7 火災と死
漆黒の闇の中、火の手が上がった。
朱色に、そして真紅に焔はゆらめく。
一軒のシルエットが浮かび上がった。
遠くから美邦はそれを眺めている。
身動きができない。
焔以外、墨で塗り潰されたような闇だ。
あそこに住む人は、もう逃げただろうか。
いや――まだ残っているのではないか。
サイレン音が遠くから聞こえる。
やがて四方に木霊しだした。
音は多いのに車は見えない。
糸のような影が焔の中で動く。
それは、ぐにゃぐにゃと揺れる棒人間のようでもあり、線蟲のようでもあった。
*
日曜日の八時頃、美邦は目を覚ました。
冷たい空気の中、胸騒ぎを覚える。
――今度は火事。
震えながらベッドから降りた。
同時に、学習机の上のノートが目に入る。
それを開き、先ほどの内容を書き留めた。
酷く憂鬱になる。あの夢は、自分の過去のことかもしれないと思ったのだ。
――それとも。
先日の幸子の言葉を思い出す。
――また何か起きたら。
下駄箱に置かれた紙が網膜に浮かんだ。
――お前のせいで実相寺由香は死んだ。
ノートを閉じ、一階へ降りる。
平日より遅い朝食が居間で始まっていた。
「おはようございます。」
声をかけると、千秋も啓も、おはようと異口同音に応える。詠歌だけが、無言のまま朝食を作り続けていた。
洗面所で顔を洗い、歯を磨く。
居間へ戻った。
点けっぱなしにされたテレビからニュースが流れている――米国大統領の動向や、関東で起きた殺人事件の報道。続いて、地元のニュースが読み上げられた。
「今朝未明、⬜︎⬜︎市平坂町の民家で火災があり、住民とみられる男性が死亡しました。」
刹那、画面から目が離せなくなる。
火災現場の空撮が映った。
「火災があったのは、⬜︎⬜︎市平坂町大字上里園部の民家です。午前三時ごろ、民家が燃えているという通報が近所の住民からあり、地元の消防団が駆けつけました。焼け跡からは、住民の菅野文太さんとみられる男性が発見され、間もなく死亡が確認されました。⬛︎⬛︎県内では住宅火災が相次いでおり――」




