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第30話 三者三様

―その若者はすぐさまに刃を見せ、警戒の構えを取る。


 この反応を見ても、休憩所を超えてきた俺たちが、友好的な感情を持っていないことを織り込み済みの対応なのだろう。


「俺たちは、」

「冒険者よ。ちゃんと手続きをしてはいってきているのだから、とやかく言われる筋合いは無いわ。

 それよりさっき通ってきた休憩所がボロボロだったのだけれど何か知ってる?それとも何かしたの?」


 おいおい、いきなりそんな疑ってますみたいな態度取ったら余計に相手の敵意を煽るだけだろ。


「・・・休憩所?知らんな、我々は何事もなくここへ降りてきた」


「・・・そう。まぁまじめに答える気が無いのは分かってるからいいわ。今は構ってる場合じゃないし、先に行くわね。」


 しかしその瞬間、曇りなく輝く銀の太刀筋が視界を横切り俺たちを制止した。


「ふざけるな。妙な言いがかりをつけておいてその態度は何だ。詫びを入れてからだろう。」


「・・・仕方ないわね。私はミリシア、この国の王族よ。刃を突きつけるなら相応の覚悟をすることね。」


 ミリアは手に意匠がこったエンブレムを掲げているが、恐らく王家の人間であることを証明するものなのだろう。

 相手の聖騎士の周りにいた人間はそれを見るや否やどよめいている。しかし聖騎士の若者だけは、態度を崩すことなく毅然としたままだった。


「くだらん。それが本当だとしても、私のような信心深き人間が首を垂れる相手は教皇様のみ。それに、もはやこの国に民を救う力のない王族なんてものは要らん。」


 今までお姫様扱いされているところしか見たことのない俺にとっては驚きの発言だった。ただ、そんなことよりもこれは状況がマズくなってきている。

 自然な素振りで剣の柄に触れようとするものの、眼前の若者が放つ気配がそれを許してくれそうにはない。


「横のおまえ、下手な真似はするなよ。俺はこう見えてもAランクだ。見たところお前たちは高く見積もっても中級なりたて程度だろう。」


「・・・だったらなんだ?俺たちをどうするつもりだ?」


 目の前の若者は、めんどくさそうでありながらも高圧的な姿勢を崩すことはなく立ちふさがり続ける。


「・・・ふむ、正直ただの冒険者ならここでその冒険譚を終わりにしてもらうところだが、腐っても王女が居るのであれば手を上げるわけにもいかないか。」


 先ほどのミリアへの態度といい、こいつは王族に対して何か直接的なうらみでもあるのだろうか。


「・・・通れ、ただし見つけたアイテムを持ち帰ることは許さん。これは教皇様のお達しである。」


「はぁ!?それじゃ、ダンジョンに潜る意味がほとんどないじゃない!?」


 目の前の若者は、人を侮蔑《ぶべつ》したような目つきでそれ以上言葉を発することは無かった。

 入り口で声をかけてきた冒険者が他に行った方が良いと言ってきたのはこういうことか。


「・・・どうするっスか?引き返すっスか?」


 しかし、ミリアは無言ですたすたと前に向かって歩みを進めていく。

 特に何か言われたわけではないが、このまま立ち止まっていると針の筵《むしろ》なので俺たちも恐る恐る付いていく。


 重苦しい空気の中、若者の顔が見えなくなった辺りで、


「もう、なんなのあいつ!!何様だってのよ!?」


(いや、ミリアも大概だろって言ったら負けなんだろうか。)


「でもこれ以上進んでもアイテム持って帰れないならあんまり意味ないっスよ?これからどうするっスか?」


 真魔も出てくるような気配もないことから、あてもなく歩き続けることになってしまった俺たち。

 とりあえず先の休憩所が破壊されていたことから、別の休憩拠点を目指すことにした。


 階層を降りるたびに、人工的な道は途切れる様になってきたが電球のようなものがある以上は人の手があるということだ。なのでとりあえずは安心できるだろう。


 しばらく歩き続けると、人の集団が何やら話し合っている様子が見えてきた。見ると宗教的な装いの集団とギルドのスタッフだろうか?

 装備をしっかり整えてある様子から、これから戦闘にでも行こうかといった雰囲気だ。


「いくら上の命令とはいえ、これ以上はやめておけ。

今このダンジョンでは今までにないことが起こっている。先の休憩所を見ただろう?」


「そうはいかない。そもそもこの程度のダンジョンの異変などたかが知れている。我々の平均ランクはBランクだ。それに何かあれば、上にAランクのトマス殿が居る。」


 トマスというのは先ほどの聖騎士の若者だろうか?

そして教会の人間の相手をしている人物には見覚えがある。いや、見覚えというよりも恩人と言った方が良いだろう。


「ガウスっ!!!」


「ん?なんだ、また探索者か。受付は何して・・・?おまえ、ミコトかっ!?」


 久しぶりの再会に同時に満面の笑みをこぼす。

俺はあのときのお礼をガウスに伝えたが、気にしなくていいと照れくさそうに答えてくれた。

 

「ミリアも一緒ってことは、受付の話はちゃんと聞かずにここまで突っ切ってきたって訳か。だが、悪いことは言わねぇ、ミコトも連れてるなら今は出直せ。」


「Aランクのあなたが出張ってきてるってことは相当な何かがあったの?」


「ああ。この辺じゃ見かけることはないエリアボスがこのダンジョンに出現しやがった。それも複数体同時にな。」


 ということは、先の休憩所はそのエリアボスの襲撃を受けた後ということだったのだろうか。

 いずれにせよ、これからのことについて三者間で話し合う必要がある。


―教会側がまともに聞く気があるのであればという前提だが。

ここまで拝読いただき厚く御礼申し上げます。

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