透明なように見えているだけで
ところで、この<透明なマンティアン>ではあるが、そもそも<透明>という時点で本来なら生物として有り得ないということが分かる。マンティアンの血液は、人間と同じく赤い。
それは、人間と同じくヘモグロビンが含まれているからである。だから赤い。ということは、もうその時点で透明にはなりえないということだ。
さらに、<透明な網膜>は、光を捉えることができない。だから本来は、何も見ることができないということのはずなのだ。
なのに、インヴィは、透明である。そして、何の問題もなく生きているし、獲物を目で捉えることもできている。
つまりこれは、
『人間の目には透明なように見えているだけで、実際には透明ではない』
という証拠でもあるとされている。これがいかなる現象なのかはいまだ解明されていないが、現にそれが存在する以上は、何らかの現象であることは間違いない。
また、興味深いことに、
『インヴィが食べたものは、ちゃんと見える』
のである。インヴィが獲物を捕らえてそれを口にすると、咀嚼しているところも食堂を通るところも胃に溜まるところも胃で消化されていくところも各消化器官を通りやがて<便>に変わっていくところも詳細に観察できるのだ。
にも拘らず、腸などで体内に吸収されると、途端に見えなくなる。完全にインヴィの体の一部となったものは、透明になってしまうのである。
これまた本来は有り得ないことであり、実に興味深い。
が、残念ながら現在の人間の科学力では、この現象について合理的論理的な説明ができないのだ。専門の機関で高い能力を持つ専門家達が徹底的に研究すれば何か分かってくるかもしれないものの、現時点ではそれは望むべくもない。
ゆえに、この現象については、少なくとも蛮の記録を行っている間に答えが出ることはないだろう。それは承知しておいてもらいたい。
この世には、
『どうしてそうなるのかは分からないがなぜかそうなる』
という現象は確かにあるのだ。これもその一つということだろう。
ゆえに、ここではその秘密を解き明かすことはしない。あくまで蛮を観察することが目的だからだ。
あと、人間の目には透明に見えるインヴィだが、赤外線では捉えることができるので、ドローンやバドのカメラでは実は丸見えである。
このことから、インヴィ自身が赤外線を発していることは分かる。
それはさて置き、こうして移動している時に、蛮が猪竜と対峙している現場に遭遇したというのが、経緯なのであった。




