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だから逃げる。生きるために

生きるためにヒト蛇(ラミア)と戦ったアサシン竜(アサシン)だったが、残念ながら力が及ばなかった。


首を握り潰し殺したアサシン竜(アサシン)の体を、ヒト蛇(ラミア)は貪る。恐ろしい勢いで貪る。溢れ出る血を顔で浴びながら、血塗れになりながら。


透明な体の中にそれまで食われた動物達だったものが帯状になって収まっているのが見える。人間のようにも見える部分のおそらく胃に当たるであろう辺りはどうやら飾りのようでしかなく、さらに下に太くなった部分があって、それが<ヒト蛇(ラミア)の胃>ということのようだ。そこにどんどんと食べたものが押し込まれていく。


こうしてアサシン竜(アサシン)をも食らいつくしたヒト蛇(ラミア)は、再び密林の奥に向かって動き出した。


その異様な気配を感じたのか、ずっと先の方を白い影がいくつも木々を渡って逃げていく。パパニアンだ。チンパンジーと同等の身体能力を持ち、握力は二百キロを超えるともされるパパニアンではあるものの、それはここでは絶対的なアドバンテージにはならず、あくまで被捕食者としての立場でしかなかった。だから、危険を察すれば一にも二にも逃げることがそのまま生存戦略となる。逃げ切れないとなれば逆襲にも転じることはあるものの、それは最後の手段。一か八かの賭けでしかない。生きることを諦めないための足掻きでしかないのだ。


それでも、そのおかげで生き延びることも確かにあるのだが、やはりまず第一に選ぶべきは逃げることである。だから逃げる。生きるために。


そのパパニアン達は、レトがかつていた群れだった。レトが逃げたことで新たに<イジメの対象>となった個体も当然いるが、その個体も群れと一緒に逃げた。まだその余裕があった。敵に追いつかれたらその個体を犠牲にして逃げることもあるにせよ、今の時点ではまだそこまでじゃないようだ。


早々に逃げることを選択したボスの判断が功を奏した。


だからか、ヒト蛇(ラミア)もパパニアンらを追うことはなかった。そちらを追わずとも、目の前に小動物達が逃げまどい、<獲物>には困らなかったからだろう。


そんな中、またヒト蛇(ラミア)に牙を剥く者がいた。パルディアだった。胸にまだ幼い子を抱いたパルディアだ。


子が小さかったことで逃げ遅れたのか。ゆえに、戦うことを選んだのかもしれない。


正直、ここまでのヒト蛇(ラミア)の戦いぶりからすれば、無謀以外の何物でもないことは分かってしまう。けれど、逃げて逃げ切れないのなら戦うというのも選択の一つであろう。アサシン竜(アサシン)と同じく。


このパルディアは、それを選んだというだけである。



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