第18話 新たな旅立ち
――それから俺たちとミリアはこれまでのお互いの状況を共有しつつ、次の目的地について話し合うことにした。
「とりあえずルカの言っていた東のバザーを目指そうと思ってるんだけど。」
「東ということはカイノス地方ね。まだ未開拓のエリアも多くて、ダンジョンなんかも比較的多く見つかっているしレベリングにも最適ね。」
未開拓エリアの多い地方のバザーとなると、レアアイテムなんかが露店に並んでいたりするんだろうか。それはちょっと楽しみだな。
「未開拓って言葉がいいっスよねぇ~♪盗賊冥利に尽きるっス!」
ルカにとってはバザーは口実で、他に行きたい理由があるようだ。まぁダンジョンも多いってことなら、盗賊をやっている以上は興味が無いわけもないだろうしな。
「だけどミリア。何回も言うようだけど、、、」
するとミリアは顔を近づけてこそっと耳打ちをしてくる。ふわっと漂ういい香りに、思わず顔が緩みそうになる。
「・・分かってるわよ。私だって迂闊にルカの前でスキル使えないし、いきなりボスに挑もうなんて言うわけないでしょ。」
そういえばガウスも過去にミリアがスキル発動して一部には、王女だってバレたと言っていたな。使っただけでバレるなんて余程のスキルなのだろうか。
「とりあえず東のバザーまでは町を2つほど経由せざるを得ないから、それぞれを見て回って受けられる依頼や初心者向けダンジョンがあれば積極的に行きましょう。」
まあ未開拓エリアがあるってことは、こないだのボス戦みたいなことが無いとも言えないし前準備とかはしておくに越したことはないか。
「ちなみに1つ目の町まではどれくらいかかるんだ?」
「アンティカの町っスね。ここから半日かからないっス。その次の町までの方が結構距離があるっス。」
ならそのアンティカの町とやらで旅支度をした方が良さそうだな。今から向かえば夕食時には着くとのことだったので、さっそく俺たちは向かうことにした。
今いる町から東へ向かうために、商店通りを抜けた先の門から町を出る。以前に依頼をこなしたときのようにしばらくは人通りもある街道が続きそうだ。
ひとしきり他愛もない話をしながら歩を進めると、美しい花々が咲き乱れる広陵地帯に差し掛かった。
「はぁ~、見事なもんだな。元の世界じゃこんなのテレビくらいでしか見たことないや。」
「でしょ?この辺は真魔も沸きづらくて荒らされることも少ないから、私も気に入ってるのよ。」
一方でルカは浮かないようだ。袖で顔半分を隠しながら俺とミリアの後ろをトコトコと付いてくる。
「うう・・。自分は鼻がムズムズするっス・・。いつまでも見てないでさっさと抜けるっスよ。」
花粉症だろうか。というかこの世界の病気だとかの判定ってどうなるんだろう。まさか風邪ひいただけでHP減るとかないよな。
「くしゃみをしただけでもし死んだなんてなったらいい笑い草よね。」
「冗談でもかんべんしてくれよ・・・。」
まるで俺が考えていることを見透かしたかのようにミリアがこちらを見て意地悪な表情で笑った。
とりあえず辛そうにしているルカの為にもさっさと広陵地帯を抜けることにした。
美しい景色に終わりが見えたころ、少し先で何やら砂埃を上げて数人の行商が何かから逃げまどっている。どうやら真魔の群れに襲われているようだ。
俺が声を発するよりも先に、ミリアが動いていた。
動いていたというより、気づいたときにはその集団の前に躍り出て細身の剣を抜いている。
「ミコトっ!ボサッとしないで!!こいつらはハウンドドッグ!!間違えても挟み撃ちにされちゃダメよっ!!」
見た目は凶暴な犬だが牙が異常に発達し、尻尾に禍々しいオーラを纏った真魔の集団がこちらを視認した。一糸乱れぬ動きからはこいつらが集団戦を得意としていることが見て取れる。
「引き付けはこっちでやるっス!ミコトはいつも通りまとめて仕留めてほしいっス!」
俺はルカが引き付けたところをまとめて【廻転斬り】で薙ぎ払った。何体かは倒すことが出来たが、相手の素早さが高く3体ほど仕留め損ねてしまった。
俺はというとスキルを放つ際、回避しようとしている真魔をどうにか攻撃に巻き込もうとしたために体制を崩してしまった。
「残りは受け持つわっ!!」
俺のスキルを回避した真魔が反撃体制に入る前に、ミリアがその3体に追いつき正確な突きで1体ずつ仕留めていく。
ミリアの動き自体が速いこともあるが、完全に相手の動きを読み切って対処しており場数を踏んでいることが伺える。
「はぇ~」
「ほぇ~」
俺もルカもあまりの手際の良さに、呆然となってしまった。というかスキルは使わないって言ってたよな?すると素の戦闘能力でこれなのか?
「ふぅっ。こんなところね。」
ミリアは悠々と剣を納め、襲われた人たちのところへ向かう。俺たちもハッとなり、後に続く。
「いやはや冒険者の皆さん、危ないところを助けていただきありがとうございました。私たちはこれから東のバザーへ仕入れに向かう道中でして、まさかこのような場所で襲われるとは・・・。」
確かにこの辺は今歩いてきただけでも危険を感じるような雰囲気は何一つ無かった。それがあのような群れで行動するような奴らに出くわすとは。
「・・・やっぱりあいつらが幅を利かせるようになってからおかしくなってるわね。」
ミリアが聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。あいつらって何だ?
とにもかくにも、行商人の提案でこれから向かう町まで馬車に乗せてもらえることになった。
今度こそ始まった本当の旅路で俺はこれから先、何と遭遇するのだろうか。
拝読いただき厚く御礼申し上げます。
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