歓迎されない私
ウォルセドナ領まで馬車で十日ほど。しかし、それは馬が普通に走れたら、という話であり、普通体型の女性三人分の重さのロゼを乗せてば普通には走れず、領地に着くまで十五日と日数を要した。
「言っておくが」
カインは前置きして口を開き、ロゼにキツイ視線を向ける。
「俺は納得していない。この結婚は何かの間違いだ。すぐに帰ってもらうことになるから、荷解きはしなくて良い」
嘲笑するようにカインはロゼに言った。
ふーん、仮にも伯爵夫人になる私に対しての態度がそれね。
移動中もカインはずっと不機嫌そうな態度を取っていた。
腕を組み、必要最低限の言葉しか交わさず、こちらの質問には嫌々答えるという態度を崩さなかったところを見れば、歓迎されていないことくらい分かる。
この結婚は私の意志じゃない。何でこんな風に言われなきゃなんないの?
まさか従者からこんな風に言われるとは思っておらず、多少は胸も痛む。
ロゼは俯き、膝の上でぎゅっと両手を握り締める。
「よく分かったわ。仮にも主人の花嫁になる者に対してのその態度……。伯爵の人間性も品位もたかが知れているわね」
ロゼは顔を上げて挑発的に告げる。
「……何だと?」
「従者は主を測る測量機みたいなもの。あなたの振舞いが全て主の印象に直結するって言ってんのよ」
ロゼの嫌味にカインは眉間の皺を深くする。
しかし、それ以上は何も言わず、口を噤んだ。
ふんっとロゼは鼻で笑い飛ばし、窓の外に視線を投げる。
窓の外に道路に沿って流れる川が見えた。
何、あれ?
川を凝視して見ると微かに瘴気が立ち上っている。それはまるで湯気のようで、ふわりふわりと川から発生し、空気中に溶けていく。
従者からこの扱い、川からは瘴気。これからどうなるのかしら。
暗雲が空を覆い、空も自分も先行きが怪しいなと、深い溜息が零れた。




