表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/97

生きていてこそ

内臓をぶちまけたまま立ち上がった巨大猪竜(シシ)だったものの、さすがにこの時点で勝敗は決していた。決していたが、野生に生きる者は『潔く』などない。かつてのアクシーズと同じく、どれほど勝ち目がなかろうと、無様だろうと、最後まで生きることを諦めることはない。死ねばすべてが終わりであることを悟っているかのように。生きていてこそ意味があるのを知っているかのように。


それでも、限界はある。死は訪れる。再び(ばん)に蹴り飛ばされ地面を転がった猪竜(シシ)はなおも起き上がろうともがく。それに対して(ばん)は容赦なく頭を何度も踏みつけ、とどめを刺した。


頑強な頭蓋は砕けなかったものの、目は飛び出し、皮膚は割け、頚骨は折れ、あらぬ方向に捻じ曲がり、そして遂にぐったりとなった。


(ばん)の勝利だ。後はゆっくりと食事に……とは、いかなかった。いつの間にか(ばん)の周囲を、ボクサー竜(ボクサー)が取り囲んでいたのだ。


それは、最近、ボスが交代した群れだった。新しいボスは恐ろしく強く、凶暴で、そして頭がおかしかった。


普通なら、健全な状態のヒト蜘蛛(アラクネ)を真っ向から襲ったりすることはまずない。体調が悪かったり疲れていて動きが鈍っている時を狙ったりはすることもあるものの、逆を言えばそうじゃない時に狙うことはないのだ。


なのにその<新しいボス>は、巨大猪竜(シシ)と戦って疲れている可能性はあっても劇的に動きが鈍っているわけでもない(ばん)を狙ってきた。常識的に考えれば無謀にもほどがある。


が、その<新しいボス>に率いられた群れは、まるでボスの凶暴さに()てられたかのように、<普通>ではなかった。


「ルルルルルルルルルル」


「ルルルルルルルル」


「ルルルルルルルルルルルルルルルルル」


喉を鳴らしながら、じりじりと近付いてくる。そこに、恐れや惑いは見られない。確実に獲物を仕留めようという執念があるだけだ。


そして、数が多い。普通のボクサー竜(ボクサー)の群れは、十頭から十数頭のはずだが、今、(ばん)を取り囲んでいるのは、少なく見積もっても二十頭以上いる。数が多いことで、もしかすると気が大きくなっているのかもしれない。


確かに、群れとしてのボクサー竜(ボクサー)の連携は侮り難いものがある。群れの連携が完璧であれば、その攻撃力だけならヒト蜘蛛(アラクネ)にも勝るとも劣らないだろう。その代わり、連携が崩れれば個々の力ではまったく敵わないので、あっという間に蹴散らされてしまう。ゆえに万全なヒト蜘蛛(アラクネ)に挑むことはまずないのだ。


それを、数の力で押し切ろうというのだろうか。新しいこのボスは。


それがどうかは、今から分かる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ