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第27話 異世界史

―町に戻り、報告は明日にすることにし俺たちは宿に戻った。


 流石に奮発しただけあって、夕食はコースの豪華な料理が出されミリアもルカもご満悦だ。

 ただ俺はというと、先に訪れた町のエビなのか昆虫なのかよく分からないパンチの効いた味が恋しくなってしまった。


(スキルのせいで、ゲテモノ好きになってないよな?)


―翌日、ギルドの集会所。


 エリゴールさんにボス討伐の報告をする際に、ドラゴンと遭遇したこととそこから聞いた話を伝えたがなぜかドラゴンのことは大して驚いた様子が無かった。


「・・なるほど。そのドラゴンはミコト殿を指して魔の者と申したのですな?その後に王家のペンダントの光を見て背くなとも・・・。」


「ねぇエリゴール、あのドラゴンが話していた内容分かる?私のことも何か言っていたようだけど」


 エリゴールさんは少し考える仕草を見せ、口を開く。


「ミリシア様のことに関しましては、エマ様の許しもなく私の口からは言えませぬ。ただドラゴンの申していたことに関しては心当たりがございますな。

 本来は王宮の書庫にある禁書に記された内容ゆえに口外無用なのですが、実際に命を狙われたとなれば最低限のことを知る権利はありましょう。」


「・・・あのぅ、自分お邪魔なら外出てた方が良いっスか?」


 ルカが恐る恐る尋ねてきた。まぁ成り行きで付いてきているのに、こんな大事になればそう言うのも無理はないだろう。


「ルカも一緒に居て。パーティなんだし大事なことは皆で共有しましょう。」


 ミリアの言葉にルカは嬉しそうな反応を見せて、返事をした。


「ではまずはこの世界についてですが人間が文明を築く前、いわゆる先史時代のこの世界には数《あま》多《た》の神々が存在しておりました。

 正確には存在するに至る前の神という方が正しいでしょうな。そのため自身の存在を維持するために、その神々はお互いを喰いあう熾《し》烈《れつ》な生存競争を繰り広げることとなったのです。」


 エリゴールさん曰く、神の存在証明には人間の信仰を必要とするがその時代にはまだ人間が生まれていなかった為に共食いのような神々の戦争が起こったらしい。


「それじゃあこの世界の人類史はどうやって始まったんです?」


「・・・ここからは最高機密の禁書に触れる内容ゆえに、他言無用で頼みますぞ。」


 俺とルカは息を呑む。ミリアも同じ反応をしているところを見ると、王女と言えども把握しきれていないほどの余程の内容なのだろう。


「やがて神々は共食いは不毛であり、このままでは全滅を余儀なくされると考えたそうです。そこで別世界にいる人間に干渉し、信仰の力を得ることにしたのです。

 しかし、神が他の世界の理《ことわり》に干渉することは世界間の神々にとってのタブー中のタブー。そこで死して転生を迎える魂に目を付けたのです。」


 死して転生を迎える魂・・・。つまりはるか昔から俺のような異世界へ渡っていく人間が多数いたということか。


「・・・死とは肉体から魂を開放し、世界の因果から断ち切られる事象。つまりすぐさまに魂を捕らえ、新たな肉体さえ与えれば新たな世界の縛りで生きることになる。

 そうやって神々は転生者を作り出し、自分たちの加護を分け与えて信仰を得ることで存在の維持をするとともに、敵対する神々と対抗する勢力圏を作っていったのです。」


 衝撃の事実だ。今の話が本当なら、この世界の全人類のルーツは転生者ということになる。そして、俺の体は俺であっても本来の俺の体じゃない。

 あのドラゴンが言っていたように、この世界に順応しやすいように作られた存在にすぎないということになる。


「それじゃドラゴンの言っていた、光とか魔の者とかって言うのは何なんですか?」


「・・・ふむ。転生者を作るといえど、拵《こしら》えた肉体に別世界の魂を入れて順応させることは容易ではないのです。

 加護の力・・即《すなわ》ち発現するスキルによっては肉体や精神が耐え切れなくなったり、場合によっては異形へと姿を変えることもあったと伝えられております。」


・・・なるほど、それが奇貨スキルの始まりであり代償が求められたり真魔へと姿を変える原因となっているのか。


 さらにエリゴールさん曰く原初の人類が何世代にも渡り子孫へスキルを受け継ぐことで、今の時代を生きる人類は生まれ持ったスキルには順応して代償が不要になったり逆にスキルを何も受け継がずに生まれる人もいるって話だった。


「それじゃミコトとかヤマトみたいなここ最近の転生者はどうなるの?明らかに普通じゃないスキルを持って人間のまま代償無しで転生スキル使えているけど。」


 ミリアが切り出したが、確かにそうだ。


 今の話からいうと、最近転生した人間は作られたばかりということになるはずだからスキルの順応が難しいはずだ。

 ましてや最初の草原で聞いた話だと神はいないとのことなんだから、俺やヤマトのような転生者を作る存在はそもそも今はいないという理屈になる。


「ふぅむ、それが謎なのです。

 禁書の内容もあくまで先史から人類の始まりに至るまでのことしかなく、最近になって転生者がなぜあのような強力な固有スキルを携えていきなり出現するのかは今なお研究が進められているところですな。

・・・まぁ、私の中では一つの仮説があるのですが。」


「仮説というのは?」


―「何らかの理由で神自身が己の存在全てをスキルへと変換し、別世界の人間の魂と融合することでこの世界での受肉を果たしたという説ですな。」

拝読いただき厚く御礼申し上げます。

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