絶対の自信
互いに<必殺の一撃>が相手にダメージを与えられなかったことで、蛮と巨大猪竜は再び睨み合うこととなった。
蛮はやはり体を上下させてタイミングを計り、猪竜は前足で地面を掻いてこちらもタイミングを計る。
初撃はダメージを与えられなかったが、互いに『次こそは』と思っているのだろう。人間ならばあれこれ考えてしまうところかもしれないにしても、野生に生きる者達は自身のそれに絶対の自信を持っているということだろうか。躱されたのなら当たるまで、ダメージが通らなかったのなら通るまで、何度でも食らわせてやるということかもしれない。
そしてまた、空気が張り詰め、それが弾けそうになった瞬間、二頭はまたも同時に攻撃を仕掛けた。となると当然、猪竜は自身の頭を叩きつけようとする。それをまたも蛮は空中に跳び上がり躱した。
が、前回は空を切った猪竜の頭が、蛮の、本体側の腹を捉えた。体が完全に伸び切ってほぼ勢いが失われた状態だったものの、完全に空を切ってしまった前回と違い、さらに思い切り高く頭を跳ね上げたのだろう。
すると、蛮の方は今度は、空中に跳び上がってきた猪竜目掛けて、本体の脚を叩きつけたのだ。ちょうど、跳び上がる動きに対してのカウンターになる形で。
それが、空中で体が伸び切って無防備になった猪竜の腹を捉えた。猪竜も蛮の腹を捉えたが、蛮も猪竜の腹を捉えたのだ。しかも、確実に最大の威力になる形で。
猪竜も、全身がくまなく頑強なわけではない。ヒト蜘蛛の腹が弱点であるように、猪竜もまた、腹は他の部分に比べると比較的柔らかかった。そこに突き立てるように蛮が蹴りを食らわしたのである。地面や木の幹及び枝をしっかりと捉えるように鉤爪状になった蛮の脚の先を。
それは猪竜の腹の皮膚と筋肉を突き破り、引き裂き、内臓をぶちまけさせた。
確実な致命傷だった。
<腹の下>という、視界という意味では確かに死角に当たる位置にいた猪竜を、蛮は、全身に生えた細かい毛を<流体センサー>として利用し空気の流れを把握。そこに近付く猪竜を確実に捉えて、狙って蹴りを当てたということだ。
まあ、それが猪竜の腹であったことは、確かに<まぐれ>だったが。
だが、<まぐれ>だろうが何だろうが、相手に致命傷を与えたのであればそれは<勝ち>だ。
にも拘らず、猪竜は、内臓をぶちまけつつ地面に叩きつけられながらも、体を起こしてきた。すさまじい生命力。
けれど、さすがにその動きには、以前のキレはなく、さらに繰り出された蛮の蹴りを躱すこともできなかったのだった。




