野生のままとは言い難い
蛮は、意識を失っていた。その彼を、バドの代わりに配備された二機のドーベルマンMPMが守る。
また例のボクサー竜の群れが現れたが、ドーベルマンMPMの姿を確認するとそれ以上は近付いてこなかった。もしかしたら一機だけだと襲ってきたかもしれないものの、二機いたことで戦力差を察したのかもしれない。以前の経験ゆえに。
そうして二機のドーベルマンMPMに守られ、蛮の肉体は自身の回復を図っていた。己の回復力を最大限に高めて。本体側にも大きな傷はあったものの、そちらは致命傷ではなかった。あくまで人間のようにも見える部分の傷が大きなダメージとなっていた。
左肩から右脇腹に掛けてごっそりと肉が抉り取られ、左の乳房はそれこそ見る影もない。左の肺も潰れているらしい。
地球人ならそれこそ絶望するような大変な状態だっただろう。もっとも、現在の地球人の社会の医療技術であれば、このくらいは痕も残さず再生することもできるので、ショックを受けるのはその時だけだろうが。
こうして三日間、蛮はその場に蹲っていた。この間、二機のドーベルマンMPMと、回収された日の翌日には完全に修理されて戻ってきたバドによって完璧に守られていたが。さすがにそれがなければそのまま命を落としていた可能性が高い。だから厳密には『野生のまま』とは言い難いのも事実だ。
とは言え、
<ヒト蜘蛛の生態を詳細に知るための研究>
という一面もあるので、この種の<特別扱い>も道理と言えるかもしれない。
いずれにせよ、四日目を迎えようとしていた頃、
「……」
蛮はついに意識を取り戻した。が、
「グウ……」
さすがに傷が痛むのか、動きが精彩を欠いている。何とか木に登って安全な場所を確保した。けれどそこでまた動かなくなってしまう。
早く回復するためだろう。
生きるためのリソースについては、本体側に蓄えられたもので何とかなっているようだ。ここまでで確認されているヒト蜘蛛としての能力がフル活用されている状態だとみられる。
こうしてさらに三日。ヒト蛇との会敵から一週間が過ぎ、
「ギ……」
表情は険しいもののしっかりと周囲を認識し、近付いてきたトカゲに似た小動物を捉えてバリバリと貪った。
「ギ…ッッ!」
左肩から右脇腹にかけての傷は、出血こそ完全に止まっているものの見るも無残な状態で、普通の地球人なら正視に堪えない有様だった。それでも、痛みをこらえて蛮は手近にいた小動物や鳥や昆虫を片っ端から捕えては口に運んだ。
失ったエネルギーを補充し、傷を癒すのに必要なリソースを得るために。




