選抜試験の前日4 【リリーSIDE2】
男子三人組がやっと土竜を呼び出しに行ってくれて、ホッとした。
日に日に、三人組の俺に対する恋する男子の行動が激しくなってきた気がする。
俺、中身はおっさんだよって言えないし、それに外見は完全な少女や幼女なんだよね。
男子三人組曰く、十五歳の容姿の時は守ってあげたいと思えるような低身長美少女なんだって。
確かに全体像で確認するとそうなんだけれど、普通に小さいから不便な事が多いのだ。
学校がお休みで、朝からキノットさんのカフェバー&レストランで給仕のお手伝いをしている時の事である。
「リリーちゃん、百十五番テーブルのお客様の所に小皿を持って行ってくれるかな? 小さなお子さんに、フワフワモコモコスペシャルパンケーキを取り分けるみたいなんだ。良いかな?」
「はーい」
取りに来たのは良いものの、いつもは踏み台が置いてある筈なのだが置いていない。
もしかして、また葵?
葵も大きくなったり小さくなったり出来るのだが、同年齢であっても基本的に俺より背が高い。
なので、少し大きくなれば届くのだが大きくなると一瞬だけ装いがきつくなる。
それが嫌なようで、よく踏み台をどこかに持っていくのだ。
持っていくのは良いのだが、定位置に戻さないので踏み台を探しに行かなくてはならなくなる。
なので、仕方なく背伸びをするのだが高い位置にある食器が届かない。
誰かが近くにいる時は取って貰えるのだが、スノーとクレマチスちゃんはユグちゃんを引き連れて只今城にデザートを配達中だ。
ライムお姉さんとレモンちゃんも今は大忙しで、レモンちゃんは密かにウンディーネを呼び出して厨房の手伝いをしてもらっている。
ウンディーネの眷属精霊達は、ユグドラシルと葵からあまりにも目立ちすぎるから駄目と指摘されているので、レモンちゃんはウンディーネと必死に厨房の中のお手伝いをしている。
まあ、厨房の中だと目立たないからね。
シルクとアイビーも、只今注文係で必死に走り回っている。
葵も今は、食材倉庫に行っているようだ。
恐らく、また何か良からぬ事を考えているのだろう。
この前は
「キノット様に新作デザートの試食を頼まれて、試食させて頂いていると私のお鼻と顔にクリームが付いてしまいましたの。リリー様、拭いて頂けるかしら?」
とか言って俺が葵の顔に近づくと頬にキスをしてきたり、ある時は、
「倉庫で作業していたら顔に粉が付いてしまいましたの。リリー様、取って頂けるかしら」
とか言って、またキスをされるかもしれないので顔を離して粉を拭き取っていると二つの膨らみを触ってきたりと……。本当に困った、悪戯幼狐なのだ。
また何か企んでいる恐れがある葵には頼めないので、倉庫に行かず自信で対処することにした。
自身で対処する場合は、戦闘モードになりジャンプをすれば良い。
兎に角お客様を待たせる訳にはいかないので、戦闘モードになり軽くジャンプをして落とさないように両手で小皿に優しく触れて素早く取る。
優しく持たないと、小皿が割れてしまうからだ。
そう、この行動からお分かりになる方もいらっしゃるだろうが両手が塞がりスカートが降りるときに捲れ上がるのだ。
そして
「「「「「おおー!」」」」」
いつもの三人組に加えて、冒険者学校の思春期真っ盛り男子の声が上がる。
と、こんな感じで不便な事が多いのだ。
でもまあ、大温泉は十歳以上の年齢になると足がつくので足がつかなかった五歳の時より、ライムお姉さんとレモンちゃんが遊びに来る時は、湯船で転覆しにくくなり良いのだけれどね。
まあ、油断をすると転覆するのはご愛嬌だと思っている。
しかも、十五歳の容姿はエレモフィラ君曰く少し年上の可愛いい美少女に思えるらしいのだ。
こんなに低身長なのに、どこを見て年上に感じているかは敢えて聞かなかったが十中八九二つの膨らみだろう。
全体的に低身長なので、妹が欲しいと言っていたアザレアちゃんの希望で十歳と十二歳の容姿になっている日もある。
アザレアちゃんも、どこを見て十歳と十二歳の俺を妹と感じているかは聞かなかったけれどね。
けれど、三人組はその時も恋する男子の行動をしてくるので少し参っているのだ。
五歳の容姿の時はカトレア先生も参戦してくるし、ホントやれやれだよ。
俺が少し沈んだ顔をしていると、右隣に腰掛けているブルメリアちゃんが小首を傾げて心配してくる。
「リリーちゃん、大丈夫ですか? ブルメリアの耳を触って、落ち着かれますか?」
ブルメリアちゃんは普段は凜としているが、俺の側に来ると年相応の優しく可愛らしいケモミミ美少女に変わる。
闘技場で訓練する時、汚れても良い服に着替えるのだがブルメリアちゃんもスノーと同様ケモミミと尻尾以外は至って普通の人族と変わらない肌をしている。
俺からすると、クマさんの耳と尻尾を付けた筋肉が全く付いていない美少女コスプレイヤーにしか見えないのだけれど、耳と尻尾が頗るほど気持ちが良いのだ。
今も少し頬を染めて、俺が凄く気に入っているブルメリアちゃんの耳をこちらに向けてくれている。
一度尻尾を触らせてもらったが、尻尾は凄く恥ずかしいらしい。
まあ、当然だよね。女の子同士でも、お尻を触らせていると同意だから恥ずかしいのだ。
いや、お前おっさんだろって突っ込まれそうだけれどね。
それに、頼みますからおっさんのセクハラだろとも言わないで下さい。お願いします。
「ふにゃー。フワモフしていて、癒やされます。ブルメリアちゃん、ありがとう」
ブレメリアちゃんとキャッキャ言って、自身のケモミミも一緒に触りあっていると、アザレアちゃんが少し嫉妬する。
「ブルメリアちゃん? 貴女の国の殿下が今から土竜と戦うんですよ。前を、見て下さい。リリーちゃんは、私がお世話するので」
「アザレアちゃんも、心配してくれてありがと」
そうして、和やかな女の子達二人の雰囲気に包まれていると『個人使徒テレパシー』がスミレちゃんから来る。
『「リリーちゃん、スミレもそちらに行って良いでしょうか?」』
『「えっ? でも、男の子達に何か有ったら助けないと危ないでしょ?」』
『「でも、リリーちゃん言っていたじゃないですか? 甚大な負傷をしても、ボタン一つで元通りになる機能を追加したから自由に戦えるよって」』
『「そうなんだけれど、負傷したら普通に痛いよ? しかも、今の設定だと大人の人でも泣いちゃうくらい」』
『「あの三人組は、それで良いのです」』
スミレちゃんの三人組に対する日頃の苛立ちと、ブルメリアちゃんとアザレアちゃん達に対する嫉妬心が少し怖い。
『「あは、はは」』
そう言って、俺は男子三人組の様子を窺った。
「俺様が、前衛を担当する」
「俺が、中衛で司令塔及び魔法攻撃を担当するよ。ふふっ!」
「僕が、斥候を担当して隙があれば後ろから攻撃を入れるよ」
そして、男子三人組は無難な戦いをして土竜を倒した。
男子三人組は、兎に角奇抜な戦い方をせず、騎士達が連携するように戦う。
俺とスミレちゃんが教えた事で、もっと奇抜な大技も放てる筈なのだが必要最低限の攻撃で魔物を倒すのだ。
そして、倒すといつものように俺の元に来て激しく恋する男子の行動が始まったが、土竜との戦う準備をしていたブルメリアちゃんとアザレアちゃんが来てスミレちゃんと一緒に三人組の男子達を闘技場の外にほうり出した。
いやー、同年代なのに女の子って本当に強いよね。
そしてスミレちゃんが、監視モニター室にいるカトレア先生達に
「カトレア先生、そちらに男子三人組行かせましたのでお願いします」
と言うとカトレア先生は、スミレちゃんに手で丸を作って了解していた。
次は、ブルメリアちゃんとアザレアちゃんの番だ。
アザレアちゃんは、自身の持参している鉄の弓に補助魔法をかけだした。
「【ヒーローズ ボウ ブレッシング】」
そう、この補助魔法は弓に英雄の加護を宿らせることが出来るんだよね。
アザレアちゃんはこの補助魔法を覚えたことで、弓の能力を数十分間劇的に向上させ近接される前に魔物を葬り去ることが出来るようになった。
「【シックス エレメンタル】」
成る程、鏃に六属性の補助魔法を付加させた事で四属性に耐性があろうと耐性が無い光りと闇で攻撃力を増す作戦ね。
まあ土竜は強い光は苦手では有るのだけれど、光属性が弱点とは限らないと思うのだけれどね?
それに、闇属性もどうなんだろう?
資料には無いけれど、隠れ耐性が有りそうだ。
だけれど、英雄の加護でごり押しできそうな気がする。
「【ホーミング エクスプロージョン パワー】」
あらら、更に矢羽根に自動追尾の能力が加わった爆進する補助魔法を付加させたよ。
これで、異常とも言える貫通力が加わったね。
「【ディバイディッド イントゥ ハンドレッズ パワー】」
うわー……アザレアちゃん? 君は、何体の土竜を倒そうとしているのかな?
この魔法は、普通魔物の大軍に使うんだよ?
一本の矢が数百本に分裂するのに、一体の魔物が正面から食らうと何も残らないんじゃ無いかな?
これらの補助魔法を弓と矢全てにかけたことで、アザレアちゃんの本気度が分かった。
複数の魔物では無く、単体の土竜に対してこのような過剰ともいえる補助魔法をかけたら土竜の大きな体躯でさえ大きな風穴を開けることが出来る。
つまり、一撃で土竜を葬り去るつもりなのだろう。
「ブルメリアちゃん、私は準備できました」
「アザレアちゃん、了解です。私も少しだけ」
ブルメリアちゃんは、何の補助魔法をかけるのかな?
「【ブレイブ ウォリアーズ スピリッツ パワー】」
ブルメリアちゃんは、いきなり勇敢な戦士達の魂を複数宿して一気に身体能力を強化したよ。
そんなに身体能力を上げて、どうするつもりなの? っていうか、少しだけってさっき言っていたよね?
確かにアザレアちゃんも、豪華すぎる補助魔法が勢揃いしていたけれどブルメリアちゃんも今の一つで一気に能力が激増しているよ?
男子三人組と違って、女子二人組は超ど派手な攻撃を土竜にするつもりなのね。
……いや、俺が二人に教えちゃったんだけれどね。
まさか、スミレちゃんと訓練していて全てを覚えるとは思わなかったよ。
アザレアちゃんとブルメリアちゃんは、まだまだ補助魔法や様々な魔法を覚えたけれど土竜相手に過剰だよ?
恐らく、次に控えているスミレちゃんに対して本気を出して欲しいと願って挑発しているのかも知れないけれど……。
そう勘考していると、ブルメリアちゃんが土竜を呼び出した。
ザッザッザッ!
呼び出した土竜は、直ぐに地面に潜った。
ゴォォォォォォ!
そして、ブルメリアちゃんが耳を澄ます様に眼を瞑ると
「アザレアちゃん、行きますね」
と、そう言った。
そしてアザレアちゃんがその言葉に応じ
「ブルメリアちゃん、いつでも良いよ」
と言って、弓を引く。
次の瞬間、ブルメリアちゃんが片手戦斧を両手で持ったと思うと
「【アース クエイク!】」
その言葉を発し、地面に振り下ろした。
ドッガァァァガァァァガァァァガァァァガァァァドゴォー!
すると、隆起した地面が前方に向かっていき土竜を隆起した地面ごと空中に放りだした。
ジィージィージィー!
何が起こったのか分からない土竜は、藻掻くように空中で穴を掘ろうとしている。
ギュイギュイギュイ!
「いっけー【コメット バスター!】」
その瞬間を狙ったアザレアちゃんの弓から、数百の矢が固まりとなって放たれた。
シュイィィィィィィ!
ギュイィ!
一瞬、土竜の断末魔の鳴き声が聞こえたと思うと土竜は光りとなって消え去った。
まあ、そうなるよね。
ちょっと、土竜が可愛そうに思えた位の過剰攻撃だったからね。
監視モニター室を見ると、開いた口が塞がらない男子三人組が見えた。
アザレアちゃんとブルメリアちゃんは、飛び跳ねて喜びを表現した後二人で抱き合った。
そして、俺の元に走ってくると
「リリーちゃん、見てくれましたか? ブルメリアのアースクエイクで土竜を飛び出させた技」
「うん、ブルメリアちゃん格好良かったよ」
ブルメリアちゃんはこの他にも、火・水・風・土属性魔法と片手戦斧系の技を組み合わせた絶技が扱える。
今回は土竜に耐性がある属性であった為、土竜に与えたダメージは弱点属性がある魔物に比べると少なかった。
しかし、土竜の一番厄介な能力を初手から無に帰した事が一番の貢献者といって良いだろう。
それにブルメリアちゃんは、念入りに準備をしていたアザレアちゃんの事を考えてこの絶技を選んだようだ。
恐らく【ミーティア マルチプル リング クレーター】という絶技を放てば、土竜は地面の中に潜んでいる状態で倒せていただろう。
「リリーちゃん、私のコメットバスターも如何でした? 輝いていたでしょ?」
「うん、アザレアちゃんの弓の技も綺麗だったよ」
アザレアちゃんは今回、補助魔法を主にして弓と矢にかけていたが普通の六属性魔法も得意だ。
恐らく【コンデンスド ドロップス ホーミング エクスプロージョン】を初手で土竜が潜った穴に放てば、滴のように小さく圧縮された爆裂の炎が自身が創り出した穴で行き場を失い、いかに耐性があれど燃やし尽くされるだろう。
他にも色々とあるのだが、アザレアちゃんもブルメリアちゃんの絶技の後に自身でも弓の絶技を放った。
ということは、男子三人組に何度も三人で倒してねと言っていた事で俺の思いに気がつきアザレアちゃん達も連携して倒したのだろう。
でも次は、アザレアちゃんが待ち侘びていたスミレちゃんとの模範試合だ。
今回ばかりは、この闘技場の機能をフルに稼働させないと危ないかもしれない。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「リリーとレモンちゃん? 何で、二人して大浴場でお尻をフリフリ
させているのよ?」
レモン「シルクちゃん、ディーネちゃんの回復の踊りだよ」
リリー「今、レモンちゃんに教えてもらっているのだけれど、シルクも
してみる? 良いダイエットにもなるよ」
シルク「ギクッ! べ、別に私アイビーから何も言われてないわよ」
アイビー『僕、今朝シルクに重くなったから飛ぶように言ったよね?」
シルク「何で、アイビーがいるのよ!」
リリー「レモンちゃんに踊りを、私とアイビーが教わっていたから?」
シルク「そもそも、アイビー踊れないでしょ!」
レモン「アイビーちゃんも上手に踊っているよ」
リリー&レモン「「ねー!」」
器用に踊るアイビーの姿に、眼をパチクリさせるシルクであった。




