第4話 スキルの世界③
町はずれの坑道に着くと、傷を負った炭鉱夫たちが入り口でたむろしていた。
先頭を行くスキンヘッドの大男が状況を確認し、中へ入っていくのを俺たちも後ろから続く。
坑道というからもっと薄暗い場所を想像していたのだが、道は舗装され照明はガラス球にまばゆい光が瞬いていた。
「思ったより人工的なんだな。」
「それはそうよ。ここは町の工業製品に必要な金鉱になっているのだから。
それにこの照明器具とかも、転生者たちが持ち寄った知識やスキルを元に整備されているわ。」
あぁそうか。転生者は俺だけじゃないって話だったもんな。元の文化レベルがどうだったのか知らないが、こういう生活必需品の発明とかできるならそりゃ重用もされるよな。
「もうそろそろで接敵する。・・・ミリアも着いてきてたのか。悪いがお前は、、、」
言い終わる前にミリアが言葉を遮り発言する。
「ええ。私は今回の戦闘には入れないからここで待機するわ。その代わり彼を連れて行ってもらえる?」
ミリアは言いながら俺の方をちらりと見る。
「そいつは?」
「転生者よ。この世界のことを説明がてら連れてきたの。あぁ、ちなみに戦闘の方はまだできないからお守りはよろしくね。ゴブリン級相手なら簡単でしょ?」
ミリアが淡々と言ったことに対し、やれやれとため息をつきながら大男が答える。
「まったく相変わらずの物言いだな。まぁでもお前さんが他人の世話を焼こうなんて余程のことだってのは分かってるつもりだ。
良いぜ。そこの坊ちゃん、俺はガウスってんだ、お前さんは?」
ミリアからこちらに視線を移し、ガウスと名乗る大男は尋ねてきた。
「はたっ・・、ミコトです。ついさっきこっちに来たばっかで、何が何だかってレベルですがよろしくお願いします。」
ガウスは値踏みするように全身を見ながら聞いてくる。
「まぁ、そうは言っても転生者なら上等なスキル1つは持ってんだろ?」
「えぇっとですね、なんというか俺のスキルはHPが強制で1になるようなもんで・・・。」
すると即座にガウスは顔をしかめて反応する。
「HP1だぁ!?それじゃてんで戦いじゃ使い物にならねぇじゃねぇか!!!」
はい。ごもっともです。
自覚はしてたけど、改めて他人の反応見ると余計に事実を突きつけられるな。
「おい、ミリア。いくら何でもこれじゃ話変わってくるぜ。」
しかしミリアは真剣な顔でガウスに返す。
「けれど彼は、いかなるスキルも習得できる能力持ちよ。」
その発言が出た途端、ガウスを含めた周囲の冒険者たちも驚きを隠せないといった反応を見せた。
「・・・そんなのアリか?」
「なんでも習得って、好きなようにスキルセットできるってことだよな?」
「それ以前になんでも可ってことは、スキルの相反が起きないってことだろ。」
「そっちの方がやべーよ。持ってるだけで特権階級じゃねぇか。」
すぐに鋭いまなざしでガウスが確認してくる。
「確認だが、お前はさっき転生したばっかりだからレベルも何も育ってない状態だよな?」
「そうですけど・・・。」
困惑しながらそう答えると、ガウスはすかさずウィンドウを開きこちらに近づく。
「お前は俺のパーティメンバーとして入れ。戦闘は後ろで見ているだけでいい。が、何も無いってのもなんだ。俺のお古になるが使ってくれ。」
そういうと、俺の目の前にメッセージウィンドウが表示される。
【軽鉄の長剣【D】となめし皮の鎧【D】と軽鉄の小盾【D】を入手しました。】
「いいんですかっ!?何の役にも立たないのに・・・。」
「いいさ。俺としても持っている重騎士スキルで仲間をかばうことが出来るには出来るが、防御に回すスキルはほとんど取ってない。悪いが万が一の際は自力でどうにかしてくれ。」
とりあえず俺は自分のウィンドウから貰った武具を装備する。すると装備した武具が体に身に付き、視認できるようになった。
「万が一が起こらないことを祈るしかないな。」
「時間をとったな、気を引き締めて一気に行くぞ!!」
ガウスの掛け声とともに、坑道奥の開けた場所に出る。そこには、まさしく魔物といった姿のゴブリンたちがひと際大きい照明器具に群がっていた。
「本当に魔物だ・・・。」
俺が初めての敵に驚いていると、信じがたいことをガウスが言った。
「いや、あれは人間だ。正確には元人間だがな。俺たちは真魔と呼んでいる。」
「っ!?、どういうことですか?」
「ミリアからスキルの話は聞いているんだよな?なら奇貨スキルのことも聞いたな?
あれはな、自身の身に余る奇貨スキルを内包したせいで人の命を保てなくなった姿だ。」
――奇貨スキル。多大な代償を必要とするスキル。
ミリアから人であることを捨てることと聞いていたが、まさか本当に人でなくなるなんて。
「心配するな。ゴブリン級なら元のスキル資質が低い人間だろうから、今の人員なら大した敵にならん。」
ガウスはこちらの不安を察したのか、なだめるように言葉を発した。
「よしっ。それじゃ俺が大勢をまとめて薙ぎ払う。ばらけたところを遊撃パーティで撃破してくれ。そんじゃ、いくぞぉっ!!!」
ガウスが掛け声とともに、軽く人一人分の重さはあるだろうかという鎧姿で高くジャンプする。
間髪入れずにゴブリンの群れに背の丈ほどの両手剣を叩きつけ、一気に横一線に薙ぎ払う。
「よしっ!!態勢を崩したぞっ、狙え!!」
ガウスの脇に控えていた遊撃パーティが、まともに立つこともできなくなっているゴブリンたちに手際よくとどめを刺していく。
ものの数分だろうか。山のように群がっていたゴブリンのほとんどが綺麗に殲滅されていった。
「なんだ、これなら大丈夫そうだな。」
俺は完全に油断していた。
―――背後に迫る脅威に一切気づかないほどに。
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