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第5話 開かれる扉

――討伐されたゴブリンたちが次々と淡い光になって消えていく。


「よしっ。こんなもんか。けが人はいないか!?」


 ガウスが周囲のパーティに呼びかけをする。

俺はもちろん無傷だ。――何もできず後ろにいただけだしな。


「ミコトお前は・・っ!?おいっ!!後ろだっ!!!」


 ガウスが鬼のような形相でこちらに向かって叫ぶ。咄嗟に後ろを振り返るとゴブリン級がいた。

 いや先ほどまでのゴブリン級と違い、一回り大きく、黒い肌に、石の槌と傷だらけの盾のようなものを身に着けていた。


「おい・・。あれって、ゴブリンスミス・・だよな?」


「なんでこんな人気のある場所の、しかも浅い場所に居るんだよ。」


 周りの冒険者たちが戦慄している。


 確かに分かることは、俺なんかがそもそも対峙していい相手じゃないってことだけだ。そんなことも意に介さずに、ゴブリンスミスは大きな槌を振り上げる。


「させるかっ!!【雷霆】!!【豪胆突き】!!!」


 次の瞬間、離れた場所にいたガウスが一瞬の稲光とともに俺の前に現れ、長剣に鮮やかな赤いオーラを纏わせながら相手の心臓部に強烈な突きを放つ。


 「グギャアアァァァっ!!」


 ゴブリンスミスは盛大な悲鳴を上げながら、地面に倒れていった。


 しかし、淡い光になって消える様子もなくその手にはまだ武器を握ろうと足掻いていた。


「っ・・!仕留めきれなかったか。すまん!!ミコト、俺はスキルの影響でまだ少し動けん。

 あいつはもう虫の息だ。お前の力でも喉元に剣を刺せば倒せる。お前がやるんだっ!」


 一気に感じたことのない緊張が走る。何せ虫の一匹すら自力で殺せたことが無いんだ。いきなり怪物、それも元は人間だというのだから何も感じないはずがない。


 それに相手はまだ足掻こうとしていて、その鋭い爪と強靭な腕からは、何かの拍子にぶつかっただけでもこちらの命が無いであろうことは容易に想像できた。


 周りの冒険者たちが急いでフォローに駆け付けようとするが、ガウスがそれを制止した。


「俺もミリアもこいつの可能性を確かめたいんだ。だからとどめを任せるんだ。」


――そう言われた瞬間、不安以上の何かがこみ上げた。

今まで誰かに何かを期待されたことがあったか?


 生きているだけで精一杯で、やっと生まれ変わったこの体でまた生きるだけでやっとの生活を送るのか?そう思ったら、体が自然と動いていた。


「そんなのはもうイヤだっ!!どうせ死ぬなら懸命に戦い抜いて俺は死ぬっ!!!」


 一気にゴブリンスミスに近づき、喉元に長剣を突き刺す。ゴブリンスミスは最後の力を振り絞ろうとするも、乾いた呼吸と濁った血液を吐き出しながら淡い光となり散っていった。


「っ、やった・・・俺、やったんだ・・・。」


 周囲からよくやったという歓声に似た掛け声がかけられる。だけど素直に喜ぶ気にはなれなかった。まだ手には肉を貫き、間違いなく相手を絶命させた感触が残っていた。


「あいつらは二度と人間には戻れん。それに放っておけば、あの照明に蓄えられているようなスキルエネルギーの残滓を貪り増殖してしまう。

 さっさと楽にしてやるのがせめてもの手向けだ。」


 ようやく動けるようになったガウスが、俺の肩を優しくたたき慰めてくれた。それとほぼ同時に俺の前にメッセージウインドウが現れる。


【レベルが1からレベル16に上がりました。】

【転生スキル―「命定められし者」がLv0からLv1に強化されました。】

【真魔スキル―ゴブリン級のBランクスキルまでが習得可能になりました。】


「おぉっ!よくわかんないけど一気に上がった!!ありがとうございますガウスさんっ!!」


「もう一緒に命預けた仲だ。砕けた言い方でいい。それより何がどう変わった!?すまんが早く教えてくれ。」


 ガウスがこちらへの心配をよそにぐいぐい迫ってきた。


「あ、あぁ。ちょっと待ってよ。ええとまず転生スキルだな。」


【命定められし者Lv1】

―HPが強制1になる。全てのスキルの習得が可能。

HP以外の成長率が倍化する。

スキルの強化と維持以外の代償が不要になる。

※このスキルは無効化されない※


「こりゃすごい、習得代償なしであらゆるスキルを使えるのか。まぁ発動や維持を考えると今のレベルではまだ足りんだろうが。してステータスの方はどうなってる?」


「そうだな。えぇとステータスは・・・。」


 おぼつかない指先でウィンドウのコマンドをスライドしていく。



ハタノ ミコトLv16

HP-1

MP-40

力-48

知-46

速-44

体-41

運-52


「えっと・・これって数字的にどうなんだ?」


 ガウスがえらいもんを見たと言わんばかりの表情で答える。


「そのレベルではまずありえない数値だな。

パラメータってのはレベルが上がったら、スキル補正でもない限り普通はどれか一つが1上がるようなもんだ。

 それで考えると――」


「考えると?」


「実質お前さんの実力は既にレベル3~40帯は超えるということだ。」


 すると周りの冒険者からもどよめきが起こる。


 ただまぁ、肝心なことを忘れてはいけない。あくまでも1ダメージも受けないならの話だ。なのでハイステータスでごり押しが出来るかと言われればそうじゃない。


 油断してたところを、さっきみたいに不意打ちを食らえばカウンターも何もなく一命が終わる。


「それよりもミコト、肝心な部分なんだが。」


 そうだ、俺も気になっているものがある。

メッセージウインドウに示された「ゴブリン級のBランクスキルまでが習得可能になった」件だ。


「ん?なんかスキルコマンドの部分が変化してるな。これは・・・」


 そのスキルの解放こそが、俺の運命を大きく変えることになるとはこの時はまだ考えもしなかった。

拝読いただき厚く御礼申し上げます。

応援、評価頂けると幸甚です。

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