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第38話 継承

―ルカが寝ぼけた様子で起き上がってくる。


「んんぅ・・?ここどこっスか?」


「ルカっ!!!」


 ミリアが勢いよく抱き着き、ルカが息苦しそうにしている。その直後に操作していた機器の画面から短い電子音が鳴る。


【厄介な奴を始末してくれた礼に今回は使うことを許可したが、これは人間の手には余るものだ。他の人間にも知られた以上、この施設は破棄させてもらう。】


―バチンっ!!


 機械類から火花がはじけ飛ぶと同時に、明らかに危険を知らせるアラーム音が部屋中に鳴り響く。


「話は後だっ!!みんな部屋の外に出ろっ!!!」


 全員で一斉に外へ駆け出す。ルカはまだ体がおぼつかないのか、ガウスが抱えて一気に飛び出していった。

 全員が問題なくダンジョン然とした景色に辿り着くころには、その部屋は崩れた岩盤に押しつぶされもう立ち入ることは出来なくなっていた。


(さっきのメッセージは一体誰だったんだ?少なくともあの部屋、というよりあの機械について理解している存在なのは間違いないだろうけど・・・。)


「結局何なんスか?自分、あの教会の人にやられてからの記憶が無いんスけど・・・。」


「この中で分かる人なんていないよ。とりあえず俺たちもルカも無事だってことくらいしか。」


 操作を実行した俺ですらあれが何なのか知りたいのに、他の面子からしたらもっと意味が分からないだろう。

 そもそもこの世界ってスキルみたいな未知の力はあるけど、あんな簡単に蘇生ってあり得るものなのなのだろうか?


「なぁミコト、今見たことだが教会の連中はボス戦での予期せぬ事故に巻き込まれて死んだってことにして、それ以上の報告はこちらではしないことにする。」


「いいのか?そんなことして。」


「・・・ミリアも連れている以上、そうしておかないとお前らどころか王都に居る女王様の立場も悪くなる。それに、今まで起こったことなんて俺の脳みそじゃ説明しようもないしな。」


 またしてもガウスには大きな借りが出来てしまった。それでもやむを得なかったとはいえ、人間の命を初めて貫いたあの感覚は俺の中ではずっと消えないままだろう。


 ガウスは国と自治領両方の共同依頼ということもあって、簡易の転移アイテムを持っていた。

 それにあやかって俺たちも一緒にダンジョンの外に出ると、いきなり差し込む日光に思わず目を開けていられなくなる。


「それじゃあ俺はこれから報告に戻る。・・・死ぬなよお前ら。」


 ガウスが背中越しに手を振りながら去っていくのを見送ってから、俺たちも町に戻ることにした。


「流石に疲れたし、町方面の馬車に相乗りさせてもらうか。」


「そうね。今は戦闘とかちょっと考えたくないわ。」


 道中は誰も口を開かなかったが、それは疲れというよりも各々何か考えていることがありそうだ。

 かくいう俺もダンジョンの中で経験した場面を何度も脳内で繰り返しているが、いまだによく分からない。


「今日はもう休んで、明日エリゴールさんに今日あった出来事を話して整理をしよう。」


 町に戻った後、俺たちはあまり会話もないまま今後のことは識者も交えて話をすることにした。

 というのは少し言い訳もあるかもしれない。きっと誰も、自分の口から今日あったことを話す勇気が出ないのだろう。


――翌朝。


 折角の宿の食事ということもあって、無理やり腹に朝食を詰め込んだ後でギルドの集会所に向かう。

 奥まった部屋の扉を開けるとエリゴールさんは何やら書類に目を通しており、まさしく仕事の最中といったところだった。


「おや、皆様方。このような朝早くから精が出ますな。」


「おはようございますエリゴールさん。実はどうしても聞いてもらいたい話がありまして・・・。」


 俺たちはダンジョンでの出来事を出来るだけ詳細に話した。・・・トマスたちのことも含めて。


「ふぅむ。死者を蘇らせる装置ですか・・・。いや、話を聞くに、単純な蘇生というよりも転生そのものに近いですな。もしそうならば、その部屋にあった装置というのは先史時代の神の遺物やもしれませんな。」


「ぅえっ!?自分やっぱり死んじゃってたっスか!?」


  何となく分かっていても、ルカは驚きを隠せないようだ。


「いやはや。そもそも死と世界の理など、我々人間には解き明かすことはできないものゆえ何とも表現し難いですな。」


 エリゴールさんといえども、伝聞だけでは何とも答えようがないといった様子だ。


「ああ、あとそういえば気になることがありまして。俺のレベルが上がった時に職業の成長限界が近づいてるって出てきたんですけど。」


「そういえば自分も今までのスキルが使えなくなってるっス。」


「ふむ・・・。ミコト殿は以前に〈宿世の天盤〉で見定めて反応が無かったはずでしたな。ルカ殿に至っては・・仮に神の秘術とでも言いましょうか。それによって最適とされた人物の情報を元に復活をしたと。」


 エリゴールさんはひとしきり考えるような素振りを見せて、部屋を何往復化すると再び俺とルカの方へ向きなおした。


「・・・突拍子もない言い方にはなりますが、普通ならば転生者といえど命があってそこに後付けでスキルが宿るものです。

 あなた方の場合は命そのものがスキルとして調整された、あるいはスキルと同化した結果として常識の枠からは外れているのやもしれませんな。」


「それって以前仮説だとおっしゃっていた・・・。」


「いかにもその仮説に基づいた推測にすぎません。所詮私も人間ですからな。神々の考えることや、ましてや先史時代の技術について確信を持ってお答えできるものなどございません。」


 エリゴールさんはこう言っているが、正直近しい答えなのではないかと俺は思った。

 なぜならあの部屋で行われたことは治療というよりも、データの復元や何かをこの世界で再現しようとしていると言った方が正しいような気がするからだ。

拝読いただき厚く御礼申し上げます。

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