↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/240

選抜試験の前日3 【カトレアSIDE2】

 この土竜は、頭胴長の円筒形で体躯は約5mあり堅い地盤を簡単に掘り進める事ができる鋭い爪を有し強力な攻撃を仕掛けてくる。

 だからと言って、その強力な攻撃である爪を並の盾や武器で防ごうものならば、盾や武器ごと破壊されるわ。

 なので、通常正面からの攻撃は避けた方が良いと言われている。

 でも、土竜は地面を縦横無尽に動き回るので顔を出す所の予想が付きにくい。

 眼が退化しているけれど、その代わり嗅覚と聴覚が鋭いので私達の場所を把握する能力も高い。

 元々、水、土、風魔法に耐性があり、体毛はそれほど長くはないけれど湿気を含んでいるので魔獣系の多くの弱点である火にも耐性がある。

 強烈な光りには弱く、地表に出たときに強烈な光りを浴びせれば暫く動けなくなる。

 しかし、傷を負わせると直ぐに地面の中に逃げるので討伐にはかなり時間を要し、地面の中に入ると土竜の回復力が上がり傷が治るので厄介な魔獣なの。

 それだけではなく、土竜が掘り進んだ所がいつ地盤陥没を起こすか不明なので、唯一土竜の速攻を防げる重装備や盾を着ている者でさえも迂闊に土竜の生息地域で動き回る事ができなくなりじり貧になるわ。


 だから頑丈で重い装備や盾を持った近接戦闘が得意な冒険者も、この土竜を相手にする時は軽装備にして対峙するしかないわけ。

 脅威的に言えばC級の魔物だけれど、その厄介な能力を有しているからB級の魔物に指定されているの。

 私達はCランク冒険者からBランク冒険者の試験を受け合格し、まだ若いのにもうBランク冒険者ななったわと彼女に褒められ、真に受けた大盾持ちのパーティーリーダーがこの魔物の討伐依頼を受けた。

 私とリカステは、岩盤地帯に生息する魔物の討伐だとリーダーに聞かされていたので、以前も倒したロックゴーレムだと思っていたの。

 でも、来てみたら討伐対象は普通岩盤には生息しない筈の土竜だった。

 メンバーは、前衛が重装備の大盾持ちとリカステ、斥候として私、後衛として薬草学の知識を持つ弓持ちという一般的なパーティーだったわ。

 けれど、情報不足だった事もあって土竜と対峙でかなり時間を費やし、重装備のリーダーが地盤陥没に巻き込まれた。

 私とリカステが囮となり、土竜を引き連れてその場から離れ彼女である弓持ちが助けていた。

 けれど、土竜は番(ツガ)いでもう一体いたの。

 そして、リーダーと弓持ちは酷い怪我を負って冒険者を引退。

 私とリカステは囮として逃げている最中に、運良くフロックス君とロベリアちゃんのパーティーに助けられたという訳なの。


 そうだ、ここまで話をしたのだから私の疾風迅雷の固有能力の秘密を言っておかないとね。

 実は、この南の大陸に住む9割以上は純粋な人族ではないの。

 そういう私も実は、韋駄天と人とのハーフなの。

 だから、疾風迅雷という特殊な固有能力がある訳。

 リカステはドワーフと人とのハーフよ。

 で、ロベリアちゃんは対象相手を劇的に遅くさせダーメージを与える特殊な能力を有する種族特有のおっとりしたスロワー族。

 でも、私とロベリアちゃんは容姿を受け継がず能力を受け継いだハーフという訳。

 だから、見た目は人族と同じなの。

 少し変わっているけれど、リカステは背の高さは高いのだけれど強面の顔だけドワーフ似で能力としては豪腕を受け継ぎ、人族の様に少し魔法が使える訳。

 人によっては、容姿を受け継いでも能力を受け継がなかった人もいるわ。

 東、西、北、そして中央にある大陸は、9割以上が人族なの。

 そこが、この大陸と他の大陸との大きな違いよ。

 私とリカステ、それにロベリアちゃんとフロックス君のお話はこれで終了。


 そんなことより、男の子三人組と土竜との戦いが始まっちゃう。

 なので、装置を切り替えてこれでよし。

 この監視モニター室は、闘技場で戦っている者の様子や、指示した言葉、掛け合っている言葉も同時に分かるようになっている便利な機能が付いているの。

 だから、先ほどまでは何も聞こえてこなかった会話も、装置で中の様子が分かるように切り替えればこの監視モニター室にいても聞こえてくるという訳なの。

 他にもまだまだ機能が有るようだけれど、覚え切れていないから今度リリーちゃんに教わらないといけないわね。

 土竜を呼び出した後、土竜が地面に入り穴を掘って今移動しているわね。

 さて、男の子三人組のお手並み拝見ね。



「俺様が、前衛を担当する」

「俺が、中衛で司令塔及び魔法攻撃を担当するよ。ふふっ!」

「僕が、斥候を担当して隙があれば後ろから攻撃を入れるよ」



 この三名は、いつも堅実な戦い方をするのよね。

 正攻法とも言うけれど。でも、息が合っているから見ていて安心できるのよね。



「うん?」



 現に今も、バレリアン君が瞬時に土竜が出てくる位置を特定した。



「この音から判断して、ルビナス君そこに来るよ」



 バレリアン君は、眼も耳も鼻も鋭く私のように斥候向きなのよね。

 しかも、男子三人組の中で一番小柄なので動きが素早い。

 そして、風の魔法をリリーちゃんの指導によって開花させた。

 ……今思うと、リリーちゃんのあれ(・・)って指導なのかしら? 

 私もそうだったのだけれど、リリーちゃんの言葉(・・)が頭の中に聞こえてきたかと思うと、実際にそのスキルを習得する経験を今しがた体験したかのように自身の身体(カラダ)に刻まれるのよね。

 実は剣技もリリーちゃんから、その方法で教えてもらったけれど……神髄に触れたかのような経験や体験がどっと押し寄せたかと思うと新たなスキルを習得出来た。

 相手の弱点を瞬時に見極め、早さの神髄を究めた神速の突き。

 ただ私達と違ってバレリアン君は、その早さの利点を変な事に使うのよね。

 女の子達に、ちょっとしたエッチな悪戯をするの。

 そして、素早くルビナス君とエレモフィラ君の後ろに隠れる。

 でも、女の子達は分かっているので結局バレリアン君が引っ叩かれるという訳。

 バレリアン君の変な話をするより、監視モニターの魔物の位置を示す印を見ないとね。

 確かに、魔物の位置を示す印がルビナス君の足下に向かって来ているわ。



「俺様の前に出てくるとは、良い度胸だ」



 ルビナス君は見た目通り、力とバネが有るけれどしなやかさも有るのよね。

 魔法は結局初級の地属性魔法しか覚えられなかったけれど、獣王の息吹という地属性魔法と技を掛け合わせた身体強化を覚えたのよね。

 獣王の息吹は自身の身体を鋼のように強固にして身を守り、同時に力と瞬発力と素早さそれに体力や回復力も上げるのよね。

 本当に、強力な身体強化だと思う。

 ただ、それを使うと息切れを起こしちゃうし時間制限があるのよね。

 だから、使い所はここぞと言うときが良いかもね。

 バレリアン君に教えられて、ルビナス君は身構えているようだけれど、でも少し近づきすぎよ? 

 そこだと、真下から土竜が出てきて吹き飛ばされるわ。

 土竜と近接する場合は、相手の間合いの外から攻撃するか背後からの攻撃が有効なのよ? 



「ルビナス君、五歩後ろに! ふふっ!」



 エレモフィラ君は気障な所があって、格好つける癖が有るけれど剣技も魔法もどちらも得意になったわ。

 二人のように突出している所は無いけれど、頭脳を使って魔法を操るわ。

 剣も最近は、自身で扱いやすい片手剣を使うようになったしね。

 まあ、入学試験の時は格好付けようとして大きな両手剣を持ったのだろうけれど。

 うんうん。エレモフィラ君、分かっているわね。

 それだけ離れれば、土竜の地面からの速攻攻撃の範囲外に出られるわ。

 その速攻攻撃で、倒されてしまう冒険者が多いですもの。

 流石司令塔を、自身でかってでただけあるわ。



「ああ、分かった」



 その指示に瞬時に対応するルビナス君も、エレモフィラ君の事を信用しているのがよく分かる。

 土竜の速攻攻撃の瞬間を狙って、ルビナス君が逆に仕掛けるのね。



 ゴォォォォォォ! ボゴォ! ジィジィ



「ウラー!」



 出てきて土竜の速攻攻撃が空振りした所を、ルビナス君の大戦斧が土竜を切りつける。



 ザシュ! 


 ガキィーン! ジィジィ! 



 しかし、寸前の所もう片方の大きな爪で大戦斧の攻撃を防いだ。



「ファイアーアロー! ふっ!」



 そう思ったら、エレモフィラ君の炎の矢が土竜を襲う。

 しかし、湿気を含んだ毛が炎の矢を弾いたわ。

 その瞬間を見計らった様に、いつの間にか土竜の背後に来ていたバレリアン君が二刀の短剣で切りつけた。



 ジィィィィ! ゴォォォォォォ! 



 短剣なので、傷は浅かったけれど土竜はたまらず地面に身を隠したわ。

 今のは良い連携攻撃だったけれど、土竜にはそれでは通用しないわよ? 

 私達も、地面の中を自由に移動し傷を与えると直ぐに逃げ回復する土竜に手を焼いたわ。

 今度は、どうするのかしら? バレリアン君が、地面に手を置いているわね。

 何を、しているのかしら? 成る程ね、設置型魔法か。

 バレリアン君、斥候だけあって罠を仕掛けるの特異ですものね。

 ルビナス君が、バレリアン君の指示で設置した魔法陣を避けてゆっくり歩いている。

 土竜を、誘導する作戦ね。

 土竜は聴力が鋭敏なので、歩いている相手がどこにいるか分かる。

 そして、ルビナス君が足を止めたと思うと



「ウラ、ウラ、ウラー! 出てこいやー!」



 大声で、捲し立てた。

 その瞬間、エレモフィラ君が指でルビナス君に指示を出した。

 成る程ね。



 ゴォォォォォォ! ボゴォ! ジィジィ! 



 刹那、土竜がルビナス君目掛けて顔を出したわ。



 ザシュ! 


 シュッ! 



 でも、ルビナス君の指示通り上手く避けた。

 そして、バレリアン君が



「ルビナス君、耳を塞いで!」



 土竜の背後から数歩離れた位置にいるルビナス君が、バレリアン君の指示に従う。



「――――!」



 ルビナス君が指示通りの行動を見るやいなや



「今だ! 弾けて音をまき散らせ! バブルウインドー!」



 パーン!! 



 刹那、バレリアン君の設置型の魔法を発動し弾ける様な強烈な破裂音がした。

 その破裂音で、土竜の動きが明らかに落ちて動きが止まっているわ。

 近くで爆発に遭遇した場合、対処法が有るけれど今回は大きな音だけだった。

 圧縮した風の魔法や衝撃は、上方に避けさせたのね。

 だから、耳だけを塞いだ訳ね。

 衝撃が拡散する爆裂魔法で有名な対処法は、口を少しだけ開ける。

 でも、開けすぎては駄目。

 人は頭が重いので、衝撃で頭を仰け反らないようにする。

 その為に、手を祈るような形にして後頭部で組む。

 同時に、両前腕部分で両耳を塞ぎ双眸を閉じる。

 そして、大事な内蔵を守るように身体を丸くする。

 だけど、これは本当に逃げようが無い時の緊急時の対処法だから、逃げられるようなら逃げる事をお勧めするわ。



 ジィジィ! ギュイ……



 強烈な破裂音で、土竜の聴覚が麻痺、若しくは鼓膜がやられたかのどちらかね。



「ファイヤーアロー! 六連 ふっ! 行くがいい」



 それを見た瞬間、少し気障な言葉遣いでエレモフィラ君が先ほど土竜に放った場所と同一部位の鼻に連続して炎の矢を放った。



 ギュイギュイィィィ! 



 よく監視モニターで確認すると、毛が一番少なく湿気を沢山含んでいた筈の鼻の周り毛が完全に乾燥し炎の矢を受けた土竜の鼻が燃えだしたわ。

 成る程、火が効きにくい魔物でも同じ部位に集中的に攻撃を食らい続けると効果が有るという訳ね。

 完全耐性がある魔物ではなく、耐性がある魔物に対しての同一部位への攻撃で耐性破壊をした良い例ね。

 土竜が、たまらず地面に潜ろうとした瞬間、



「ウラー! これでお終いよ!」



 ギュイィィィィィィー! 



 そう言って、ルビナス君の大戦斧が土竜の背中を切り裂き土竜は光りとなって消えた。

 流石獣人だけあって、軽やかな足さばきなのに力が男の子の中で飛び抜けているわね。

 成る程、破裂音で聴覚を遮断、炎で鼻を燃やし嗅覚を遮断し土竜の場所を把握する能力を低下させ、ルビナス君が背後から攻撃力がある大戦斧で止めを刺す。

 普通と言えば普通だったけれど、パーティーとしては連携の取れた良い戦い方だったわね。

 でも、明らかに他のクラスの子達よりは優秀ね。

 それに、自身の役割を分かっているわ。

 この分だと、男子三人組の中から代表メンバーが決まるかも知れないわね。

 ……私今、口に出して褒めなかったわよね? 

 リカステとロベリアちゃんの前で、男の子達を褒めなくて良かった……。

 前からそうだったけれど、この子達は魔物との戦闘訓練が終わる度にリリーちゃんに言い寄っているのよ。

 今も監視モニターの拡声器越しに聞こえてくるけれど、私達が監視モニター室にいるの忘れているのかしら? 



「どうだい? 俺様の実力は! リリー姫も惚れ直しただろ?」



 ルビナス君、またリリーちゃんに筋肉を自慢しているわ。

 筋肉好きには良いかもしれないけれど、普通の女の子だったらひくわよ? 

 そんなの、見せつけられたら……。



「えっと、ルビナス君のモフフサの鬣は格好いいです」



 ププッ! リリーちゃん可笑しすぎ。

 ルビナス君の、鬣の方が気になるようね。

 リリーちゃん、本当にモフフサしている動物とか獣人の子が好きよね。

 ブルメリアちゃんは、そんなリリーちゃんが好きみたいで自身のお耳をよく触らせているわ。



「リリーちゃん、ルビナス君が期待するので、格好が良いとか言わないで下さい。スミレが後で困るので」



 スミレちゃん、大変よね。

 この国の王女様なのに、最近いつもリリーちゃんを守っているからリリーちゃん専属の守護騎士に見えるわ。



「スミレちゃん、ごめんね」



 リリーちゃんは、女の子として警戒意識があまりないのよね。

 私にはあるのに、何故なのかしら? 不思議だわ。



「ルビナス君? 俺に黙って、抜け駆けはいけないよ! リリー姫も困っているだろ? ほら、美しい肌に埃が……」



 リリーちゃん、エレモフィラ君に近づいたらダメよ。



「エレモフィラ君、ありがとう。私、埃付いていましたか?」



 ほら、そうやって肌を見せようとするからエレモフィラ君とバレリアン君が見ているでしょ? 



「リリーちゃん、それはエレモフィラ君の気障な手法ですから騙されないで下さい。スミレでも、そんなあからさまな嘘は気づきますよ!」



 そうよ。スミレちゃんの言うとおり。自身で男の子に肌見せようとするなんて考えられないわ。



「エレモフィラ君、僕の前で運命を誓い合った麗しのリリー姫に触れさせないよ!」



 また、バレリアン君の茶番が始まったわ。

 あれ、私にもするよね? 



「バレリアン君、守ってくれたのね。ありがとう」



 リリーちゃん、純粋とかもう通り超しているわよ? 



「リリーちゃん、それがバレリアン君の近づく為の手法です。はぁー、スミレ先が思いやられます」



 ええ、スミレちゃん分かるわ。私が端(ハタ)から見ていても感じる位だもの。

 あっ……次の用意していたのに、見かねてアザレアちゃんとブルメリアちゃんがリリーちゃんの元に行って、スミレちゃんと一緒に男の子三人組を闘技場から閉め出したわ。

 まあ、そうなるわよね。

 スミレちゃんが何か言ってる。



「カトレア先生、そちらに男子三人組行かせましたのでお願いします」



 私は、スミレちゃんに手で丸を作って了解した。

 リカステがいるからあの子達、怖がって私やロベリアちゃんには何もしてこないと思うしね。

 さて、次はアザレアちゃんとブルメリアちゃんの番ね。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「リリー今度は何作っているの?」

リリー「今度は男の子用の服ね」

シルク「男の子も魔法少女?」

リリー「シルク、それ一部の人しか喜ばないから」

シルク「じゃー、戦隊もの?」

リリー「普通に丈夫な服を作っていたのだけれど、それ良いかもしれないわ」

    リリーの寝言のせいで、シルクもオタク文化や厨二病に拍車がかか

    ってきたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。