自身の強さを他者に対して誇示するような考えはない
バドは強い。一対一ならボクサー竜など一秒と掛からず殺すこともできるだろう。しかし、バドに自身の強さを他者に対して誇示するような考えはない。そんな欲求もない。
『どうだ! 自分はこんなにも強いんだぞ!!』
などと自慢したいとも思わない。あくまで、敵対してくる生物に対して、
『自分と戦うのはデメリットの方が大きい。ゆえに手を出さない方が好ましい』
と認識させるために打ちのめすことはある。そして、その際に相手が死んでも気にしない。
『殺す必要がないから殺さないが、死んだからといって悔やんだりもしない』
それだけだ。
今だって、蛮を守り通せればそれでいいだけで、ボクサー竜を殺す必要がないのだ。
『殺した方が楽』
と考えるのは、<人間の感性>でしかない。楽も楽じゃないもない。向かってくるなら何度でも打ちのめす。その上で、殺しはしないが、死んでも構わない。
淡々と、ただ淡々と、疲れを見せることもなく、果てしない<作業>を繰り返す。
左手でボクサー竜の首を掴んで動きを抑え、右手で蛮に噛み付こうとするボクサー竜の頭を押さえ、後ろ脚で背後から自分に襲い掛かってきたボクサー竜を蹴り飛ばす。
首を掴んだボクサー竜はそのまま後方へ投げ飛ばし、頭を押さえたボクサー竜の首も掴んでやはり後方へと投げ飛ばしつつ移動。蛮の体を挟んだ反対側から襲い掛かるボクサー竜三頭が一直線に並んだところに飛び蹴り。三頭まとめて弾き飛ばした。
そして着地と同時に蛮の体を飛び越えて、やはり蛮の体に食らいつこうとしたボクサー竜を蹴り飛ばす。
だがついに、バドの動きでは間に合わず、蛮の左腕(触角)に食らいついたボクサー竜がいた。続けて、右腕(触角)にも食らいつこうとするボクサー竜が。
が、左腕(触角)に食らいついたボクサー竜の横っ面をバドが蹴り飛ばしたのと同時に、右腕(触角)に食らいつこうとしたボクサー竜が吹っ飛んだ。
そのボクサー竜がいた位置に現れた影。
ドーベルマンMPMだった。別のドーベルマンMPMが駆け付けたのだ。
それは、最近、こちら側の密林を調査するために改めて派遣された機体だった。まだ、真新しい。製造されたばかりのものであった。
製造に必要な資材が枯渇することが確実になり、代わりに<ホビットMk-Ⅰ>が作られたものの、まだそちらでは十分に役目を果たせるだけの性能が確保できてないことで、当面の間は、ドーベルマンMPMの製造が継続されることになったからだった。




