当然そうなる
もう一体のドーベルマンMPMが駆け付け、形勢は一気に逆転した。バド一体とドローンだけでギリギリ持ちこたえられてきたところにさらにドーベルマンMPMが増えれば、当然そうなる。
ギリースーツをまとったバドと、ほぼ新品の状態に近いドーベルマンMPMでは、とても同じモデルの機体とは一見しただけでは分からないが、実際にはまったく同じ性能を持つので、バドと同じことができてしまう。
バドの運用データは常時蓄えられ、フィードバックされるのだ。
こうなるともう、ボクサー竜に勝ち目はない。『殺されない』からといくら立ち向かっても、まったく疲れることのない相手では、自分達にばかりダメージが蓄積していく。それでも、多少はバドに対してダメージを与えられるならまだしも、それすらできないのだから、どうにもならないのだ。
「ギギッッ!!」
狡猾なボスも当然それを承知していて、ようやく破れそうだったバドの守りが完全に復元されて、それどころかほぼ倍に増強されて、挑むだけ無駄ということは理解できているようだ。
そうして、ボクサー竜の群れは去っていった。
とは言え、『去ったフリをしている』だけという可能性はもちろんあるので、バドも油断しない。応援に駆け付けたドーベルマンMPMも、別に急がなければいけない役目があるわけではないので、一緒に警戒してくれていた。
その後、数時間が経ち、
「……」
混濁していた蛮の意識が戻ったようであった。実は、応援に駆けつけてくれた方のドーベルマンMPMも<血清>を装備していて、蛮のヒト蜘蛛としての本体の方にも注射してくれたのだ。
これにより、毒の回りが少なかったらしい本体側が先に回復。これまでと同じように<人間のようにも見える部分>を支え、やがて毒の影響を上回ったのである。
さすがにまだダメージは残っているようだったが、意識が戻る気配があったところでドーベルマンMPMは姿を消した。バド以外を蛮は認めないことが、先日の一件で確認されたからだ。
だとすればもうそこにいる意味もない。
「……」
顔色も悪く、明らかに落ちくぼんだ目でぎろりとバドを睨み、けれど、蛮はむしろ安心したように目を瞑った。完全に回復するにはまだ時間が必要だと彼自身も感じたのだろう。
守りはバドに任せて、自分は回復に集中することにしたのかもしれない。
その様子も、戦で瀕死の重傷を負った王とその回復を信じて待つ臣下のようにも見えた。
これにより、翌日には蛮も復調したのだった。




