第16話 主人公?
俺は真魔スキル【狂い咲く炸裂弾】をMPが尽きるまで相手の口の中に叩き込む。
複数の妖しく光る魔法弾が、大きく開かれた大蛇の口へ放り込まれては紫色の閃光を放ち破裂する。
大蛇は不意の攻撃に怯み、一度体制を立て直した。その目は待望の食事を邪魔されて、限界にまで怒り狂っていた。
「ミコトっ!!マズいっス!!早くこっちに来るっス!!」
ルカが叫んでいるが、スキルの発動代償により体中を抗えない虚脱感が襲う。
大蛇がこちらへ目標を変え、襲いかかって来るが、俺は身動きも取れず目の前に迫る死を待つだけの懐かしい感覚を覚える。
唯一違うのは、何かのために自分の意思でこの命を使えたということだ。
(どうせ死ぬのならこれでいい・・・。俺はやれるだけのことはやった。あの時よりは良い死に方のはずだ。)
目を閉じかけたその時、メッセージが表示される。
【カンザキ ヤマトが戦闘に参加しました】
すると次の瞬間、上空より雷と竜巻を伴った無数の斬撃が大蛇に向かって降り注いだ。
「ギシャァアァァアァッ!!」
横腹を裂かれようが、口に魔法弾を詰め込まれようが意にも介していなかった大蛇があからさまに大ダメージを受けている。
さらに続けざまに上空から何者かが急降下しながらスキルを放った。
「【聖華十文字】っ!!」
その人物は持っている剣を交差させるように振りぬくと、輝く巨大な十字が大蛇の胴体をいともたやすく寸断した。
それを見ていた騎士隊長が希望を取り戻したかのようにその人物を呼ぶ。
「ヤマト殿っ!?来ていただけたのですな!?」
ヤマトと呼ばれた青年は、受け答えながらこちらに向かってきた。
「ああ。緊急レイドのメッセージが飛んでたからね。それに参加者の名前を見て、もしかしたらと思ってね。あとこれ。薬はこれを使って。」
青年は騎士たちに薬を分け与えると、俺に手を差し出してまだ満足に動かせない体を起こしてくれた。
「ハタノ・・ミコト君、だよね?僕は神崎大和。日本から転生してきて、今はこの国の貴族の地位でSSランク冒険者をやらせてもらっている。名前の雰囲気からして君も転生者だろ?」
「あぁ、どうも。秦野尊です。転生してきたのは数日前なんで色々初めてで、とにかく助かりました。本当にありがとうございます。」
ヤマトは気さくに続ける。
「見た感じ同い年くらいだし、そんな畏まった言い方じゃなくていいよ。それよりどんな転生スキル持ってるんだ?」
俺は転生スキルと真魔スキルについてある程度説明をしてみせた。
真魔スキルについてはヤマトも驚いてはいたが、それでも俺の転生スキルのデメリットには反応に困っているようだった。
「なるほどなぁ。ただ確かに優劣の差はあれど、スキル効果に変なデメリット付いてるのはミコト君のスキルが初めてかな。普通はどんな転生スキルでも、何か有用な効果は付いてるもんだし。」
「そうなのか・・。ちなみにヤマトはどんなスキルなんだ?」
言われてヤマトは自分のスキル画面を開いた。
【転生スキル:神剣の担い手LvMAX
・全ての剣技をMP1消費のみで扱える
・剣装備時ステータスと成長率倍化
・使用する剣技は全ての耐性と防御を貫通する
・剣での攻撃は全てクリティカルヒットする
・剣技発動中は被ダメージ判定が無くなる】
「おいおいおいおい!無茶苦茶強すぎるじゃないか!!っていうか最後のダメージ判定なしってなんだよ!?スキル使ってるだけで死なないってことかよ!?」
「まぁそんな感じかな。僕は剣特化だけど、他にも職業特化とか何か変わったものに特化してる人たちもこんな感じだよ。」
こっちは不用意にスキル使っただけで、生死に関わるってのに何なんだこの差は。
「それにしてもすごかったっス!!」
ルカが興奮冷めやらぬ様子で駆け寄ってきた。他にも手当てを終えた騎士隊長たちも毒沼を迂回してこちらと合流した。
「流石は王国一の剣聖、名声に違わぬ強さでしたな。まさか、あの天災級の真魔をこうも軽々とは。」
するとヤマトは思い出したように答えた。
「いえいえ、そんな大したことは。それに、これはまだ幼体です。恐らく親とはぐれたところをこんなところまで迷い込んだのでしょう。危険エリアまで行けばこれ以上のが居るはずですよ。」
騎士たちは戦慄する。
「これ以上のが!?そんな・・我々はどうしたら・・」
狼狽える騎士たちにヤマトは気にせず飄々と答える。
「気にしないでください。このボスはダンジョンでいくらでも狩ったことがあるんで、この後そのまま討伐してきます。
ああ、それと出会った記念にドロップ品はミコト君に上げるよ。何かと大変だろ?ボス級のドロップは美味しいから活用するといいよ。それじゃ。」
ヤマトは何か宝石のようなものを掲げると、光の軌跡となって遠くに飛んで行った。その姿を見て騎士たちは英雄万歳と叫んでいる。
俺はその光景を見て、元の世界で病に冒される前の自分を思い出す。
ただ呆然と、輝かしい人生を謳歌する人たちを横目に見て過ごすだけの何でもない日々。
―みんなが求めている特別な人間は俺なんかじゃない。
俺はみんなとは違うけど、違うからといって普通以上の生き方なんてできない。—
「変わらないじゃないか・・・何も。」
何かを察したようにルカが声をかける。
「・・ミコトっ!!クエストは完了っス!自分たちは生き伸びたっス!!今はそれで充分な戦果っスよ!!」
「その通りだ。それに我々を最初に救ったのは貴殿の勇気ある行動だ。皆を代表して礼を言う。」
騎士隊長が深々と頭を下げた。
「いえ・・。そんな、俺なんて。」
心無い返事をして、途方に暮れる。
――俺は何のために自由な体を手に入れたんだろう。
やっぱり俺のような人間は、不自由なくらいがちょうどいいということだろうか。
失意を隠せない体に無理やり鞭を打ち、俺は町に戻ることにした。
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