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勲章

毒ヘビに噛まれたことで危うく命を落としかけた(ばん)だったが、それ以降、ヘビ(に似た動物)に対しては用心するようになった。不用意に手を出さないようにしたのだ。


こうやって野生の動物も、手を出していい相手とそうでない相手を見極めていくのかもしれない。


翌日はまだ顔色も優れなかった(ばん)も、数日も経てば完全に回復。例の<狡猾なボス>が率いているのとは別の群れのボクサー竜(ボクサー)を一撃で倒し、その肉を貪っていた。


そんな(ばん)の姿も、バドは記録する。


バドのカメラの中の(ばん)は、何度も大変な危機を乗り越えたて得た、まさしく<密林の覇王>の風格をまとっていただろう。事実、この直後に縄張りに侵入してきた他のヒト蜘蛛(アラクネ)(雄)を、ほとんど手出しもさせずに圧倒し、喰ってしまったのだから。


本当にこちら側の密林では、ほぼ最強といっても過言ではないと思われる。


しかしそれは同時に、密林に住む他の動物達からすればまさに、


<恐怖の象徴>


だろうが。




そして今日も、巣立ち間近の子を連れたアクシーズが、おそらく狩りの仕方を学ばせるために密林の上を滑空していた時、木の陰に隠れていた(ばん)が襲い掛かった。


突然のことにパニックに陥って動けなくなった子を守るため、母親は、(ばん)に立ち向かった。鋭い爪を備えた足による連続攻撃で、(ばん)を牽制、その上で、自身が翼にダメージを負ったように装い、狙いを自らに向けさせ、子を逃がそうとした。


だが、それすら、(ばん)には通用しなかった。母親の足による連続攻撃を凌ぎ、自分に狙いを向けさせようとする母親の思惑には乗ったものの、脚を掴み引き寄せた瞬間にもう片方の手(触角)で翼をへし折って本当に飛ぶこともできなくし、しかも、母親にとどめを刺す前にまだパニックから回復していなかった子に襲い掛かり、手(触角)で頭を掴んで躊躇なく首を折り即死させて、死んだ子の体を掴んだまま、飛べなくなった母親が木の枝を伝って逃げようとするのを追って背中に容赦ない蹴りを打ち込み、衝撃で呼吸困難に陥って動きが鈍ったところを背後から首を掴んで片手(触角)で振り回して木の幹に叩き付け、内臓を破裂させて致命傷を負わせた。


この間、わずか二十秒ほど。


襲われた方からすれば悪夢以外の何物でもない出来事だっただろう。けれどこれ自体が、何度も言うようにこの世界の<日常>である。


生き延びた者が命を長らえ、敗れた方が命の糧となる。


ごく普通の当たり前の光景。


この時、アクシーズの母親の必死の抵抗により、(ばん)は頬に傷を受けていた。その傷は口内にまで達する深いものだったが、彼にとっては<勲章>のようなものでしかなかったのだった。



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