決着
ボギャッッ!!
地面に倒れ伏したヒト蛇の顔を、蛮は容赦なく全力で踏みつけた。何とも言えない音と共に、ヒト蛇の頭が破裂する。
当然、即死だ。だが、死してなおその体は、『死なばもろとも』とばかりに、滅茶苦茶に暴れ始めた。脳による制御が失われたことで、全身の筋肉がデタラメに動いているのだと思われる。
その時間、約五秒。
たった五秒ではあったが、周囲の木々はことごとくなぎ倒され、ようやくヒト蛇の動きが収まった時、蛮が蹲っていた。大量の血が地面に滴っている。見れば、彼の左肩から右脇腹に掛けて真っ赤に染まっていた。
ヒト蛇の尻尾が当たったらしい、左の乳房がごっそりと抉り取られているのが見てとれた。
死んですらなおこの威力。まさにとんでもない<怪物>だった。
右腕と右前脚を失ったバドも、かろうじて動ける状態だったようだ。そこに、ようやく、<最強の機体>が、巨大な飛行物体と共に駆け付けた。
ヘリだ。全長三十メートルはある、大型の<フローティングヘリ>と呼ばれるものだった。それのキャビンのドアを開け、人影が飛び降りてくる。まだ二十メートルは高度があったのに、命綱さえ付けずそのまま飛び降りてきたのだ。
なのに平然と地上に降り立ったその人影は、女性だった。胸まである青い髪をかき上げたその女性は、いわゆる<メイド>を思わせる格好をしていた。この密林にはあまりにも不釣り合いな恰好ではあるものの、その、
<女性のようにも見えるもの>
こそが、<最強の機体>だった。しかし、わずかに間に合わなかった。その<メイド服を着た女性のようにも見える機体>は、続けてワイヤーで降下してきた、<ドーベルマンMPMによく似たシルエットを持ちつつ一回り以上大きなロボット>を従えて、その現状を確認した。
もちろん、ヒト蛇の完全な死亡も確認する。
<メイド服を着た青髪の女性のようにも見える機体>も当然ロボットなので、一言も発しない。すべて通信でやり取りをしているからだ。
人間のような感情を一切見せず、まったくの無表情のままただ淡々と現場検証を行っていく。と同時に、蹲っていた蛮に近付いて彼の傷に何かのスプレーをかけていった。応急処置に使う止血用のスプレーだった。それ以上の<治療>は行わない。そういう指示は受けていないからだ。
これで持ち堪えられればそれでよし。このまま蛮が命を落とすとしても『そういうもの』として受け止めるだけである。
その一方で、バドについては、ワイヤーを下ろしそれで吊り上げて回収する。地面に落ちた右腕と右前脚も拾い、下ろされたワイヤーに掴まって、<ドーベルマンMPMに似たロボット>と共にフローティングヘリへと戻っていった。
代わりに、二機のドーベルマンMPMを下ろして。




