第3話 スキルの世界②
「まず何から聞きたい?」
飲み物だけでなく、食事まで馳走になることになりメニューを頼んだ後でミリアから切り出してきた。
「やっぱりまずはスキルのことかな?生きてくのに必須みたいだし。」
「そうね、それじゃ基本的なところからで、スキルには数種類の系統があるわ。
まず生来スキル。これは生まれ持った時に与えられる固有スキルよ。」
メニュー表を脇に避けながらミリアは続ける。
「概ねこれはステータスの数値を加算したり発動スキルの補助や補強だったり、個人の得意分野を伸ばすような特徴を持つことが多いわ。」
「なるほど、いわゆる才能だとかポテンシャルみたいなもんか。」
「ええ。ただこの生来スキルは血統や生まれが強く絡んでいて、1人1つまでしか発現せず、高ランクスキルは高ランクスキルを持つ親からしか生まれないわ。」
つまりは生来スキルがハズレなら、努力で他のスキル習得を目指すしかないわけだ。
「次に職業スキルね。これは文字通り職業に就くことで得られるスキルよ。」
ミリアは周りの戦士や弓使いを指差しながら説明をする。
「スキル習得や強化の方法は職業に就いてから指定条件まで本人のレベルを上げたり、特定スキルの熟練度を上げて認定試験のクリアをした場合ね。」
まぁ確かにこれは分かりやすいな。
職に就いてから経験値を稼いで、難しい技だのなんだのは相応の試験を突破する実力がないと閃くことも使うこともできないってことだもんな。
「まぁ職業に関しては、最初に説明した生来スキルとも関連があるわね。
例えば生来スキルが魔法特化の特徴なら、ほとんどは魔法職を選択するとかね。」
「生来スキルが魔法でも、例えば物理職みたいなのに就いて両刀使いみたいなこともできるのか?」
すると彼女の表情が少し曇る。
「えぇ。そうね、やろうと思えば出来るかもしれないけど・・・。」
何かバツが悪そうだ。
何となく気にはなっていたが、ここまでの説明なら確かに大当たりのスキルさえ引き当てれば、この異世界で最強スキルで無双するなんてこともできるだろう。
「スキルは生来スキル以外では、発動であったり強化やそもそもの所持に代償を必要とするの。」
真剣な眼差しで真っ直ぐに俺を見つめてくる。別の意味でも生唾を飲み込んでしまった。
「低ランクスキルなら発動にはMP消費だけとか維持は肉体の健康を保つだけとかで済むけれど、発現自体が難しいスキルはそうとは限らないわ。」
「もしかして俺のHP1ってのも代償なのか?」
「本来代償についてはウィンドウで確認されるわ。
ミコトの場合、スキル効果としてHPが1にされているようだから代償ではないわね。
そもそも転生スキルは生来スキルの代わりとなるものだから、同じように代償が要らないはずだもの。」
そうなるとますます厄介だな。スキル効果でデメリットが付いているなんてやっぱりハズレじゃないか?
「それとあなたがさっき言っていた、生来スキルと職業スキルを別方向で伸ばす方法だけれど、そもそも生来スキルと系統を別にするスキルは普通の方法では習得と発現すらできないから叶わないわ。」
つまり努力でスキルを得るにしても生まれ持った適性の中でしかやりくりできないわけか。
そう考えると転生しただけで、ノーリスクの固有スキルにありつける転生者ってそれだけで相当有利なんだな。
「でもいま普通の方法ではって言ってたけど。」
ここに来て彼女の顔が一段と険しくなる。
「説明した2種類以外の方法、最後の3つめが奇貨スキルよ。これに関してはどうやったら習得条件を満たすのかが一切わかっていないわ。」
「ただ分かっているのは強力な効果であることと、多大な代償を求められるということよ。」
「多大な代償・・・。例えばどんな?」
「そうね。極端な例で言えば、人間であることを捨てることね。」
彼女が言い終わるか否かのタイミングで、入り口の扉が勢いよく開かれる。
「おいっ!!また町はずれの坑道に出たぞっ!!戦闘が出来るやつは手伝ってくれ!!!」
見事に手入れされたスキンヘッドに、こんがりと日焼けした肌、筋骨隆々で背には身の丈ほどもあろうかという両手剣を担いだ男が、フロア全体に響き渡る怒声を放つ。
呆気に取られている俺をよそに、武具を身にまとった冒険者たちが一斉に武器を担ぎ身支度を整え始めた。
「今度は何だ?こないだみたいなオーク級か?」
「オーク級だといま魔法職が出払っているから苦戦必至だぞ。」
冒険者たちがスキンヘッドの男の近くでウィンドウを開きながら尋ねる。遠目でしか見えないが、どうやらパーティ設定やスキルの確認をしているらしい。
「いや、ゴブリン級だからそこまで身構える必要はないが、何しろ数が多いもんでな。」
ひとしきり準備が終わったのか、冒険者の集団は扉の外へ一斉に駆け出していく。
「なんだったんだ?オークとかゴブリンとか言ってたけど魔物が出たのか?」
自分でそう言っておきながら草原での出来事を思い出す。確か草原で聞いた謎の声の話ではこの世界は人間しかいないみたいな話じゃなかったか?
「説明するより直接見に行った方が早いわね。私たちも行きましょう。」
「いや、俺HP1しかないのにそんなとこ行って大丈夫なのか?」
「あれだけの数の冒険者が居れば後方に入れば大丈夫よ。」
そう促され、俺も坑道へと向かうことになった。
ミリアはああ言ってはいたが、正直不安しかない。けれども何もしないままでは何もわからないままだ。
深呼吸を何回か繰り返してから、駆け足で冒険者の集団を追う―――。
拝読いただき厚く御礼申し上げます。
応援、評価頂けると幸甚です。




