第24話 与えられた試練①
――ギルドの集会所に着くと、人でごった返していた。
どうやら皆目的は同じらしく、バザーでめぼしいものが手に入らなかったのでダンジョンへの挑戦や依頼の受付に来たようだ。
「そりゃ町があんな状態じゃ、みんな考えることは一緒か。しばらく列が進むのを待つしかないな。」
とりあえず3人でしばらく待ってみることにし、ある程度列が解消されたことでやっと受付にたどり着く。
「今回はどのようなご用件でしょうか?」
「一旦依頼紹介の前に、こちらのミコトとルカの冒険者ランクを最低でもBまで上げてもらえる?」
急にとんでもないこと言いだしたな。ルカはともかく、俺なんてまだFランクの依頼1件しかこなしたことない身の上だぞ。
「急にそのようなことを申されましても・・・っ!?ええと、確認いたしますので少々お待ちいただけますでしょうか。」
受付の人がミリアの冒険者カードを見てアワアワとしているところを見ると、どうやらギルド関係者はミリアのことを知っていそうだ。
まぁ、よくよく考えたら国のお偉いさんが危険な依頼とかに勝手に行くのを防ぐという意味では情報共有されていて当然だろう。
・・・今のような無茶な要求をしない限りは。
「お待たせいたしました。支部長がお話したいとのことで、どうぞ奥の部屋までご案内いたします。」
受付の人は部屋の前まで案内すると中に俺たちを招き入れた。
部屋の中入ると眼鏡をかけた長い白髪の、まさに魔法使いといった容貌の老人が居座っておりこちらを見据えると重々しく口を開いた。
「よくおいでくださいましたな、ミリシア様。何やらまた無茶なお願い事があるとか。」
「そうなのよ、エリゴール。横に居るこの2人の冒険者ランクをBまでは上げてもらえる?」
どうやらミリアとこのエリゴールなる老人は知り合いのようだ。
エリゴールさんはこちらの方をじっと見ると、困ったようにミリアに返答する。
「いやはやBランクとなりますと単独パーティでのダンジョン探索が許可されるランク帯ですが、そちらの小さいお嬢さんはともかくお隣の御仁に関してはまだ職業にも就いていないご様子。
規則上では職業ランクやスキルも相応に育っている方にしか許可しておりませんぞ。」
そりゃそうだ。俺だって転生スキルでレベルアップのパラメータ恩恵が大きいとはいえ、職業専用スキルとか補正みたいなのは受けられておらずどんな状況でも戦闘を有利に進められるっていうほどでもない。
ましてや手に入れたばかりの忌名のスキル効果のように、絶対必中とかのスキルが他にもあるのであればランク差など関係なく俺は終わりだ。
その辺の対策もせずに、火中の栗を自分から拾いに行くような真似は今の俺では無理だ。
「彼は転生者だから固有スキルがあるし、その辺どうにかならない?
私は自分のスキルのせいで大人数での戦いには向かないし、この面子だけで行けるようにする必要があるのよ。」
自分のスキルのせいで、ってことはあの無効化スキルは任意発動じゃなくて強制ってことか?
確かにそうなると強力なパッシブ系やバフスキル持ってる人からすれば、ちょっと肩がぶつかったりとか手を貸すだけでもアウトだな。
「ほぉ、転生者ですか。そうなると益々疑問ですな。国のお抱えになることを選ばなかったにせよ、未だ高ランクに到達していないとは。
概ねの転生者はひと月もあればSランクまでは単独でたどり着きますゆえ。」
「えぇとですね、俺の転生スキルはあらゆるスキルを取得できる代わりにHPが強制で1になってしまいまして・・・。
その、なんというか一人ではまともにまだ戦闘をこなせないと言いますか・・・。」
するとエリゴールさんは急に目つきが鋭くなり、ミリアからこちらに視線を切り替えた。
「HPが常に1であらゆるスキルを・・・?
まさか王宮の禁書に記された・・・。いや、そうであれば何故人の姿を保っている・・?転生者ゆえか・・?」
エリゴールさんは俺の方を鋭い目つきのまま見据えながら、ブツブツと何か呟いている。
そして何かを考えるようなしぐさで再度ミリアに尋ねる。
「エマ様はこのことをご存じで?」
「多分姉さんは大しては知らないと思うわ。詳しく話す前に城を抜け出してきたもの。」
エリゴールさんは深いため息をつき、やれやれといった仕草で俺たち全員に語りかけるように話し始めた。
「・・・本来であればそこの御仁のスキルは国家の重要案件ですぞ。それも決して単純に転生者だからという意味ではなく。」
・・・?俺のスキルには何かこの国にとって重要な意味合いがあるのだろうか。将軍は戦術兵器並みだとかは言っていたが。
「王宮魔術院を去った今の身ではこれ以上多くを語ることは出来かねますが、そこの御仁・・ミコト殿と申しましたかな?貴殿としてはこれからどうなさるおつもりで?」
「んー、どうすると言われましても、とりあえずは冒険者として生計を立てるつもりですが。国の為に働くってのも性分に合わないですし。」
「なるほど・・。しからばいつかはかの迷宮に辿り着くか・・・。」
エリゴールさんはほとんど聞き取れない声で何やら呟いている。
「しかし職業にすら就けない段階でのランクアップは認められませんな。
せめてCランクのボス級を単独討伐出来なければBランクにしたところでダンジョン踏破など出来ますまい。」
エリゴールさんはちらりとミリアの方を見た。口ぶりからしてかつて王宮勤めをしていたのだろう。
そういう立場からすれば王女を守るどころか、守られるレベルの人間を迂闊に危険な場所に放り出せないということはよく理解できる。
「最近真魔が活発になってきている地域がありましてな、その中心部には恐らくCランク相当と思わしきボス級が確認されております。
これを討伐出来た際にはランクアップと職業の件は考えましょう。」
「本当っ!?ありがとう、エリゴール!!やったわね。Cランク程度なら私たち3人でどうとでも出来るわ。」
喜びはしゃぐミリアをよそにエリゴールさんは冷たく言葉を発する。
――「ただし、ミコト殿お1人だけでのボス討伐が条件ですぞ。」
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