第34話 変異
―トマスとガウスが一気にとびかかり戦端を開く。
「【閃聖光撃】!!」
「【雷霆】!!」
トマスの全身が煌びやかなオーラに包まれ、まるで流星のような一閃の光となり敵に突っ込んでいく。
そこに合わせる様に、かつてゴブリンスミス戦で見せた、一瞬の稲光のような高速移動からの突撃攻撃をガウスが仕掛ける。
間違いなく上級クラスの高ランクスキルが不気味な球体に凄まじい衝撃を与え、表面を歪めながら悲鳴なのか衝撃音なのか分からないようなうめき声が上がる。
「よし、もういいっ!スキルの反動が来る前に離脱するぞ!!おまえたち、かかれっ!!」
トマスの号令を受けた教会の人たちが袖をまくり始める。そこには何やら不思議な紋章のような刺青が入っていた。
「「「奇しくも輝く神の奇跡よ顕現せよ!!」」」
教会の集団が一斉に叫ぶと、敵の周囲に赤い光を放つ魔法陣が出現する。
(あれが奇貨スキルなのか?あの光、神の恩恵どころか危険信号のアラームにしか見えないぞ!?)
次の瞬間、
――ドガッ、、、キィイイィィィン。
巨大な敵の体躯が見えなくなるほどの爆炎と崩壊が起きる。相当な爆発音からか、最初の衝撃音以降は耳鳴りでまともに音が聞こえない。
「くっ!どうなったんだ!?みんなぶじかっ!?」
少し離れたところでミリアとルカが手を振っている。どうやら状態はみんな同じようだ。
爆発による粉塵が収まり始めたころ、どうにか聴力が戻り始めた。
「・・あぁ、うぅぅ。」
変なうめき声がする方を見てみると、教会の人たちの体から禍々しいオーラが出ている。
(あれは・・間違いない!真魔が纏っているオーラそのものじゃないか!!)
敵の球体は滅するまでには至っていないが、溶けたアイスのようにドロドロとなっており触手は完全に焼き尽くされている。
「よくやったお前たち。教会本部までは保ちそうか?」
「・・いえ、先の戦闘での消耗もあるようで・・ここまでのようです。申し訳ありませんが、家族には・・・」
「・・・ああ。立派に戦い、神に尽くす者として民の安寧を守り抜いたと伝えておこう。」
トマスは表情を変えず、言葉や立ち振る舞いは整然としたままだった。
そして禍々しいオーラを纏った教会の人たちは、懐から怪しげな薬瓶を取り出すと一気に中身を飲み干し敵に向かって駆け出した。
「ううぅぅぅ、ガアァァァ!!!」
走り抜ける途中でその姿は瞬く間に真魔へと変貌していく。怪物のような姿になっても目標を変えず突っ込んでいき、ついに敵に総攻撃をかけた。
一方で俺たちはあまりの光景に誰も言葉を発することができないままでいたが、その沈黙を許さないかのように敵の溶けた体から吸盤が付いた無数の触手が出てきた。
「なっ!?まだ削りきれてないのか!?」
その無数の触手は吸盤から光線を放ち、群がる元人間たちを焼き払っていく。
「うう・・。見てられないっス。」
「これはもう戦いとは呼べないわ・・・。」
真魔と化した教会の人たちは命が尽きると同時に淡い光となって消えていく。
「あの状態なら厄介な防護スキルも働いていない。一気に終わらせるぞ。」
トマスは冷静だ。いや、冷酷と言ってもいい。あの球体の状態が、防護スキルが働いていることを知っていて奇貨スキルを打たせたのだろう。
「ああああぁぁぁぁ!!!」
俺はいてもたってもいられなくなり、MPの限界まで習得していた魔法スキルを触手に向かって放つ。
「ほう。お前は他のボンクラどもとは違い、動けるようだな。」
(ふざけるな!俺だって好きでこうしているわけじゃない!!)
ただ、何かしなければここまで命を懸けた人たちに申し訳が無いと思っただけだ。
一時的に触手からの光線が止むと、皆も一斉に攻撃を仕掛けた。
これでそれぞれのパーティが触手と対峙する形となり、各々が戦いに身を投じてはいるが誰も言葉らしい言葉を発しない。歴戦のガウスですらこの状況を飲み込めないようだ。
「はぁ、はぁ・・・触手はどうにか片付いたか。」
一心不乱にスキルを放って戦ったせいかとてつもない疲労感が体にのしかかっていたが、おそらく体が重いのはそれだけではないと直感的に思った。
「約束通りトドメは私がもらう。【破魔陽波刃】っ!」
トマスがオレンジ色に発光し始めた剣を大きく振りぬくと、巨大な光の波紋を形成し敵の本体を覆うように直撃する。
スキルの直撃と同時により強い閃光を放ち、ボスの消滅の光と重なって光の破片は周囲に飛び散った。
(終わったのか?)
トマス以外は言葉を発しないままでいたが、戦闘の終わりによる安堵感からかそれとも別の理由による脱力感からか一人を除いては地べたに座り込んだ。
「待ちなさい、この外道!!」
ミリアだけは剣をトマスに向け、鋭い眼光で睨んでいた。
拝読いただき厚く御礼申し上げます。




