第10話 不確かな一歩③
作戦を開始してすぐ、ルカが一気に騎士の前に躍り出る。
俺はちょうど騎士の真後ろを取れるポイントまで移動していた。
ルカは俊敏な動きで騎士を翻弄し、その度にブンブンと大きな空振り音が続く。ある程度俺も騎士の動きに目がなれたところで背後から迫る。
「【混沌の一撃】っ!!」
―—ガァァァンっ!!
鎧にヘコミを入れられ吹き飛ばされた騎士はおぼつかない足取りでよろける。
「おぉっ!!なかなかやるっスねぇ!これは思ったより早く片付きそうっス!!」
ルカが軽業でぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んでいる。
「いやまだだ!!スキルを当てた感触だとそこまでダメージが通ってない。恐らく正確に鎧の継ぎ目に刺しこまないとダメだ!!」
騎士に通ったダメージは鎧をへこませた衝撃分だけだろう。狙わなければならないのは、あの不気味なオーラがひと際漏れ出ている首元だ。
「スキルを打てるのはあと2回だけだっ!!ルカっ!!悪いがもう一度隙を作ってくれっ!!」
「了解っす!!なら・・・【砂塵】っ!!」
ルカがスキルを発動すると、騎士とルカの間に大量の砂ぼこりが発生した。
騎士は一時的に標的を見失ったことで、辺りをキョロキョロしだした。
「よしっ!!今だっ【混沌の一撃】ぃっ!!」
もう一度背後を取った。と、思った時だった。
騎士は急に半歩分足を下げながら、横に重心を振り、剣を薙ぎ払ってきた。
――ギィィィィンッ!!
「クソっ!弾かれた!!なら、このまま通常攻撃でっ!!」
俺のスキルを受けて、騎士も剣を持つ手が満足に動かせないようだった。この状態なら問題ない、俺はそう確信し踏み込む。
「それだけはだめっス!!!」
ルカが必至にこちらへ向かって叫ぶ。
しかし、俺の剣は既に騎士へ届く寸前まで伸びていた。
――その瞬間、騎士の兜の中で眼光が一層鋭くなったような気配を感じる。
騎士はもう片方に構えていた盾を横に払うと同時に、体を回転させた。
俺の剣は騎士の盾の表面を滑るように受け流され、逆に騎士は体の回転の反動を使って俺の首元に剣を振りぬこうとしていた。
「あっ、ヤバっ、、、」
騎士の剣が眼前に迫る。
「そのまま倒れこむっス!!」
ルカがものすごいスピードで俺の上に覆いかぶさってきた。その瞬間にブオンっという先ほどよりも大きい空振り音が耳のすぐ近くを通過する。
まだ首が繋がっている安堵感に浸る間もなくルカにすぐ起こされ、距離を取る。
「なにやってるっスか!?相手は真魔とはいえ騎士っスよ!?【パリィ】を持ってるに決まってるじゃないっスか!!」
「悪い悪い。咄嗟のことで攻撃叩き込むことしか頭になかった。ありがとな、ルカ」
「ついさっきまでHPが無いからとか言ってた割に、結構短絡的っスね。」
ルカは少し頬を赤らめながら答える。
「ただもうスキルは1回しか打てなくなったな。」
「向こうも今までの対応で前後ともに隙を見せてくれることもなさそうっス。」
「なぁルカ。パリィってのはスキルも弾けるのか?」
「普通のCランク程度のスキルレベルなら無理っスけど、あいつ真魔化してパリィも独自の効果になってるっぽいっス。」
さっきの身を翻しながらのパリィか。
「よし、なら今度は俺の最後の一撃でアイツのパリィを誘発する。そうしたらルカはあいつが身を翻した直後に首を狙ってくれ。」
「了解っス。でも今度しくじったら確実にミコトの命はないっスよ。今なら撤退も出来るっスけど?」
「攻略は見えてるんだ。ここまで来たらやり切ろう。」
騎士はかつての闘争本能を呼び戻したのか、先ほどよりもしっかりとした構えを取り待ち構えている。
――完全にこちらの攻撃を誘っている。
「さっきは上から叩こうとして滑らされたからな。今度は突きだぁっ!!」
坑道でのガウスの突進攻撃をイメージして突撃する。
相手が盾を構えたところで、下から潜り込むような形でスキルを打ち込む。
―ガギイィィン!!
騎士は下から上に振り払うような動きで、パリィをしそのまま回転動作に入る。
振り向き様にルカが鎧の首の継ぎ目に短刀を突き刺した。盾を大きく振ったせいで騎士はノーガードの状態でそれを受けることになった。
「やったっス!!」
騎士はそのまま動かなくなると、鎧の継ぎ目から淡い光が飛び散り武具だけが地面に落ちた。それと同時にメッセージウインドウが出現する。
【ハタノ ミコトはLv16からLv18に上がりました。】
【冥騎士級のランクCまでのスキル習得が可能になりました。】
【騎士の剣【C】と騎士の鎧【C】と騎士の中盾【C】を入手しました。
ラーニングアイテム「騎士の紋章【C】」を手に入れました。】
「おっレベルが上がって、真魔スキルも解放されたぞ!」
するとルカが不思議そうに尋ねる。
「・・真魔スキルの解放って何スか?」
「あぁ、実は俺転生者なんだよ。そのスキル効果で、倒した真魔のスキルが解放されて代償なしで習得出来るんだ。
あとはHPは強制1になるけど、他のステータスの伸びがよくなるとかもあるな。」
ルカが目をひん剥いて驚く。
「何スかそれ。無茶苦茶じゃないっスか。
というかそれなら早く言ってほしかったっす。」
(どうりでおかしいと思ったっス、見たことも無い攻撃スキルに、Fランク冒険者程度の一撃で正面からCランクの真魔をあんな簡単に追い込める訳ないっスからね。)
「ところでルカは戦利品どうする?」
「どれも騎士職の物なんで要らないっス。強いて言うならそのスキルアイテムは換金率高いんで、要らないなら貰いたいっス。」
「このラーニングアイテムってのは何なんだ?」
「使うとそのアイテムランク以下の指定職業スキルをランダムゲットか、既に所持しているスキルなら熟練度が向上するっすね。」
職業スキルの習得や強化はレベリングや熟練度が要だ。それがアイテム一つでどうにかできるなら誰だってほしいだろう。
「これかなりのレアものじゃないか?」
「そうでもないっス。それは真魔から、しかも低確率ドロップなんで真魔狩りでもしないと手に入んないっス。
んでもってそんな効率的に真魔倒せるような冒険者は、スキルセットもちゃんとしてる高レベルな人ばっかりっスからね。」
そもそもスキル習得やレベリングがこなせるような人はそんなもんに頼る必要が無いってことか。
かといって恵まれないスキル保持者や低レベル者は、真魔を簡単には狩れない。なんとも思い通りにはいかない世界だな
「それに自分の生来スキルと嚙み合わないスキル習得すると、スキルの相反が起こるっス。そうなると寝たきりになって早死にしたり、強制的に奇貨スキルが発現する場合もあるっス。」
なるほどな。坑道でのゴブリン討伐時に俺がスキルを何でも習得可能って知った時に色んな冒険者たちがざわついてたのはそういう理由か。
こうなってくるとスキル格差なんてものも生まれてくるのだろう。ミリアは坑道でこの国は、なんてことを口走っていたけど何を思い描いているのだろうか。
宮殿に帰らされた今では簡単に会って聞くことも出来ないが、いつかまた会うことは叶うのだろうか。
拝読いただき厚く御礼申し上げます。
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