表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/97

強敵

その日、(ばん)は、<強敵>と対峙していた。その彼の前には、


「フゴッ! フゴッ!!」


と激しい鼻息を立てる、まるでごつごつとした岩のような影。


猪竜(シシ)だった。しかし、猪竜(シシ)なのは確かなのだが、明らかにおかしい。


密林に暮らす猪竜(シシ)の種は、いわゆる<ミニブタ>程度の大きさが普通だった。体重も精々五十キロ程度だ。なのに<それ>は、確かに猪竜(シシ)の姿をしていながらも、サイズがまったく違っている。少なく見積もっても百キロは超えていそうな大きさなのだ。


実は、草原に暮らす猪竜(シシ)の種は大型化する(もしくは逆に密林で暮らすようになったことで小型化した?)傾向にあり、百キロを超える個体も少なからずいるものの、密林に住む種でこの大きさは明らかに普通ではなかった。


草原に住む種が密林に住むようになったことで、より小回りが利き物陰に身を潜めるにも都合がいいように小型化していったのだとすれば、これは一種の<先祖返りした個体>ということかもしれない。


そして、物陰に身を潜めるには不利なこの巨体でここまで生き延びたということは、それだけ強いということなのだろう。襲い掛かる天敵を退けてこれるくらいには。


それもあってか、決しておとなしいわけではない猪竜(シシ)の中にあっても、ひときわ凶暴そうな顔つきをしていた。


やや緑がかった肌。頭部と鼻先は、得意とする<突撃>の際の衝撃から守るためか、分厚い鱗が装甲のように皮膚を覆い、これがまた凶悪な面構えを一層凶悪に見せている。


明らかにただの<被捕食者>の顔付きではなかった。間違いなく捕食者(プレデター)のそれだった。


体重約二百キロの(ばん)をも喰らってやろうという気概がそこにはあった。


が、当然、(ばん)も喰われてやるつもりなどない。自分の前にこうしてわざわざ出てきたのだから、喰ってやらねばなるまいと、こちらも必殺の気概を全身に滾らせ、隙を窺っている。


両者の間に挟まれた空気が、メリメリと音を立てて軋むような錯覚さえ起こしそうだ。


そしてそんな光景を、バドは、少し離れたところから観察していた。その体に小さな虫がたかる。(ばん)猪竜(シシ)の様子に比べ、こちらは実にのんびりとした空気感だ。目の前の光景自体が、日常のそれだからなのだろう。今さら恐れるまでもないというところか。


しかし、(ばん)猪竜(シシ)は当然、互いの命を懸けて向かい合っているのであり、猪竜(シシ)は、前足で地面をガリッ!ガリッ!と掻き、必殺の突撃を食らわせるタイミングを計っていた。


一方、(ばん)の方も、ヒト蜘蛛(アラクネ)としての本体の方を小刻みに上下させて、やはり襲い掛かるタイミングを計っているのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ