選抜試験の前日5 【カトレアSIDE3】
コン、コン
ノックがしたと思うと、男の子三人組がしょぼくれた表情で監視モニター室に顔をだした。
「「「失礼します。カトレア先生、スミレちゃん達に闘技場を追い出されました……」」」
この子達、落ち込みようが酷いわね。
確かに、恋する男の子三人組の思い人であるリリーちゃんの前で、スミレちゃんとアザレアちゃんとブルメリアちゃん達に闘技場から無理矢理追い出されるなんて……。
「うん、見てたから知ってるわ。三人とも、そこに席があるから見ていると良いわよ」
私が男の子達に座るように伝えていると、リカステが急に立ち上がった。
「お前ら、それでも男か! 男なら、もっと紳士に行け! 女の子は紳士な男に弱いんだ。分かるだろ、それくらい」
リカステの強面の顔が、ますます怖くなった。
それを見た私は、思わずリリーちゃんの縫いぐるみ人形を出して抱き寄せた。
「「「はい……」」」
男の子三人組は身震いし、リカステの顔を見ると小さくなって椅子に着席した。
確かに、慣れないと怖いよね……いえ、やっぱり慣れても怖いかも。
私も思わず、リリーちゃんの縫いぐるみ人形を出したくらいですものね。
それにしても、男は紳士だとモテると思っている所がリカステらしいわ。
「クスッ」
「カトレア、何笑っているんだ! 次は女子二人組だぞ」
「ええ」
リカステの指摘に前を向こうとすると、ロベリアちゃんがそろーっと男の子達の所に顔を出した。
「ねえねえー、君たちー? リリーちゃんのどういう所が好きなのー?」
「ちょっと、ロベリアちゃん? 今から女の子達二人組の魔物との訓練が始まるんだから」
「えー? だってー、女の子達はーまだ準備中だからー良いでしょー? ねえねえ、カトレアちゃーん?」
また、始まった。
ロベリアちゃんは、恋愛話が大好物でこういう話に顔を突っ込みたがるんだけれど自身の恋は鈍感なのよね。
フロックスも、苦労していると思うわ。まあ、どっちもどっちですれどね。
「じゃー、少しだけね」
「やったー! じゃあー……」
ロベリアちゃん?
首を傾げて、私にこの子誰って訴えかけてきているけれど私を巻き込みたい訳?
まあ、名前くらい教えても良いけれど……
「その子は、ルビナス君よ」
「はい、じゃー君からどうぞー」
私に名前言わせて、結局君って……
この子のマイペースなフワフワした感じに巻き込まれると、戦闘訓練を見ているのに私の顔も緩んじゃうのよね。
まるで、ロベリアちゃんの領域に包み込まれるような感覚に……。
「お、俺様は、何て言うか……守ってあげたいと、俺様の心を擽る異国の姫のようなリリーちゃんが好きなんだ!」
ルビナス君、言い切ったけれど顔や耳だけでなく服から出ている肌が全て真っ赤。
「ふうーん。ルビナス君はー、小動物みたいな子が好きなのねー」
ロベリアちゃんが、追い打ちをかけるようにルビナス君に言うから黙り込んで益々真っ赤になって恥ずかしさで俯いたじゃないの。
「――――」
こういう時のロベリアちゃんて、ホント小悪魔全快ね。
「で……カトレアちゃーん?」
そんな可愛い表情で、聞いてきたりするから勘違いする冒険者もいるのよ。
貴女、冒険者ギルドの受けなんだから少しは考えなさいよね。
「はいはい、その子はエレモフィラ君ね」
「エヘヘー。じゃー、君もどうぞー」
やっぱりロベリアちゃん、自身で名前言わないし……。
「俺は、年上なのに可愛らしさと女性らしさを兼ね備えた麗しのリリーちゃんが好きなのさ。ふっ!」
「アハハー。女性らしさはー、私やーカトレアちゃんもー持っているわよー?」
気障なエレモフィラ君が、ロベリアちゃんにたじろいでいるわ。
まあでも、エレモフィラ君はシルちゃんのお陰で、自身より少し年上の女の子が好きなのが分かっているから私達は対象外なんだけれどね。
でも、ロベリアちゃんが胸を寄せて見せているからエレモフィラ君が顔を真っ赤にして俯いちゃったわ。
「――――」
ロベリアちゃん、ちょっと小悪魔になりすぎ。
「でー、この子はー私やーカトレアちゃんもー見ているわよー?」
そう。この子は他の子よりも、かなりませているのよね。
ロベリアちゃんにも注意するように、ちゃんと名前を言っておかないとね。
「その子は、ませているバレリアン君よ」
しまった。口が滑ってませているって本音が出ちゃったわ。
「カトレア先生、僕の説明だけ悪意を感じます」
そうだったわ。この子、これ位言われても平気なのよね。
それに、女性と話す時は必ず胸やお尻やスカートの中……
「だって、貴方は私が隙を見せると覗いてくるでしょ? ほら、今も」
私が今日は短めなハイウエストのフレアスカートを穿いているからって見すぎよ。
でも残念、インナーパンツ穿いてるもん。
「それは、カトレア先生がエロ……」
「何ですって?」
「何でもありません」
ロベリアちゃんが、助け船を出すようにバレリアン君の方を向いたわ。
「でー、君はーどう思っているのー?」
「僕は、麗しき女性は隈無く大好きです! ですが、リリーちゃんは特別です。ムフフ!」
「あはー、お姉さんのが気になるのー?」
ほら、言わんこっちゃないわよ。
バレリアン君が、ロベリアちゃんの胸元見ているわ。
「ロベリアちゃん、バレリアン君に見せつけない!」
バレリアン君に、わざと見せつけても喜ぶだけよ?
「エヘヘー」
ロベリアちゃんの恋愛話好きに付き合っていたら、アザレアちゃんとブルメリアちゃんが補助魔法をかけ終わったようね。
そして、ブルメリアちゃんが土竜を呼び出しに行ったわ。
ザッザッザッ!
呼び出した土竜は、自身の得意とする領域である地面に潜った。
ここからの行動を、アザレアちゃんとブルメリアちゃんがどうするかよね。
ゴォォォォォォ!
ふうーん。成る程、成る程。
ブルメリアちゃんが、可愛いお耳を動かして探知しようとしているわ。
つまり、前衛と斥候を兼ねている訳ね。
「アザレアちゃん、行きますね」
「ブルメリアちゃん、いつでも良いよ」
そうそう。声かけは大事よ。
ブルメリアちゃんが、片手戦斧を両手で持ったわ。
「【アース クエイク!】」
えっ? なにこの技? リカステも、驚いているわ。
年端も行かぬ子が魔法を織り交ぜているとはいえ、リカステより大技を放ったのですもの。
ドッガァァァガァァァガァァァガァァァガァァァドゴォー!
ブルメリアちゃん、考えたわね。
隆起させた地面で、土竜を無防備な空中に放りだしたわ。
あんな土魔法も合わせた技なんて、魔法が得意ではない子には思いつかない方法ね。
ジィージィージィー!
ギュイギュイギュイ!
「いっけー【コメット バスター!】」
嘘でしょ? 既に、必殺系の弓の技をアザレアちゃんは習得しているというの?
私でさえ必殺の剣技を習得するのにどれだけ時間がかかったと思うの?
シュイィィィィィィ!
ギュイィ!
あんな技を食らえば、土竜も簡単に倒されるのは当たり前よ。
こんな技見せられたら、男の子達は……まあ、そうなるわよね。
開いた口が、塞がらない……まさに、この場面に相応しいわね。
代表メンバー……本戦の前に決まっちゃったかも?
「カトレア、明日の選抜試験について話し合う必要があるな」
「そうよね? 明日、選抜試験の本戦なのにどうしようかしら?」
私とリカステが話をしていると、監視モニター室にある小さな拡声器の機械に緑色の光りが点滅し音が鳴った。
私はその緑色の光りが点滅している隣にあるスイッチをいれる。
『カトレア校長先生、南西にあるウインドウォーター王国より交流試合の件で書類を持ってこられた先生がいらっしゃるのですが』
あっ! すっかり忘れていたわ。
交流試合の会場になるウインドウォーター王国の先生が書類を届けに来るって言っていたわね。
でも、態々来なくても冒険者ギルドに依頼すれば良いのに……どうせ、偵察に来たのでしょうね。
前任の校長先生の時まで、うちの学校はいつも負けっぱなし。
でも、ずっと負け続けているうちの冒険者学校に何しに来たのかしら?
『えっと、悪いけれど闘技場の監視モニター室にお願いできるかしら?』
『はい、承りました』
受け付けに応対していると、リリーちゃんから合図があった。
何かしら?
合図しなくても、話してくれたら中の音が聞こえているから通じるのに?
私は闘技場の中に話しかけられる拡声器のスイッチを入れた。
「リリーちゃん、何かな?」
「カトレア先生、シルちゃんを闘技場のシステムと繋げて下さい」
ああ、そういう事ね。でも、どうしたら良いのかしら?
「リリーちゃん、どうしたら良いの?」
「シルちゃん、リンクスタートとマイクに言った後に解錠キーを言うのですが、今はカトレア先生が現在作成されている物を伝えると解錠されますので小声で良いのでマイクに話しかけて下さい」
私が、作成している物?
今作成している物って、十五歳の姿になったリリーちゃんに着させる服だけれど……。
これって、恐らくユグちゃんが私の心情を読んで勝手に解錠キーにした物よね?
小声だから良いけれど、大きな声で言ったらリカステにバレるじゃない。
「リカステ、私から離れなさい」
「カトレア、秘密を知られたくないからって滅茶苦茶だな? 蹴らなくても、良いだろ? まあ、いいけどよー」
私は出来るだけマイクに近づいた。
そして『小声』で
『シルちゃん、リンクスタート! えっと、リリーちゃんの為に作っているピンクのワンピース』
「エヘヘー。カトレアちゃん、そうなんだー」
うわー……ロベリアちゃんに聞かれた。
っていうか、ロベリアちゃん顔寄せすぎ。
「カトレア先生、こんにちは。ドラシルシステムです」
よし、取りあえずシルちゃんが起動したわ。
でも、私操作方法まだ知らないのよね。
「リリーちゃん、この後はどうするの?」
「闘技場内の能力制限にリンク。90%身体能力及びスキル能力減少でお願いします」
「えっ? 能力制限90%? そんなに減らして、身体に影響は無いの? 本当に大丈夫なの?」
「はい。この90%というのは、身体的に問題ないようシルちゃんが設定してくれるので問題になる身体能力以下にはならない仕様なのです」
それなら良いけれど……っていうか、この闘技場一体どうなっているの?
リリーちゃんが、
「闘技場で龍種が数十体暴れても平気です」
とは言っていたけれど……信じられないわ。
「リリーちゃん……一応、設定変更したわよ。本当に、大丈夫なのね?」
「はい。カトレア先生、ありがとうございます」
私がシルちゃんに言って、闘技場内にいる全てに能力減少させると急にブルメリアちゃんが片手戦斧を両手で持った。
「えっ? 急に片手戦斧が、重くなりました。アザレアちゃんは大丈夫ですか?」
アザレアちゃんも、能力低下を感じているみたいね。
「ブルメリアちゃん、私も弓が重くなって魔法力まで低下したわ」
スミレちゃんは……平気な顔しているわよね?
もしかして、アザレアちゃんとブルメリアちゃんだけ減少効果が発揮しちゃったのかな?
「そう言えば、スミレもいつもより重いかも? リリーちゃん、これで私本気でアザレアちゃんとブルメリアちゃんと戦っても良いの?」
リリーちゃんも、平気な顔しているわ。
「うん、そのはずだよ。でも、試しに三人とも私に剣技や魔法を放ってみて?」
コンコン
ノックがしたので、返事をすると受付の人に連れられてウインドウォーター王国の先生が書類を持って入ってきた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「リリー、また何か作っているの?」
リリー「うん。今度はね、キノットさんのホテルで給仕してくれる事になった
人達の執事服とメイド服よ」
シルク「確か宰相さんの計らいで、王城に執事やメイドとして働く由緒正しい
家柄の新人さんが、城で働く前にホテルで給仕の研修をするのよね?」
リリー「うん。だから、私からせめてもの贈り物として汚れてもボタン一つで
綺麗に元通りになる執事服やメイド服を送ろうと思ってるの」
シルク「それ、もう城から支給される服着られなくなるわよ」
リリー「そうかな?」
リリーが言う、最低限の贈り物の基準がよく分からないシルクであった。




