第29話 空洞
―道中は至って順調だった。
ミリアは今までの憂さでも晴らすように、真魔の活性ポイントに飛び込んでは敵を千切っては投げるを繰り返している。
ルカはいちいち隠密使わなくていいから楽だとは言っていたが、その表情は若干引いていた。
俺も出来れば戦闘に参加するつもりだったのだが、ほとんどミリアが片づけてしまったので、スキルの収穫が無かったのだけが難点だ。
(ミリアの奴、俺のスキルのこと忘れてないよな?)
こないだの峡谷に比べれば、町から大した難しい道でもないためダンジョンの入り口らしいところにはすぐについた。見ると挑戦待ちのパーティが複数おり、ギルドの出張テントで受付とアイテム販売を行っている。
「殺伐としてるもんかと思ったけど、管理が行き届いてるところは案外テーマパークっぽい感じだな。」
「ここは初心者向けでもあるから、冒険者になり立ての人の慣らしも含めてよく使われてるしね。真魔の活性ポイントもあまりないから、はぐれたのが数体出る程度よ。」
「敵も道中より出ないのか、そうすると何を探索すればいいんだ?」
「まぁ確率は低いっスけど、スキルアイテムの発掘か聖遺物の発見がダンジョンの醍醐味っス!」
聖遺物・・・名前的にはいわゆるこの世界のオーパーツのようなものだろうか。俺がルカに聞き返そうとしたところ、唐突に後ろから若い男の声がした。
「おいアンタら、これからダンジョン潜って宝探しするなら別のところ行った方が良いぜ。
なんでもさっき、教会の聖騎士サマが集団連れて入って行ったって話だ。」
教会の・・聖騎士?ということは聖職者なのだろうがなんでまた教会がダンジョンに、というか騎士を抱えているってことは軍事組織化してるってことか?それもなんでまた・・・。
しかしミリアの表情が憂さ晴らしをした後とは思えないほど歪んでいるのを見るに、どちらも穏やかではないことであるのは確かだ。
「こう言ってるけどどうする?近くもう少し遠くを目指せば別のダンジョンもあるみたいだけど。」
「冗談!!あいつらの為に道を譲る必要がどこにあるのよ。さっさと手続きして潜るわよ。」
・・・だよな。俺たちはさっさと引き返していくパーティをしり目に手続きを済ませ、ダンジョンの中へと踏み入った。
中は微かな水滴が反響音を鳴らしていたが、まだ入り口であるからか人工的な道が整えられている。
それでも通常のフィールドとは明らかに気配が違った。気配が違うというよりも、気配がしない。
先ほどの冒険者の話だと集団が入っていったとのことだったが、より深くに潜っているということだろうか。
そんな違和感もお構いなしに、ミリアはさっさと進んでいってしまう。
「ボサッとしてないでさっさと行くわよ。あいつらにアイテム取られちゃうでじゃない。」
「う~、アイテムは欲しいっスけど、あの人たちニガテっス・・・。」
ルカは教会の人間を相手にしたことあるのだろうか。とりあえずミリアが急かしてくるので、急ぎ足でダンジョンへと潜っていった。
◇◇◇
しばらく潜っていくと、前もってミリアから聞いていたギルドが開設している休憩スペースのようなものが見えてきた。
しかしどうにも様子がおかしい。人が誰もいないどころか、各設備もところどころ破壊されているように見える。
「これは・・血痕か?なんでこんなところに。こういった場所で真魔に襲われることとかってよくあるのか?」
「それは無いっスね。基本的にダンジョンには適正ランクより一回り以上上のランクのスタッフが駐在してるっス。もし何かあるとすれば、それ以上の強力な真魔が現れたとかっスかね。」
しかし、その言葉を冷たく否定しながらミリアが階段下を見つめている。
「初心者向けダンジョンにそこまでの高ランク真魔が出ることなんて無いわ。ましてやここに至るまでも活性ポイントなんて無かった。考えられるとすればあの連中だけよ。」
先に入っていった教会の連中の仕業だってのか?でも何のためにギルドの職員を襲うなんてことになるんだ?
とりあえず真魔であろうと人間の仕業であろうと、悪意を持つものがこのダンジョンに潜んでいるのなら気を引き締めてかからざるを得ない。
それからしばらく進んでいったところで、人の声が聞こえてきた。どうやら先に入っていったと思われる教会の集団のようではあるが、人数はさほどいないようである。
「さっきのこともあるから警戒していきましょう。ルカ、一応隠密を発動しておいて。」
「了解っす。」
休憩所が明らかに荒らされたあとを通ってきておいて、何も知らないフリなんて出来ない。万が一の際は戦闘になることを考えておくべきだろう。
(まさか人間と戦うことを考えないといけないなんて。俺はもしそうなったとき、迷わず戦うことを選べるだろうか?)
恐る恐る階段を降りていくと、きらびやかな鎧に身を包み部下と思わしき人間と状況確認している若者が見えた。
「こんな初心者ダンジョンに例のものがあるというのは本当なんだろうな?
ん?おい!!そこの者共、止まれ。」
その若者は、完全にこちらが堂々とフロアに押し入って来たのを制止するかのように声を荒らげる。
ということは、あの若者自体は相当な腕利きであるということだ。
拝読いただき厚く御礼申し上げます。




