生徒誘拐事件発生1
休憩をしていると、スミレちゃんから緊急の使徒眷属間テレパシーが届いた。
『「リリーちゃん、大変な事がおこったわ。スミレね、今南の森にA~Cクラスの生徒達と一緒に居るのだけれど、ルビナス君とブルメリアちゃん、それに別クラスの獣人の子達が三名行方不明になったの」』
『「え? スミレちゃん、一体どういう事?」』
俺がスミレちゃんから事情を聞いていると、Aクラスの先生が慌てた様子で教室に駆け込んで来た。
「カトレア校長、一大事です!」
「どうしたの、そんなに慌てて?」
「カトレア校長、もっ、申し訳ありません……。わっ、我が校の生徒五名が、南の森で行方不明になりました。現在BクラスとCクラスの教師、それに他の教職員で南の森を捜索中ですが、未だ発見されておりません。もしや、今王国内で噂されている獣人の子供が行方不明になるあの事件と関係あるのでしょうか? 行方不明者になった者は全て獣人の子供達です」
俺は事前に使徒眷属間テレパシーで、スミレちゃんとのテレパシーで伝わっていた情報で、スノーと葵とクレマチスとシルクとアイビーを呼び寄せていた。
レモンちゃんは何か有った時のことを考えて、ホテルでキノットさん達のお手伝いを召喚したウンディーネと共に手伝いつつ待機してもらっている。
「リリー様、皆を連れてきましたぅにゃん」
「リリー様、遅くなりましたの」
「リリー様、私もお手伝いさせて頂きたく参上致しました」
「皆、来てくれたのね。ありがと」
シルクが俺の前に、無い胸を反らせて飛んでくる。
「リリー! 私、お腹が空かない様に人数分の食べ物とお菓子も持て来てあげたわよ。エッヘン! 私、偉いでしょう。ねえ? 偉いでしょう」
「ワン、ワオーン。ワン、クウーン、ワフ」
『リリー様、お待たせしました。シルクは、食い気だけは人一倍ある残念な子だからね』
「なによ、バカ犬! 貴方には、何もあげないからね!」
見ると、アイビーの背中には沢山の食材が乗せられていた。
スノーと葵とクレマチスも、手提げ袋に食材やお菓子を沢山持っていて、シルクは自身専用のお気に入りであるクッキーの子袋を持っていた。
俺はシルクと皆にお礼を言って荷物をアイテムボックスに収納した。
実は……食材は一杯アイテムボックスに入っている。
しかし、それは言わない約束である。
カトレア先生とAクラスの教師は、慌てて非番の職員への連絡や南の森に向かう準備を進めている。
そんな中俺は、カトレア先生に渡した縫いぐるみ人形アクセサリーに、更なる機能を追加した物を、スノー達の戦闘形態に合った機能を有する誕生石のアクセサリーとして渡していった。
実は昨日の深夜に、カトレア先生に渡した物に改良を加え創造しておいたのだ。
……と言いつつ、本当はカトレア先生に渡した縫いぐるみ人形のアクセサリーが俺の姿になっていた事が気になり、全然寝付けなくて皆の分をまとめて創造したのだけれどね。
「スノー、貴女にはこのステップ・カットを施したエメラルドのサポート系誕生石が付いたチョーカー。それに、同じカットを施したアメトリンの強化系誕生石が付いたブレスレットをあげるわね」
「リリー様、ありがとうございますぅにゃん」
「このチョーカーには、私が持っている装いの内、スノーの好みの服をいつでも取り出せるようになっているの。その装いがそのアクセサリーから出て貴女に装着された時は、今着ている装いはそのチョーカーに収納されるからね。そして、もう一度着ていた装いを取り出す時は綺麗になって修復されて出てきてそれは収納されるからね。装いの性能は私の持っている装いには及ばないかもしれないけれど、第三級中位管理者として私の能力の限りを尽くして創造した物だから、全属性耐性、魔法防御、物理防御、自動回復、装い損傷時の自動修復に関しては私のお墨付きよ。そして、このブレスレットは貴女の能力を全体的に強化してくれる特殊な強化魔法も戦闘時に発動するようになっているの。貴女が幼虎の場合は、同じく小さくなるから安心してね」
「リリー様、スノー大切に致しますぅにゃん」
俺は、それぞれの能力を最大限に生かせる誕生石の付いたアクセサリーを皆に渡していき説明を行った。
葵には、トリリアント・カットを施したムーンストーンの付いたツインテールに似合う髪を留めるリボン。
それに、同じカットを施したクリソプレーズの付いたアンクレット。
幼狐になった時は、髪のリボンの代わりに首に可愛いリボンが付くようになっている。
クレマチスには、バリオン・カットを施したトルマリンの付いた小さな髪留めの王冠。
それに、同じカットを施したシトリンの付いたイアリング。
幼龍や大きな龍になった時は、その大きさに合わせ小さくなったり大きくなったりする。
シルクには、スクエア・カットを施したエメラルドの付いた小さな髪留めティアラ。
それに、同じカットを施したクリソプレーズの付いたイアリング。
進化した時の事を考えて、大きく成長した時はシルクの大きさに合わせる様になっている。
アイビーには、オクタゴン・カットを施したサファイアがワンポイント付いた首の前に巻くバンダナ。
それに、同じカットを施したカイヤナイトの付いた首輪型の後ろに着けるリボン。
アイビーも進化して巨大化した時の事を考えて、こちらも大きさに合わせる自動機能付きだ。
召喚精霊達は俺の中やレモンちゃんの中にいたりするので、現在考えている最中だ。
ユグドラシルも、楽しみにして待っていますと心情が伝わってきていたが、昨日の深夜だけでは時間的に思いつかなかったのだ。
スミレちゃんとレモンちゃんにも作ってあるが、会った時にでも渡そうと思っている。
「これで、皆の安全を考えて作ったアクセサリーは行き渡ったわね」
カトレア先生は教師として俺達に
「心配かもしれないけれど、貴女達はここで待っていなさい!」
と、待つように言ってきた。
しかし、シルクが俺の方がカトレア先生よりも強いと口走ったせいでカトレア先生は落ち込んだ。
カトレア先生が、縫いぐるみ人形の俺を持って何か呟いている。
シルク、言い過ぎ。ほら、カトレア先生落ち込んで俺の姿をした人形と話しているよ……というか、先生それ恥ずかしいから止めて。
カトレア先生は俺の姿をしたその縫いぐるみから元気を貰ったようで、振り絞るように
「でもね、シルクちゃん? 魔物や魔獣は、リリーちゃんの方がお手の物かもしれないけれど、凶悪な人間が相手かもしれないのよ?」
と言った。確かに、その通りだ。
俺はこの世界の魔物や魔獣相手には負ける気がしない。
しかし、人間を相手にできるだろうか?
戦争を経験した事がない俺にとって、人を殺めるかもしれない状況に陥る恐れがある場に赴くのは……。
「何言ってるのよ、カトレア先生! リリーと私達は、あの王国精鋭騎士団すら這う這うの体だった……モゴモゴ、ムシャムシャ。痛! って、ちょっと変な所噛まないで、アイビー? 痛いわよ! キャー! ちょっと、アイビー? 変な所、舐めないで!」
俺はシルクがとんでもない事を言い出したので、慌ててシルクの口にクッキーを突っ込んだ。
アイビーも、俺の意図に気づきシルクを甘噛みして抑え込んだ。
シルクを甘噛みし過ぎたのかと思ったのか、アイビーがシルクの変なところを舐めたようでシルクが慌てていたが……。
まあ、それは幼馴染みの二人の事だから二人で解決して下さい。
お願いします。俺は、関知しないからね。
「え? 王国騎士団が何?」
「カトレア先生、そんな事より人手が必要なんですよね?」
「アイビー? もぉー、擽ったいって! って言うか、恥ずかしいから。いい加減にアイビー放しなさいよね!」
まだシルクとアイビーが、二人で仲睦まじくしているよ。
そう思っていると、シルクがアイビーの甘噛みから逃れ涎塗れで飛んで
「カトレア先生も、薄々リリーがこの王国にいる誰よりも強いって分かっているでしょ!」
「そうね……」
カトレア先生が、縫いぐるみ人形をアクセサリーに変化させたかと思うと、俺を無理やり抱き寄せて撫でながら俯いて何かブツブツと言う。
「私の、リリーちゃん。私の、リリーちゃん。私って、貴女より強くないけれど先生でも良いかな?」
そう言って、吹っ切れた様に涙目になって南の森にAクラスの先生を置き去りに走り出した。
俺は先生のその問いに応えるように
「勿論ばい。カトレア先生以外は、うちん先生やなかとです。それに、うちゃカトレア先生がばり好いとーよ」
俺がそう言うと、カトレア先生は笑顔を取り戻した。
スノーが大型犬の様になって葵がスノーの上に騎乗する。
クレマチスは空を飛び、シルクはアイビーに乗ってスノー達と一緒にカトレア先生に追いついて来た。
Aクラスの先生は遥か後方から、カトレア先生を見失わない様に必死の形相で追いかけている。
流石、Aランク冒険者のカトレア先生だ。もの凄く足が速い。
あっと言う間にAクラスの担任教師を置き去りに、南の森のスミレ達が居る所までやって来た。
と言うか、既にAクラスの先生の姿は見えなくなっていた。
まあ、場所は知っているから大丈夫だよね?
スミレちゃんが、いち早く俺に気づき近づいてきた。
「カトレア先生と抱っこされているのは……えっ? 縫いぐるみ人形じゃなくて、本物のリリーちゃんなの?」
「スミレちゃん、お待たせ」
「皆、貴方達は大丈夫? あっ、スミレちゃん今どういう状況?」
カトレア先生が到着すると、生徒達と残っていた教職員が安堵の表情を浮かべ、先生に抱っこされている俺を見て不思議そうな表情を浮かべていた。
そしてカトレア先生は皆の顔を一人一人確認しながら教職員では無く、あえて秘密では有るがフォレストムーン王国の第三王女であるスミレちゃんに状況説明を聞いていた。
獣人の王侯貴族が行方不明者に含まれていた場合、早急に解決しなければフォレストムーン王立冒険者学校で有るが故に、獣人国の戦争にもなりかねないかもしれない。
もし事が逼迫していた場合は、国王に騎士団の救助要請も考えての事であろう。
そんな事を俺は考えていたが、カトレア先生は何を考えているのか一向に降ろしてくれない。
「先生、たいがいに降ろしてくれん? スミレちゃんに作ったアクセサリー渡せんけん」
「あれ? リリーちゃんがくれた、縫いぐるみ人形じゃ無かったの? 抱き心地があまりにも良くて、つい気持ちを落ち着かせる為に抱いていたわ。……仕方が無いわね」
俺はスミレちゃんにも皆と同様に、プリンセス・カットを施したタンザナイトのサポート系誕生石が付いた可愛いペンダント。
それに、同じカットを施したサンストーンの勇者の能力と全能力が向上するイアリングを渡した。
これで何かあったとしても、俺の大切で大好きなこの子達を守れるはずだ。
そこに、隙を見せたら抱っこしてくるカトレア先生も混ぜることになるんだけれどね。
※ ◇ ※
フォレストムーン王国の王の執務室にて
「宰相、どうした? 浮かぬ顔をして」
「遠国の大聖女様からの受信魔道具によるお手紙に、信じられない事が書かれておりまして……」
「して、何と?」
「それが、西の大陸が消失したと……」
「何? まさか、魔王が西の大陸を?」
「いえ、魔王であるならばその痕跡が残りましょう。ですが、西の大陸全てが消失したと……」
「むぅー」
「現在、中央大陸、東の大陸、北の大陸にある各大国にも、大聖女様自らが送信魔道具による書状を書き調査の依頼をお願いをしているようです。我々の国がある南の大陸では、アースセントラウス帝国が大聖女様の書状を受信し先ほど了承したようです。そして、アースセントラウス帝国が中心となって我が国を含む五つの国にも調査の協力をお願いしているようです。アースセントラウス帝国からも同様の内容で先ほど魔道具による受信の書状が届きました。恐らくこの大陸は、全ての国が了承するかと」
この南の大陸には、大聖女様が住まわれる西の聖王国、中央にあるアースセントラウス帝国を中心に、北西にあるマリーゴールドファーム王国、北東にあるクラギィマウンテン小国、東にある我が息子の妃の住んでいたリーフリュウシン小国、南西にあるウインドウォーター王国、そして南東にある我が国フォレストムーン王国がある。
そしてこの大陸にある全ての国は、代が代わったとしても大聖女様達が齎した啓示によって何らかの形で恩恵を受けている。
そう言う私も、大聖女様には我が娘の為に態々お越し頂いた恩義がある。
それに、このような事は歴史上無かった事だ。
恩義があろうと無かろうと、恐らく全ての大陸にある国々が調査をするだろう。
我が国からも、調査騎士団を派遣せねばならぬ。
「宰相よ、アースセントラウス帝国に使者を派遣し我が国も調査騎士団を派遣することを伝えるのだ」
「はっ! 承知致しました」
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「リリー、これ高かってでしょ?」
リリー「何が?」
シルク「これよ、このティアラとイアリングよ。こんなに綺麗な宝石、良いの?」
リリー「でも、今までシルクが食べてきた食材の事を考えると安いよ?」
だって、無限にある魔力でポンだもんね。
シルク「ふぇ?」
もしかして、ハイオークを食べ過ぎたから?
ハイオークは、少し食べ過ぎるのを自粛しようと思ったシルクであった。




