数年後
「また、無碍な断り方をして…相手の方が気にしてなかったからよかったものの」
眉間にしわを寄せる彼に、少しだけ困った顔を作る。
「ごめんなさい」
「全く、貴方もいい年なんですから、結婚を意識して行動してください」
いい年という言葉に反応しかけたが、ここでことを荒げることに意味はない。
「わかっているわ」
ねぇ、声をかけて話を切り替える。
「私に欠点はある?」
「山のように」
少しムッとするが、うまく流してこそ淑女。
「すぐに直すわ。教えてくれないかしら」
そういうと、彼は私の体を頭から足の先までじっくりと吟味する。
「ありません」
自信はあったが、内心ほっとする。
「ヨハン、向こうに父がいるわ」
ちらりと目線を送って言うと、彼は知っていたようですぐに頷いた。
「はい、それが?」
私は彼の前に手を出す。
「この手をとって、父のもとに行って」
「……」
息をのむ音が聞こえた。はじめて彼が驚き固まる姿を見た。これは貴重な瞬間だ。
「貴方ならこの意味はわかるはず。…そして、私の意思も」
彼は私の真意を探るように、私の瞳を見る。舞踏会の途中、王である父がいるのにもかかわらず抜け出してまで、一教育係に会いに来た。隠しようもないでしょう?
「仕方ありませんね」
彼の方から手を出す。その手に手を重ね、ともに歩く。
隣を歩く彼は、緊張が隠せないようだ。
その表情がおかしくて、笑ってしまう。
最初から、私の可能性を見つけてくれたのは彼だけだ。
そして、喚き散らすだけの子供だった私と踊ってくれた人も、
これから先を、夢見て、一瞬だけ目を閉じる。
どうか、この手よ、永遠に




