生徒誘拐事件発生2
先ずは、捜索に当たっている人数を確認しないと、ワールドマップで検索をかけても意味は無い。
それにしても、この森……昨日は転移してきた魔物で、今日は行方不明者?
やはり、事件が起こりすぎている。
考えすぎかもしれないが、灯台もと暗しということわざが有るくらいだ。
もっと詳しく、調査をするべきかもしれない。
「スミレちゃん、捜索に当たっている教職員の人数は分かる?」
「えっと確か、Bランク冒険者の資格を持っているBクラスとCクラスの先生と、Cランク冒険者の資格を持っている教職員四名だったと思う。そのうち先生達はそれぞれ単独で捜索にあたり、他の教職員の方達は四名で一緒に行動した筈」
「スミレちゃん、情報ありがと。私の広範囲検索で、魔物と先生達と教職員の反応以外をワールドマップで探してみるね」
「え? リリーちゃん。そんな事まで、出来るの?」
「カトレア先生、これは幼女の特異能力です」
「リリーちゃん、私そんなの聞いたこと無いわよ?」
「そう言いながら、抱き上げようとしないでください」
カトレア先生が再び俺を抱っこしようとして手を伸ばしてきた所を、華麗に躱しワールドマップの広範囲検索で情報を確認した。
南の森の遥か奥に、二つの青く丸い光点がかなりのスピードで赤く三角の光点を避ける様に素早く動き回っている。
そして、四つの青く丸い光点がパーティーを組んでいるように固まり森の中間地点を赤く三角の光点と戦闘しつつ動き回っていた。
南の森の全体広範囲検索をかけたが、行方不明になった生徒を示す青く丸い光点の反応は何処にも無かった。
「カトレア先生、南の森の全体広範囲検索をかけましたが、捜索中の教職員達以外は、どこにも獣人の生徒達は見つかりませんでした」
「リリーちゃん、どういうことなの? 説明して」
「カトレア先生王国まで範囲を広げるので、少しお待ちください」
俺はワールドマップで、フォレストムーン王国まで広範囲検索をかけると、三つのオレンジ色の丸い光点が、五つの青く丸い光点を囲う様に配置して人より早い速度で、フォレストムーン王国の歩哨と門が存在しない北西の壁側で二つのオレンジ色の丸い光点に向っている事が分かった。
確認の為に、スノーにのみ『眷属テレパシー』を行い確認を取る。
『「ねえスノー? ワールドマップ機能の、光点の色がオレンジ色の丸い光点は何を示すの?」』
『「黄色は中立、赤色は敵を示しますぅにゃん。つまり、その間であるオレンジ色は遭遇すると必ず敵に成る事を示しますぅにゃん」』
『「じゃあ、丸の光点で表示されているという事は人であるという事なの?」』
『「はい、人種で間違いありませんぅにゃん」』
『「スノー、教えてくれてありがと」』
俺はスノーにお礼を伝え、最悪の事態が起こる前に行動すべく、カトレア先生に今分かる事を伝える。
「カトレア先生、Aクラスの先生が睨んだ通り獣人誘拐事件みたいです。生徒五人を拉致した犯人は、どうやら一旦北西の壁からフォレストムーン王国に密入国するようです」
俺はカトレア先生に犯人の人数と、北西の受け取り場所らしき所を説明した。
そして更に検索をかけると、キノットさんから聞いていた噂と重なった。
冒険者ギルド近くの大きな宿屋に、五つのオレンジ色の丸い光点と数十人が密集している青く丸い光点を……。
そして北東の壁に向かっているオレンジ色の丸い光点一つと、東北の外に二つのオレンジ色の丸い光点を見つけた。
カトレア先生に説明をしていると、Aクラスの先生が息を切らして走って来たので他の生徒達と捜索中の教職員の事を任せる事にした。
ここからは人海戦術と小数精鋭で別れるしかない。
俺は、クレマチスに『個人眷属間テレパシー』を行う。
『「クレマチスちゃん、貴女は先行して上空から不審者がいないか確認してね。そして、私が伝える不審者以外で王国の正規の門から出ていない不審者がいたら確保してね。でも、殺しちゃ駄目よ」』
『「お任せくださいリリー様。ですが、大きな龍の姿で捕まえようとするとどうしても殺めてしまいます。ですので、逃げる者は龍の威圧をかけるとイチコロです」』
それ以前に、巨大な龍が上空で現れたら王国が大混乱に陥るよ。
『「クレマチスちゃん、龍の威圧を普通の人が受けたら文字通り心臓麻痺でイチコロよ? それに、小さな龍の姿で飛んでね。見つかると大騒ぎになるから。それと、やっぱり見つけても何もせずに知らせてくれるだけで良いからね」』
『「はい……」』
力加減を神になったことで押さえられるようになったらしいが、やはり慌てん坊のクレマチスだとやりかねない……。
少し可愛そうだが、もう少し力加減を調整出来るようになってからだ。
俺は、ユグドラシルにクレマチスを慰めて一緒にいるように『心情』で伝えた。
ユグドラシルは昨日の夜、召喚解除していた時にクレマチスの良い話し相手になったそうだ。
恐らく、お風呂に入る少し前に二人は仲良くなったのだろう。
俺はAクラスの先生に、残っている生徒達と教職員達の為に食材で軽い食事を作りながらカトレア先生に説明する。
「カトレア先生、ここからは人海戦術と小数精鋭で手分けして対処するしかありません」
「リリーちゃん、私達はどうすればいいの?」
「カトレア先生は、少し目を瞑ってください」
「怖いから、リリーちゃんを抱っこしていてもいい?」
「幼女の特異能力を、黙っていてくれるなら良いですよ」
「うん、黙っているから抱っこするね」
即答……はぁー、今回は致し方ないよね。俺は、カトレア先生に抱っこされた。
まず、カトレア先生とスミレちゃんとアイビーとシルクを連れてワールドマップ機能であるテレポートを使用し王城内に移動する。
【アクティブ】
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特別スキル
・眷属・使徒・従者・信者間テレパシー
・眷属・使徒・従者・信者間テレポート
・ワールドマップテレポート
+ 全てまたは指定メンバーのテレポート
← 指定パーティーのテレポート →
自身以外の指定パティーメンバーの設定
- 第一 パーティー メンバー リスト
← カトレア →⇖
- 第二 パーティー メンバー リスト
← スミレ →⇖
- 第三 パーティー メンバー リスト
← シルク →⇖
- 第四 パーティー メンバー リスト
← アイビー →⇖
+
・ワールドマップテレポート
【自身及び指定されたメンバーを、ワールドマップに示された地点にテレポートしますか?】
【はい】⇖ 【いいえ】
俺は【はい】を選択し、ワールドマップテレポートを使用。
テレポートを使用すると、眼前に副騎士団長さんがいた。
「リリー様、それに皆様如何されました?」
「副騎士団長さん、お邪魔します」
「ああ、構わないですが少し驚きましたぞ?」
「時間が惜しいので、済みません」
「はい?」
俺は、丁度眼前にいた副騎士団長を巻き込んだ。
スミレちゃん率いる王国精鋭騎士の騎馬隊を直ぐに手配してもらい、王国の北門から北東の脱出経路を塞いでもらう。
次に、アイビーと副騎士団長率いる王国騎士団で王国内部から脱出経路と誘拐犯の一名を捕縛してもらう様に使徒眷属従者間テレパシーを駆使してアイビーと副騎士団長の部隊を誘導する。
次に、カトレア先生の肩の上にシルクを配置させ、先生とシルク率いる王国騎士団で王国内部から北西の受け渡し場所に向かってもらう事にした。
再び、スノーと葵の居る南の森の入り口に独りテレポートを使用し戻って来ると、BクラスとCクラスの先生と教職員が戻っていたので他の生徒達の事を任せる事にした。
「スノー、貴女には人型、大型、犬型、戦闘形態型の自由な形になる事が出来る許可をします。それに、私の劣化武器の使用も許可します。但し、犯人は殺さない様にして捕まえてね」
「はい、リリー様ぅにゃん」
「葵も自己の判断で人型と幼狐になれるから、判断はお任せするね。同じく、武器の使用も許可するね。でも、犯人は殺さない様に捕まえてね」
「リリー様、承りましたの」
「貴女達二人は危険だけれど、今から外の誘拐犯を追ってもらうわ。到着した頃には、既に受け渡し済みだと思うけれど犯人の確保頼むね」
「リリー様、了解しましたぅにゃん」
「リリー様、私とスノー様にお任せ下さいまし」
俺は再びテレポートを使用し、冒険者ギルドの屋根に移動。
独り、隠蔽魔法と戦闘モードの身体能力を使用し冒険者ギルド近くの大宿屋に侵入する。
もう辺りは既に、夜になっていた。
犯人達がいる場所の特定と部屋の配置、拉致されて捕まっていた数十人の獣人の居場所を特定した。
そして、それぞれに『テレパシー』を送る。
『「スノー、葵、大丈夫?」』
『「リリー様の指示に従い検索した結果、犯人捕縛に成功しましたぅにゃん」』
『「リリー様、スノー様と協力すれば簡単なお仕事でしたわ。武器も一切使用致しませんでしたの」』
『「二人共よくやったわ! 後でモフモフしてあげるからね。それと、王国騎士達がもう直ぐ着くはずよ。着いたら捕まえた犯人は騎士達に任せてから、私の元へ向かってね」』
『「はい、リリー様ぅにゃん」』
『「承りましたの」』
スノーと葵と使徒眷属間テレパシーを終了と同時に、スミレちゃんからの使徒眷属間テレパシーが入る。
『「リリーちゃん、私の部隊も犯人捕縛完了です。そして、今アイビーちゃんの所に着いたよ」』
『「作戦通り、アイビーと合流したのね。スミレちゃん、次はシルクの元へ行って。もしカトレア先生が苦戦していたら、手伝ってあげてね」』
『「リリーちゃん、了解」』
スミレちゃんから後で連絡が有ったのだが、俺が侵入して調査している間に無事五名の生徒達の救出と犯人の捕縛は完了していた様だ。
ただ、カトレア先生が生徒をかばって負傷しシルクが回復させたらしい。
その直後、縫いぐるみ人形が発動し犯人を押さえつけていたらしいが……人形が何に変身したのかは敢えて聞かなかった。
つまり、犯人はそれだけ手練れだったと言うことだ。
俺は別動隊の騎士達を、大きな宿屋の指定した脱出経路に待機させた。
そして、隠蔽魔法とアンロック魔法を駆使して拉致被害者の数十人の獣人達を開放する。
更に、宿屋を取り囲む様騎士達に指示をだした。
ただ、二名の獣人が犯人と一緒に居る様で見つからずに助けるのは困難だった。
俺が指示を出していると、馬に乗ったスミレちゃんを初めに皆が順番に到着した。
「リリーちゃん、少ないけど騎馬隊も連れて来たよ」
「スミレちゃん、犯人捕縛お疲れ様。着いたばかりで申し訳ないけど、秘密の抜け道がある場合を考慮して、誘拐犯の逃げ道を塞ぐ様に騎馬隊の配置は任せるね」
「リリーちゃん、了解」
俺がスミレちゃん率いる小数騎馬隊に指示を伝え終わると同時に、カトレア先生とシルクとアイビーがやって来た。
「リリーちゃん、お待たせ。生徒達五人は無事保護したわよ」
「カトレア先生、お怪我は大丈夫なんですか?」
「シルクちゃんが傷を癒してくれたから、もう平気よ。縫いぐるみのリリーちゃんが助けてくれたしね」
「やっぱり……」
「エッヘン! 私、回復魔法は得意なのよ。大抵の傷は一瞬で治しちゃうんだから!」
「ワン、クウーン、ワオーン」
『シルクも、たまには役に立つんだね。いつものボケ王女を発揮しなくて良かったよ』
「アイビー、後で覚えておきなさい」
少し遅れて、スノーに乗った葵が来た。
「リリー様、無事に騎士達に誘拐犯を引き渡しました。うにゃん」
「スノー様に走って頂いたので、早く到着致しましたわ。でも、リリー様と少し離れていたので寂しかったですの」
スノーと葵が、幼虎と幼狐になって擦り寄って来たので、二匹とも抱き寄せて撫でてあげた。
「スノーちゃんと葵ちゃんが……」
すると、上空から小さな龍のクレマチスがユグドラシルを乗せて飛んできた。
「あっ……」
「リリー様ー!」
ユグドラシルから
『「リリー様、クレマチス様が上空で寂しそうにしていて、とてもではありませんが引き留めきれませんでした」』
と、クレマチスが幼龍から人型に変化して俺に抱きついたと同時に『心情』が伝わってきた。
『「うんうん、ユグちゃん大変だったね。ありがと」』
と心情でユグドラシルに伝えた。
「クレマチスちゃんまで……」
騎士達は一瞬驚いていたが、俺が女神なのは知っているので直ぐに冷静になりカトレア先生だけが俺の縫いぐるみ人形を抱きしめて驚いた顔で固まっていた。
知られてしまったものは仕方がない。いつものように、誤魔化しておこう。
「あっ! カトレア先生、幼女の秘密三つ目です。この子達、三人とも私の召喚獣なの」
「……うん。幼女の秘密ね」
そう言ってカトレア先生は、俺と同じサイズの縫いぐるみ人形を抱き寄せて
「幼女の秘密ですって、リリーちゃん? 不思議ね-」
そう言って俺の姿をした縫いぐるみ人形と話すように呟いていた。
俺は、スノーと葵、それに人型に変化したクレマチスの愛情で、気力もモフモフも十分に堪能できた。
後は、残された二人の子達を助ければ良いだけだ。
俺は皆に指示を出す。
「シルクはアイビーに乗って、カトレア先生と騎士達と協力してこの大きい宿の包囲は任せるわ。シルクは回復、アイビーはシルクの足回りを支援ね」
「リリー、了解よ!」
「ワン」
『了解しました』
カトレア先生は、俺の縫いぐるみ人形で癒やされたようで正気に戻っていた。
確かに、その縫いぐるみ人形は癒やし効果も有るからね……。
「リリーちゃん、シルクちゃん達と協力して大きな宿屋の泊り客の避難はこちらに任せてくれても良いわよ」
泊まり客の避難もこちらでしようと考えていた事は、どうやらカトレア先生が俺の心を汲みとってやってくれるみたいだ。
カトレア先生、正気に戻ってくれて本当にホッとしたよ。
これなら、カトレア先生達に任せられる。
「カトレア先生、お願いします」
俺は使徒・眷属・従者テレパシーを駆使して、それぞれに指示を与え、作戦行動に移るべく駆けだした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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リリー「シルク、何しているの?」
シルク「練習よ」
リリー「何の?」
シルク「いかに自然な、ドジっ子ぶりを発揮する給仕係になれるかのよ?」
リリー「でも、シルク注文係でしょ?」
シルク「良いのよ。だって、給仕している時にドジしてひっくり返ってトレー
に食べ物をこぼしちゃうと交換しないといけないでしょ?」
リリー「当然よ。だって、お客様にお出しする物ですもの」
シルク「だから、そのトレーにこぼした物を私が頂いちゃうの。良い
アイデアでしょ?」
シルクの食い気に、呆れるリリーであった。




