葵だけ幼狐のままですの?」

リリー「クレマチスちゃんもでしょ?」

クレマチス「リリー様の頭、クレマチス大好きです」

葵「リリー様、葵も人型になってリリー様にマッサージを……」

リリー「ほら、そういうことを言うでしょ。だから駄目!」

葵「理不尽ですの!」

   拗ねた振りをしていた葵だったが、結局幼狐になってリリーが寝ている

   隙に足下から潜り込むのであった。

   次の日リリーのちっぱいに手を置いていた葵が、こっぴどく叱られた

   のは言うまでもない。

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