インヴィ
インヴィは、ロクに動くことさえなくても移動しなくても、次々と獲物を仕留めることができた。チップ竜をはじめとした小動物や小鳥など、それこそ自動で供給されるかのように手に入る。
とは言え、本当にいつまでも全く動かないというのもさすがに辛いので、縄張りを確保するために密林を移動し始めた。
マンティアンは、首筋に<フェロモン>を発生させる部分があり、それを木などにこすりつけて自身の縄張りを主張する。
だが、こちら側の密林にはマンティアンがおらず、結果として縄張りを奪い合う相手がいない。生態が近いアサシン竜やパルディアは獲物を奪い合うライバルになるかもしれないが、この密林は非常に豊かなので、実はそんなに必死になって奪い合う必要はないのだろう。
が、互いに相手の間合いに入ってしまったりすれば、おそらく衝突は避けられないに違いない。
もっともそれは、
『ライバルとして』
というよりは、
『獲物として』
というべきだろうが。
ちなみに、マンティアンが本来生息している地域にもパルディアがおり、そこに生息しているパルディアは、基本的にマンティアンとは争わないし、近付こうともしない。その強さ危険さをよく知っているからである。
真向戦えば、パルディアではマンティアンには勝てない。身体能力攻撃力戦闘力もそうだが、マンティアンの皮膚は非常に強固な<天然の装甲>であり、パルディアの牙も爪も通用しないのだ。何しろ三十八口径程度の拳銃弾では、至近距離から撃たれても貫通しないほどの強度があるがゆえに。
わざわざ危険を冒してそんなものを相手にせずとも、密林には豊富な獲物がいる。危険を冒さないこともまた、<生存戦略>の一つだろう。
どれほど強かろうと、<強さ>など、所詮は相対的なものでしかない以上、上には上がいる。パルディアにとってはそれがまさにマンティアンということだ。これはアサシン竜にとってもそうなのだが。いかんせん、相手の強さを知らないうちは、その辺りの判断もさすがにできないと思われる。
ただそれさえ、
『相手が見付けることができれば』
か。
透明なインヴィがマンティアンとしての隠密性を発揮すればそれこそ見付けられるものはいない。だから、彼女の存在に気付かなかったアサシン竜が運悪く彼女のすぐ横に来てしまった。
「ビキッッ!?」
瞬間、アサシン竜はインヴィの鎌に捕らえられ、異変を察して逃れようと暴れたが、すでに手遅れだった。彼女の鎌はがっちりとアサシン竜の首を捕えて、そのままへし折ってしまったのである。
なお、この時捕らえられたアサシン竜は、落雷の側撃雷を受けても助かった個体だった。
落雷をも生き延びたというのに、このような形で命を終える羽目になったということだ。




