破壊者
だが、パルディアの戦い方というのは、気配を殺して近付き必殺の一撃をお見舞いするというのが基本で、かつ、自身の身体能力を活かした力業というのが一般的だった。だからそれこそ、確実に勝てると思った時しか戦わないという、実にスタンダードな戦法である。
ゆえに、すでに相手に察知されてしかも力でも圧倒的に上という条件ではあまりに不利だった。むしろ勝てる要素が見当たらない。どうやって勝てばいいのかが分からない。
それこそ奇跡にでも頼るほかにないだろう。それでも、諦めはしない。諦めなければ奇跡も起こるかもしれない。だから戦う。
掴みかかってくるヒト蛇の手を払い除け、身を躱す。その際、少しでもダメージを与えようと爪を立てるが、
ガリッ!!
ギャリッッ!!
と金属音がするばかりで、まったくダメージが与えられていなかった。ヒト蛇の腕の皮膚が裂けて剝がれていくものの、それは鱗を覆っているビニールカバー程度の役目しかしていないようだ。多少の痛みはあるのかもしれないにしても、怯ませることすらできていない。
それでも、胸に子をしがみつかせたままヒト蛇の攻撃を凌げているだけでも大変なものだろう。それだけパルディアの方も必死なのだ。
ヒト蛇の手を払い除けつつ木々を飛び移り、何とか間合いを取ろうとする。もちろん、木の幹や枝を盾として距離を取ることもする。密林に生きる者としては当たり前の戦術。
しかしそれがヒト蛇にとっては気に入らないらしく、激しく苛立っている。自身の腕よりも太い枝さえ、
『邪魔だ!!』
と言わんばかりに力尽くで払い除けてへし折ってしまう。細い木などは、体ごとぶつかって根元から折ってしまう。その姿はまさに、
<破壊者>
とでも言うべきか。
そのあまりにとてつもない姿に、パルディアにも怯えが見える。怯えつつ、しかし自身の力のすべてを使ってこの強大な破壊者に抗う。
それこそクモの糸のような頼りなく細い、
<生き残る道>
を手繰り寄せるために。
体を回転させ足でもヒト蛇の攻撃を掃い、その反動で向きを変える。
だが、ここまでですでにパルディアの体のあちこちには血が滲んでいた。ヒト蛇の体を覆う鱗はまるで刃物のようでさえあり、迂闊に触れると皮膚が裂け肉が抉り取られるのだ。
パルディアの方も極限状態にあることでほとんど痛みを感じていないようではあるものの、その姿はとても痛々しくも見えた。
『がんばれ! 負けるな!』
と声を掛けてしまいそうになる程度には。




